Contents

第II部 わが国の安全保障・防衛政策

3 統合作戦司令部

国家防衛戦略や防衛力整備計画において、各自衛隊の統合運用の実効性の強化に向けて、平素から有事まであらゆる段階においてシームレスに領域横断作戦を実現できる体制を構築するため、陸・海・空自の一元的な指揮を行いうる常設の統合司令部を創設することとされた。これを踏まえ、2024年度に、常設の統合司令部として「統合作戦司令部」を市ヶ谷に設置し、その長として統合作戦司令官を置くこととしている。

参照図表II-4-2-5(自衛隊の運用体制と統合作戦司令部)

図表II-4-2-5 自衛隊の運用体制と統合作戦司令部

1 意義

常設の統合司令部が存在しない現在は、統合作戦を行う際、必要に応じて、陸・海・空自の部隊のいずれか2以上の部隊からなる統合任務部隊を臨時に組織している。このような体制下では、事態の状況や推移に応じた柔軟な防衛態勢を迅速に構築することができず、また、平素から領域横断作戦に必要な態勢を整えることが困難である。

統合作戦司令部を新設することで、陸・海・空自による統合作戦の指揮などについて、平素から統合作戦司令部に一本化することができる。また、平素から領域横断作戦の能力を練成することができるため、統合運用の実効性が向上し、迅速な事態対応や意思決定を行うことが常続的に可能となる。

加えて、現在、統幕長はカウンターパートとして、米軍の中長期的な軍事戦略を担当する統合参謀本部議長と、自衛隊と米軍の共同作戦を担当するインド太平洋軍司令官の両者とそれぞれ調整している。統合作戦司令部と統合作戦司令官を新設することで、作戦にかかる米軍との調整をより緊密に行い、日米共同対処能力を強化することができる。

2 統幕との関係

統幕は、自衛隊の運用に関し、軍事専門的見地から防衛大臣を補佐する「幕僚機関」である。一方、新設する統合作戦司令部は、自衛隊の運用に関し、平素から全国の陸・海・空自の部隊を一元的に指揮することを念頭に置いた「部隊」であり、これまで自衛隊には常設されていなかった機能である。このように、両者は趣旨や位置づけが異なる組織であり、統合作戦司令部の新設に伴って、統幕の役割が変更されることはない。

また、従来、自衛隊の運用に関し、防衛大臣の指揮は統幕長を通じて行い、防衛大臣の命令は統幕長が執行することとされており、統合作戦司令部が新設された際も、統幕長は、統合作戦司令部などの部隊に対して、自衛隊の運用に関する防衛大臣の指揮や命令を伝達し、またその範囲内で細部指示することとなる。

このように、新設する統合作戦司令部や統合作戦司令官は、統幕長を長とする統幕と役割を明確に分担することになる。そして、統合作戦司令部を新設し、平素から全国の陸・海・空自の部隊を一元的に運用するという新たな機能を設けることにより、統合運用の実効性が向上し、迅速な事態対応や意思決定を行うことが常続的に可能となる。