わが国が憲法上保持できる自衛力は、自衛のための必要最小限度のものでなければならないと考えられている。その具体的な限度は、その時々の国際情勢、軍事技術の水準その他の諸条件により変わりうる相対的な面があり、毎年度の予算などの審議を通じて国民の代表者である国会において判断される。憲法第9条第2項で保持が禁止されている戦力にあたるか否かは、わが国が保持する全体の実力についての問題であって、自衛隊の個々の兵器の保有の可否は、それを保有することで、わが国の保持する実力の全体がこの限度を超えることとなるか否かにより決められる。
しかし、個々の兵器のうちでも、性能上専ら相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器を保有することは、直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため、いかなる場合にも許されない。例えば、大陸間弾道ミサイル(ICBM:Intercontinental Ballistic Missile)、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母の保有は許されないと考えている。
2014年7月1日の閣議決定「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」において、次の3つの要件(「武力の行使」の三要件)を満たす場合には、自衛の措置として、武力の行使が憲法上許容されるべきであると判断するに至った。
参照資料4(国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について)
わが国が自衛権の行使としてわが国を防衛するため必要最小限度の実力を行使できる地理的範囲は、必ずしもわが国の領土・領海・領空に限られないが、それが具体的にどこまで及ぶかは個々の状況に応じて異なるので、一概には言えない。
しかし、武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土・領海・領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に、自衛のための必要最小限度を超えるものであり、憲法上許されないと考えられている。
憲法第9条第2項は、「国の交戦権は、これを認めない。」と規定しているが、ここでいう交戦権とは、戦いを交える権利という意味ではなく、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称であって、相手国兵力の殺傷と破壊、相手国の領土の占領などの権能を含むものである。
一方、自衛権の行使にあたっては、わが国を防衛するため必要最小限度の実力を行使することは当然のこととして認められている。例えば、わが国が自衛権の行使として相手国兵力の殺傷と破壊を行う場合、外見上は同じ殺傷と破壊であっても、それは交戦権の行使とは別の観念のものである。ただし、相手国の領土の占領などは、自衛のための必要最小限度を超えるものと考えられるので、認められない。