Contents

第IV部 共通基盤の強化

3 米国との防衛装備・技術協力関係の深化

1 共同研究・開発など

わが国は、米国との間で、1992年以降、26件の共同研究と1件の共同開発を実施している。現在は、4件の共同研究(①高耐熱性ケース技術、②次世代水陸両用技術、③モジュール型ハイブリッド電気駆動車両システム、④無人航空機へ適用するAI技術)を実施している。

2022年9月の日米防衛相会談において、極超音速技術に対抗するための技術について、共同分析の進捗を踏まえ、要素技術・構成品レベルでの日米共同研究の検討を開始することで合意した。そして、2023年1月の日米「2+2」で将来のインターセプターの共同開発の可能性について議論を開始することで一致したことを受け、防衛省と米国防省で検討を行ってきた結果、日米両国は同年8月に、滑空段階迎撃用誘導弾(GPI:Glide Phase Interceptor)の共同開発を開始することを決定した。また同月の日米首脳会談において、両首脳は、これを歓迎した。

このほか、2014年7月以降、PAC(パック:Patriot Advanced Capability)-2の部品などの米国への移転について、国家安全保障会議において、海外移転を認めうる案件に該当することを確認しているほか、2023年12月には、ペトリオット・ミサイルの米国への移転について、国家安全保障会議において海外移転を認めうる案件に該当することを確認している。本移転は、米軍および世界規模においてペトリオット・ミサイルの需要が予想を超え、これまでにないほどの水準にあるなか、わが国として同盟国である米国からの要請に応え、米軍のペトリオット・ミサイルの在庫をできるだけ早く補完し、米軍の態勢を支えるというこれまでに例のない取組であり、米国との安全保障・防衛協力を新たな段階へと高めるとともに、わが国の安全保障およびインド太平洋地域の平和と安定に寄与するものである。

参照III部1章4節1項2(2)(無人アセット防衛能力の強化)III部1章4節2項(ミサイル攻撃などへの対応)III部2章4節2項(防衛装備・技術協力)2節3項(次期戦闘機の開発)資料29(日米共同研究・開発プロジェクト)

2 日米共通装備品の生産・維持整備
(1)F-35A戦闘機生産への国内企業の製造参画や整備拠点の設置

わが国は、2011年12月、F-35A戦闘機をF-4戦闘機の後継機とし、一部の完成機輸入を除き国内企業が製造に参画することなどを決定した7。これを踏まえ、わが国は、2013年度以降のF-35A戦闘機の取得に際して、国内企業の製造参画を図り、これまで、機体、エンジンの最終組立・検査(FACO:Final Assembly and Check Out)、関連部品の製造参画の取組を行ってきた。

2019年度以降の取得に際しては、厳しい財政状況を踏まえ、完成機輸入を原則としつつ、より安価な手段がある場合には見直すこととされた。しかし、その後の製造企業による経費低減の取組などにより、国内企業がFACOを実施する方が、完成機輸入に比べてより安価となることが確認されたため、2019年度から2027年度までの取得については、国内企業が最終組立・検査を実施した機体を取得することとしている8

また、F-35戦闘機が全世界的に運用されることから、米国政府は、北米・欧州・アジア太平洋地域に機体・エンジンを中心とした整備拠点(リージョナル・デポ)を設置することとした。

2014年12月に、米国政府によって選定されたアジア太平洋地域におけるわが国のF-35戦闘機の機体の整備拠点は、2020年7月から愛知県にある三菱重工業小牧南工場において運用を開始した。また、エンジンの整備拠点は、2023年6月から東京都にあるIHI瑞穂工場において運用を開始した。

F-35戦闘機の製造に国内企業が継続して参画することや、機体やエンジンなどの整備拠点を国内に設置し、アジア太平洋地域での維持整備に貢献することは、国内の防衛生産・技術基盤の維持・育成・高度化に資するものであるとともに、わが国のF-35A戦闘機の運用支援体制の確保、日米同盟の強化、インド太平洋地域における防衛装備・技術協力の深化といった観点から、有意義である。

(2)日米オスプレイの共通整備基盤の確立に向けた取組

米海軍は、普天間飛行場に配備されている米海兵隊オスプレイの定期機体整備のため、2015年10月、整備企業として富士重工業株式会社9を選定し、2017年2月から、陸自木更津駐屯地において定期機体整備が開始され、2024年3月末時点で7機の整備が完了し、3機を整備中である。

防衛省としては、①V-22(陸自オスプレイ)10の円滑な導入、②日米安保体制の円滑かつ効果的な運用、③整備の効率化の観点から、木更津駐屯地の格納庫を整備企業に使用させ、米海兵隊オスプレイの整備とともに、将来の陸自オスプレイの整備を木更津駐屯地で実施することにより、日米オスプレイの共通の整備基盤を確立していくこととしている。木更津駐屯地での共通の整備基盤の確立は、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)に掲げる「共通装備品の修理や整備の基盤の強化」の実現と沖縄の負担軽減に資するものとして、極めて有意義である。

7 2018年12月、F-35A戦闘機の取得数については、42機から147機とし、新たな取得機のうち42機については、短距離離陸・垂直着陸機能を有する戦闘機の整備に替えうるものとすることが決定された。

8 2019年12月に2019年度や2020年度の、2020年12月に2021年度の、2021年12月に2022年度の、2022年12月に2023年度から2027年度までのF-35A戦闘機の取得について、それぞれ、より安価な手段であることが確認された国内企業が参画した製造とすることが決定された。

9 2017年4月1日に、株式会社SUBARUに社名を変更。

10 陸自では、CH-47JA輸送ヘリコプターの輸送能力を巡航速度や航続距離などの観点から補完・強化できるティルト・ローター機(オスプレイ)を17機導入することとし、佐賀空港における施設整備が完了するまでの一時的な処置として、木更津駐屯地に暫定的に配備することとしている。