生物・化学兵器は、比較的安価で製造が容易であるほか、製造に必要な物資や技術の多くが軍民両用であり容易に偽装ができるなど、非対称的な攻撃手段2を求める国家やテロリストなどの非国家主体による開発・取得が特に懸念される。また、生物・化学兵器を求める主体がビッグデータやAI(Artificial Intelligence)といった新興技術を利用すれば、兵器の開発能力はさらに高まるものと考えられる。
生物兵器は、①製造が容易で安価、②暴露から発症までに通常数日間の潜伏期間が存在、③使用されたことの認知が困難、④実際に使用しなくても強い心理的効果を与える、⑤種類や使用される状況によっては、膨大な死傷者を生じさせるといった特性を有する。
化学兵器は、1995年のわが国における地下鉄サリン事件などで使用され、都市における大量破壊兵器によるテロの脅威を示した。最近では、シリアのアサド政権や「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)による化学兵器の使用や、ロシアによって開発された「ノビチョク」類が使用されたとされる反体制派指導者毒殺未遂事件などが指摘されている。また、ウクライナにおける戦闘でロシア軍が暴動鎮圧剤を使用した疑惑も指摘されている。
近年、生物兵器については、北朝鮮、ロシアが生物兵器禁止条約(BWC:Biological Weapons Convention)で定められた義務に反する攻撃的な生物兵器の計画を有しているとの見方が示されているほか、中国の軍の医療機関における研究開発に対して懸念が示されている3。また、化学兵器については、中国に対して化学兵器禁止条約(CWC:Chemical Weapons Convention)で定められた義務の遵守に対する懸念も示されている4。北朝鮮はCWCに加盟せず、現在も化学兵器を保有しているとされている。