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第IV部 共通基盤の強化

第5節 経済安全保障に関する取組

国家安全保障戦略では、わが国の平和と安全や経済的な繁栄などの国益を経済上の措置を講じ確保することが経済安全保障であり、経済的手段を通じた様々な脅威が存在していることを踏まえ、わが国の自律性の向上、技術などに関するわが国の優位性、不可欠性の確保などに向けた必要な経済施策を、総合的、効果的かつ集中的に講じていく必要があるとしている。

1 日本政府内の動向

これまでも、わが国は、既存の法制の中で経済安全保障の推進に資する取組を推進してきた。

2022年5月には、サプライチェーンの強靱化、基幹インフラの安全性・信頼性の確保、先端的な重要技術についての官民協力、特許出願の非公開に関する制度整備を行うことにより、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するための経済安全保障推進法1が成立した。

2024年5月には、特許出願の非公開および基幹インフラの両制度が運用開始となり、同法が定める全ての制度が運用されることとなった。経済安全保障に関する各種措置については、不断に検討・見直しが行われており、例えばサプライチェーンの強靱化については、2022年12月に半導体や蓄電池など11物資を特定重要物資に指定し、その安定供給確保を図っているところであるが、これに加え2024年2月には、先端電子部品(コンデンサ、高周波フィルタ)の新規指定(合計12物資)および指定済物資である重要鉱物の対象鉱種としてウランを追加するなどの取組も実施されている。

経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)は、AI(Artificial Intelligence)、量子技術などの先端技術を含む研究開発を対象に、関係府省庁が一体となって、国のニーズを実現する研究開発事業を実施するもので、その研究成果は、民生利用のみならず安全保障を含む公的利用につなげていこうとするものである。K Programの支援対象とする重要技術は研究開発ビジョンに定められており、2023年には、サイバー空間領域などの取組を特に強化し、研究開発ビジョン(第一次)を補強・補完する形で、研究開発ビジョン(第二次)が決定され、研究開発が順次開始されている。このほか、経済安全保障分野のセキュリティ・クリアランス制度について、2024年2月、「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」が閣議決定・国会に提出され、同年5月、法律として成立した。

さらに、近年経済的威圧についても関心が高まり、様々な議論が行われている。2023年5月に開催されたG7広島サミットでは、経済的威圧に対処するため、「経済的威圧に対する調整プラットフォーム」を立ち上げ、同盟国・同志国との連携を進めていくことが確認された。

参照2節4項1(国内外の関係機関との技術交流や関係府省庁との連携)

1 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律