防衛力整備計画1は、国家防衛戦略に従って防衛力を抜本的に強化するにあたり、わが国として保有すべき防衛力の水準や、それを達成するための経費総額、主要装備品の整備数量などを示している2。
防衛力整備計画においては、策定から5年後の2027年度までに、わが国への侵攻が生起する場合には、わが国が主たる責任をもって対処し、同盟国などの支援を受けつつ、これを阻止・排除できるように防衛力を強化し、おおむね10年後までに、防衛力の目標をより確実にするためさらなる努力を行い、より早期かつ遠方で侵攻を阻止・排除できるように防衛力を強化することとしている。
また、防衛力整備計画は国家防衛戦略に従い、以下を基本方針として、防衛力の整備、維持および運用を効果的かつ効率的に行うこととしている。
まず、7つの重視分野として、わが国への侵攻そのものを抑止するために、遠距離から侵攻戦力を阻止・排除できるよう、①スタンド・オフ防衛能力と②統合防空ミサイル防衛能力を強化する。また、万が一、抑止が破れ、わが国への侵攻が生起した場合には、これらの能力に加え、有人アセット、さらに無人アセットを駆使するとともに、水中・海上・空中といった領域を横断して優越を獲得し、非対称的な優勢を確保できるようにするため、③無人アセット防衛能力、④領域横断作戦能力、⑤指揮統制・情報関連機能を強化する。さらに、迅速かつ粘り強く活動し続けて、相手方の侵攻意図を断念させられるようにするため、⑥機動展開能力・国民保護、⑦持続性・強靱性を強化する。また、いわば防衛力そのものである防衛生産・技術基盤に加え、防衛力を支える人的基盤なども重視する。
次に、装備品の取得にあたっては、能力の高い新たな装備品の導入、既存の装備品の延命、能力向上などを適切に組み合わせ、必要十分な量と質の防衛力を確保する。その際、装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の強化などによるコスト削減に努め、費用対効果の向上を図る。また、自衛隊の現在および将来の戦い方に直結しうる分野のうち、特に政策的に緊急性・重要性が高い事業は、民生先端技術の活用などにより、着実に早期装備化を実現する。
さらに、採用の取組強化や予備自衛官などの活用、女性の活躍推進、多様かつ優秀な人材の有効な活用、生活・勤務環境の改善、人材の育成、処遇の向上などの人的基盤の強化に関する各種施策を総合的に推進する。
加えて、日米共同の統合的な抑止力を一層強化するため、領域横断作戦にかかる協力や相互運用性の向上などを推進するとともに、日米共同での実効的な対処力を支える基盤を強化するため、情報保全やサイバーセキュリティにかかる取組、防衛装備・技術協力を強化する。また、在日米軍の駐留を支えるための施策を着実に実施する。また、自由で開かれたインド太平洋(FOIP:Free and Open Indo-Pacific)というビジョンを踏まえ、多角的・多層的な防衛協力・交流を積極的に推進するため、各種協定の制度的枠組みの整備をさらに推進するとともに、共同訓練・演習、防衛装備・技術協力を含む取組などを推進する。
最後に、防衛力の抜本的強化にあたっては、スクラップ・アンド・ビルドを徹底して、組織定員と装備の最適化を実施するとともに、効率的な調達などを進めて大幅なコスト縮減を実現してきたこれまでの努力をさらに強化していく。あわせて、人口減少と少子高齢化を踏まえ、無人化・省人化・最適化を徹底していく。
1 防衛力整備計画について(令和4年12月16日国家安全保障会議及び閣議決定)
2 必要な防衛力を整備していくには時間を要することから、具体的な見通しに立って、継続的かつ計画的に行うことが必要である。こうした観点から、51大綱策定以降、防衛庁(当時)は、大綱に基づき各年度の防衛力整備を進めるにあたっての主要事業をまとめた防衛庁限りの見積りとして、中期業務見積りを1978年と1981年に作成した(いわゆる53中業・56中業)。その後、政府の責任において中期的な防衛力整備の方向を内容と経費面の両面にわたって示す観点から、政府は、1986年度以降、5年間を対象期間とする中期的な防衛力整備計画(中期防衛力整備計画)を策定し、これに基づき、各年度の防衛力整備を行ってきた。