防衛力の中核は自衛隊員である。防衛力を発揮するにあたっては、必要な人材を確保するとともに、全ての隊員が高い士気と誇りを持ち、個々の能力を発揮できる環境を整備すべく、人的基盤の強化を進めていく。
人材確保を取り巻く環境が厳しくなるなか、これまで以上に、民間の労働市場の動向や働き方に対する意識の変化といった社会全体の動きを踏まえ、人的基盤強化の検討を進める必要があることから、2023年2月、防衛省・自衛隊は、人的基盤強化にかかる施策の実効性を高めることを目的に、防衛大臣のもと、部外の有識者からなる「防衛省・自衛隊の人的基盤の強化に関する有識者検討会」を設置した。計6回の検討会での議論を経て、同年7月に取りまとめられた報告書では、危機的なまでの少子化の進展と人口減少社会のなかでも、わが国の防衛力を持続性のあるものとし続けるため、部外の人材を含めた多様な人材の確保、隊員のライフサイクル全般を通じた効果的な施策をこれまで以上に幅広く綿密に講じていく必要があるとの提言がなされた。
2024年1月の第7回検討会では、こうした提言を踏まえ、部外人材も含めた多様な人材確保、隊員のライフサイクル全般における活躍の推進に向けた各種施策の進捗状況について防衛省から報告を行い、今後の課題などに関し、有識者から意見が述べられたところであり、これらも踏まえ、人的基盤強化に向けた施策を推進する。
防衛省・自衛隊の人的基盤の強化に関する有識者検討会(2024年1月)
資料:防衛省・自衛隊の人的基盤の強化に関する有識者検討会報告書
URL:https://www.mod.go.jp/j/policy/agenda/meeting/kiban/index.html
防衛省・自衛隊が各種任務を適切に遂行するためには、少子化による募集対象者人口の減少という厳しい採用環境のなかにあっても、優秀な人材を安定的に確保しなければならない。2023年度の募集については、人材獲得競争がより熾烈なものとなったことなどから、特に、いわゆる「士」となる自衛官候補生と一般曹候補生の採用者数は、2022年度に比べ、約1,900名減少となり、大変厳しいものとなった。このため、募集対象者などに対して、自衛隊の任務や役割、職務の内容などを丁寧に説明し、確固とした入隊意思を持つ人材を募る必要がある。
防衛省・自衛隊では、募集能力強化のため、採用広報動画、資料などのデジタル化・オンライン化、SNS(Social Networking Service)による情報発信、自衛官候補生と一般曹候補生の採用試験の一部オンライン化などを推進している。
また、全国に50か所ある自衛隊地方協力本部では、2023年度に非常勤職員を増員して募集体制の強化を図り、地方公共団体、学校、募集相談員などの協力を得ながら、きめ細やかに自衛官などの募集・採用を行っている。なお、地方公共団体は、募集期間などの告示や広報宣伝などを含め、自衛官、自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行うこととされており、防衛省はこれに要する経費を負担している。また、募集に関する事務の円滑な遂行のために必要な募集対象者情報の提出を含め、所要の協力が得られるよう地方公共団体などとの連携を強化している。
動画:自衛官募集チャンネル
URL:https://www.youtube.com/channel/UCwvH00eFWmfs-FGkRCorzdA
自衛官は、個人の自由意思に基づく志願制度のもと、様々な区分に応じて採用される。自衛官候補生と一般曹候補生の採用上限年齢は、民間企業での勤務経験を有する者など、より幅広い層から多様な人材を確保するため、2018年に「27歳未満」から「33歳未満」に引き上げられた。また、2024年度からは、空自航空学生の採用上限年齢が「21歳未満」から「24歳未満」に引き上げられた。さらに、防衛力整備計画に基づき、有為な人材の早期確保を図るため、貸費学生制度1について、対象となる教育機関や学術分野を拡大して名称も変更し、「自衛隊奨学生制度」として制度の充実・強化に努めている。
民間の人材を活用するという点では、キャリア採用幹部として、専門的技術に関する国家資格・免許などを保有する者を採用する取組や、中途退職した元自衛官の採用数の拡大など、中途採用の強化に取り組んでいる。また、サイバー分野などの専門的知識・技能を有する部外の高度人材を最大5年の任期で自衛官として採用する任期付自衛官制度の導入に向けて、関連法案を2024年2月に国会に提出し、同年5月に成立した。
自衛官は、自衛隊の精強性を保つため、階級ごとに職務に必要とされる知識、経験、体力などを考慮し、大半が50歳代半ば以降で退職する「若年定年制」や2、3年を1任期として任用する「任期制」など、一般の公務員とは異なる人事管理2を行っている。
自衛隊地方協力本部による自衛隊の勤務に関する説明会
参照図表IV-2-1-1(募集対象人口の推移)、図表IV-2-1-2 自衛官候補生と一般曹候補生の採用状況(2014年度~2023年度)、図表IV-2-1-3(自衛官の任用制度の概要)、資料67(自衛官の定員と現員、自衛官の定員と現員の推移(過去10年間))、資料68(自衛官などの応募と採用状況)
防衛省・自衛隊には、自衛官のほか、約2万1,000人の事務官、技官、教官などが隊員3として勤務している。防衛省では、主に、人事院が行う国家公務員採用総合職試験や国家公務員採用一般職試験、防衛省が行う防衛省専門職員採用試験の合格者から採用している。
事務官は、本省、防衛装備庁の内部部局などでの防衛全般に関する各種政策の企画・立案、情報本部での分析・評価、全国各地の部隊や地方防衛局などでの行政事務に従事している。
技官は、本省、防衛装備庁の内部部局などでの防衛施設(司令部庁舎、滑走路、火薬庫など)や防衛装備品などの物的基盤に関する各種政策の企画・立案、情報本部での分析・評価、全国各地の部隊や地方防衛局などで、各種の防衛施設の建設工事、様々な装備品の研究開発・効率的な調達・維持・整備、隊員のメンタルヘルスケアなどに従事している。
教官は、防衛大学校、防衛医科大学校や防衛研究所などで、防衛に関する高度な研究や隊員に対する質の高い教育を行っている。
そのほか、防衛力整備計画を着実に実施するため、必要となる事務官等の確保に取り組んでいるところである。