自衛隊で使用される装備品は、耐久性よりも性能を重視しており、民生品の使用条件よりも過酷な状況で使用されていることから、一般的な用途に比べ、頻繁な整備や部品交換が発生する特性をもっている。そのため、部品交換を見越して、予備の部品を一定数保有しておく必要がある。
一方、装備品の高度化・高性能化に伴い、部品の調達単価と整備費用が上昇し、維持整備予算も増加させてきているが、必ずしも十分ではなかったことから、部品不足による非可動が発生している。一部の装備品では、可動状態にない同じ装備品から部品を取り外し、転用して整備を実施しており、部品の取り外しと取り付けで、通常の部品交換の2倍の整備作業が必要となり、現場部隊に過度な負担を強いている。これを踏まえ、2023年度に引き続き2024年度も維持整備費を大幅に確保し、部品不足による非可動を解消して、2027年度までに装備品の可動数を最大化することとしており、保有する装備品の能力が十分に発揮できる体制を早急に確立することを目指している。
参照図表III-1-6-2(装備品の可動状況の分類)
装備品の高度化・複雑化に対応しつつ、リードタイムを考慮した部品費と修理費の確保により、部品不足による非可動を解消し、2027年度までに装備品の可動数を最大化する。このため、例えば部品の需要量をAI(Artificial Intelligence)により見積もる機能を補給管理システムに付加するなど、ロジスティクスにかかるシステムの改修により、需給予測を精緻化し、適正在庫を確保することにより自衛隊全体として部品の効率的な分配を図ることで、部隊が部品を受け取るまでの時間を短縮化する。また、主要な補給倉庫について、自動化・省人化、システム化された倉庫への改修を進めることで、正確な在庫管理を可能とし、部隊のニーズに応じて迅速に部品を供給することとしている。
可動数の増加にあたっては、限られた資源を有効に活用するため、維持整備などの部外委託を推進するなど、部外力を活用する。
一部の装備品においては、維持整備計画の分析や、必要なデータ収集などを行い、検査・整備項目の削減を目指す部外委託の取組を行っているところ、このような、部外委託の取組の成果を活用した装備品の部隊整備や部品修理など、より効率的な維持整備に向けた取組を一層推進することとしている。これらの取組により、維持整備業務に従事する隊員を中心に部隊負担を軽減しつつ、装備品の可動数の向上を図っていくこととしている。
各種業務を効率的に実施していくためには、最新のデジタル基盤の整備などのデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて、業務のあり方を大きく変革していく必要がある。そのうえで、後方支援分野において、DXの導入を推進し、維持整備の最適化を図ることとしている。具体的には、AIを活用した補給管理システムを導入するほか、部品などの在庫状況をより一層適切に把握するため、電波を用いてIC(Integrated Circuit)タグの情報を非接触で読み書きする自動認証技術(RFID:Radio Frequency Identification)や、装備品の部品などを応急的に製造するための3Dプリンターについて、実証試験の成果も踏まえ、その導入を図ることにより、在庫管理などの効率化を進め、後方支援分野における維持整備体制を最適化することとしている。
2012年度から航空機を対象としたPBL契約を締結していたところ、2021年度には艦船用ガスタービン機関のPBL契約を締結するなど、航空機以外にも対象範囲を拡大している。効果的・効率的な維持・整備を実現するために費用対効果を検証しつつ、装備品の可動数の向上につながるPBLの適用対象の拡大に取り組むこととしている。