冷戦終結以降、欧州の多くの国やカナダでは、多様な安全保障課題に対処する必要性が認識されてきた一方で、国家による大規模な侵攻の脅威は消滅したと認識されてきた。しかし、2014年2月以降のウクライナ情勢の緊迫化、特に2022年2月に始まったウクライナ侵略を受け、ロシアの力による一方的な現状変更やハイブリッド戦に対応すべく、既存の戦略の再検討や新たなコンセプト立案の必要に迫られている。また、国際テロリズムに関しても、その脅威の継続が認識されており、その対応が求められ続けている。さらに、長期化するシリア内戦など、混迷する中東情勢を背景として急増した難民・移民をめぐる問題をはじめ、依然として国境の安全確保が課題となっている。
こうした課題・状況に対処するため、欧州やカナダでは、NATO(North Atlantic Treaty Organization)やEU(European Union)といった多国間の枠組みをさらに強化・拡大しつつ、域外の活動にも積極的に取り組むなど、国際社会の安全・安定のために貢献している。また、各国レベルでも、安全保障・防衛戦略の見直しや国防改革、二国間・多国間での防衛・安全保障協力強化を進めている。
参照図表I-3-9-1(NATO・EU加盟国の拡大状況)、2章3項(ウクライナ侵略が国際情勢に与える影響と各国の対応)