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第II部 わが国の安全保障・防衛政策

2 重点ポイント

1 各種スタンド・オフ・ミサイルの整備

東西南北、それぞれ約3,000キロに及ぶわが国領域を守り抜くため、島嶼(しょ)部を含むわが国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊などに対し、対空ミサイルなどの脅威圏の外から対処する能力が必要となる。また、わが国への侵攻がどの地域で生起しても、わが国の様々な地点から、重層的にこれらの艦艇や上陸部隊などを阻止・排除できる必要かつ十分な能力が不可欠である。

こうしたなか、発射プラットフォームなどを多様化させつつ、様々な異なる特徴を有するスタンド・オフ・ミサイルを組み合わせて対処することにより、相手方に複雑な対応を強いることが可能となる。そのため、外国製スタンド・オフ・ミサイルを早期に取得するとともに、国産スタンド・オフ・ミサイルの国内製造態勢の拡充を後押しすることで、必要かつ十分な数量を早期に確保する。また、より先進的なスタンド・オフ・ミサイルを運用する能力を早期に獲得すべく、研究開発・量産の取組を加速化する。

スタンド・オフ・ミサイルの早期整備については、より厳しい安全保障環境を踏まえ、国産の12(ヒトニ)式地対艦誘導弾能力向上型(地上発射型)を1年前倒しし、2025年度から配備を開始する。また、米国製のトマホークについても、当初予定より1年早く、2025年度から取得を開始し、国産スタンド・オフ・ミサイルの増産体制確立前に十分な能力を速やかに確保する。

あわせて、目標情報収集や指揮統制を含め、スタンド・オフ・ミサイルの運用に必要な一連の機能を確保する取組を推進する。

参照III部1章4節1項(島嶼部を含むわが国に対する侵攻への対応)

2 イージス・システム搭載艦の整備

近年、極超音速滑空兵器(HGV:Hypersonic Glide Vehicle)や変則軌道で飛翔するミサイルなど、ミサイルに関する技術は急速に変化・進展しており、弾道ミサイル防衛能力を含む統合防空ミサイル防衛能力の強化は喫緊の課題である。こうした高度化する弾道ミサイルなどの脅威からわが国を防護することを主眼として、早期の就役(2027年度に1隻目、2028年度に2隻目)を目標に、イージス・システム搭載艦について2024年度から建造に着手する。

イージス・システム搭載艦(イメージ)

イージス・システム搭載艦(イメージ)

イージス・システム搭載艦の整備にあたっては、HGVなどにターミナル段階での対処能力を有するSM(Standard Missile)-6のほか、既存のイージス艦と同等以上の各種能力・機動力を保持させる。また、動揺に強い設計や個人空間を確保した居住性を有するほか、将来装備の拡張性を考慮することとしている。また、既存イージス艦の乗組員と比較して約20%の省人化を図ることとしている。

参照III部1章4節2項(ミサイル攻撃などへの対応)

3 全国駐屯地・基地などの既存施設の強靱化

自衛隊施設は、防衛力の持続性・強靱性の基盤であり、その十分な機能を確保することは重要である。自衛隊施設の約4割は旧耐震基準時代に建設されていることから、平素においては自衛隊員の安全を確保し、有事においても容易に作戦能力を喪失しないよう、既存施設の強靱化が喫緊の課題である。

このため、全国20,000棟以上にのぼる自衛隊施設の強靱化に向けて、2023年度からマスタープランの作成作業に着手しており、これに基づく施設整備を2024年度以降実施することとしている。その際、隊員の生活・勤務環境の改善もあわせて図られる見込みである。

参照III部1章6節4項(施設の強靱化)