わが国を守るためには自衛隊が強くなければならないが、わが国全体で連携しなければ、わが国を守ることはできない。そのため、防衛力を抜本的に強化することに加えて、わが国が持てる力である、外交力、情報力、経済力、技術力を含めた国力を統合して、あらゆる政策手段を体系的に組み合わせて国全体の防衛体制を構築していくこととしている。その際、政府一体となった取組を強化していくため、政府内の縦割りを打破していくことが不可欠である。
この一環として、政府は、防衛力の抜本的強化を補完し、それと不可分一体のものとして、総合的な防衛体制の強化を進めており、①研究開発、②公共インフラ整備、③サイバー安全保障、④わが国と同志国の抑止力の向上などのための国際協力の4つの分野における取組を、関係省庁の枠組みのもとで推進している。
最先端の科学技術は加速度的に進展し、民生用と安全保障用の技術の区分は極めて困難となっている。世界では、民生用途でのイノベーションと防衛用途でのイノベーションが、相互に影響し合うなかで技術が発展してきており、わが国においても政府、民間のそれぞれで活発に進められている研究開発の成果を防衛目的にも活用することは非常に重要である。
このような認識から、政府横断的な仕組みのもと、防衛省の意見を踏まえた研究開発ニーズと関係省庁が有する技術シーズを合致させることにより、総合的な防衛体制の強化に資する科学技術の研究開発を推進することとなった。関係省庁の民生利用目的の研究のなかで、総合的な防衛体制の強化にも資するものとして、当面推進していくものを整理した重要技術課題を踏まえ、2023年12月、2024年度に実施するマッチング事業が認定された。
認定された事業については、関係省庁の取組のなかで当該事業を実施しつつ、研究成果などについて防衛省とコミュニケーションを行い、それを通じて、防衛省の研究開発に結びつく可能性が高いものを効率的に発掘・育成していくこととしている。
参照図表III-1-1-2(2024年度に実施するマッチング事業の概要)
安全保障環境を踏まえた対応を実効的に行うため、南西諸島を中心としつつ、その他の地域においても、自衛隊・海上保安庁が、平素において必要な空港・港湾を円滑に利用できるよう、関係省庁とインフラ管理者の間で「円滑な利用に関する枠組み」を設けており、当該枠組みが設けられた空港・港湾を「特定利用空港・港湾」としている。「特定利用空港・港湾」においては、民生利用を主としつつ、自衛隊・海上保安庁の艦船・航空機の円滑な利用にも資するよう、必要な整備または既存事業の促進を図ることとしている。
参照図表III-1-1-3(特定利用空港・港湾(2024年4月1日現在))
政府は、国家安全保障戦略を踏まえ、武力攻撃に至らないものの安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃のおそれがある場合に能動的サイバー防御を導入することなど、政府全体としてサイバー安全保障分野における対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させる方針である。
2024年度においては、特に、政府機関などの情報システムのサイバーセキュリティ確保についての施策を中心に事業を計画している。このほか、サイバー安全保障関連予算の一定の増強を図るとともに、複数の幹部職員の新たな配置と指揮命令系統の強化により、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC:National center of Incident readiness and Strategy for Cybersecurity)の抜本的強化を図る。また、能動的サイバー防御の実施に関する事業については、関連する法整備に向けた検討の進展状況を踏まえつつ、実施すべき事業について引き続き精査を行うこととしている。
参照図表III-1-1-4(政府関係機関などのセキュリティ強化)、4節5項(サイバー領域での対応)
外務省は、同志国の安全保障上の能力や抑止力強化に貢献することを目的に、政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)とは別に、新たな無償による資金協力の枠組みである政府安全保障能力強化支援(OSA:Official Security Assistance)を創設した。政府として、外務省のみならず、防衛省を含む関係省庁で緊密に連携しつつ進めている。
2023年度は、フィリピン、バングラデシュ、マレーシア、フィジーの4か国の軍に対し、海洋安全保障分野の警戒監視能力の向上などに資する機材を供与することを決定した。
フィリピンにおけるE/N署名・交換式(2023年11月)【首相官邸HP】
参照図表III-1-1-5(2023年度のOSAの実績)