Contents

第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチ

4 施設の強靱化

防衛力の持続性・強靱性の基盤となる自衛隊施設については、十分な機能を確保することが重要である。自衛隊施設の約4割は旧耐震基準時代に建設されているため、平素においては自衛隊員の安全を確保し、有事においても容易に作戦能力を喪失しない施設へ変容させる必要がある。駐屯地・基地などの全体(283地区)が保有する20,000棟以上にのぼる自衛隊施設の性能を評価し、集約・建替えなどの整備計画(マスタープラン(MP:Master Plan))を作成し、既存施設の更新などの整備を、優先順位を付けながら、効率的に進めている。

このほか、災害対策として、浸水防止対策、斜面崩壊3防止対策なども進めている。

また、継続的な部隊運用に必要な各種弾薬の取得に連動し、火薬庫を整備する必要があるほか、自衛隊の運用にかかる基盤などの分散や、被害を受けた際の復旧、代替などにより、多層的に強靱性を向上させるための各種取組を行うこととしている。

さらに、自衛隊の施設整備のみならず提供施設整備を含め増大する施設整備予算を適切に執行するため、2024年度、本省内部部局に建設制度官を新設し、より一層の入札・契約制度の適正化を図ることとしている。

1 火薬庫の整備

スタンド・オフ・ミサイルをはじめとした各種弾薬の取得に連動して、必要な火薬庫を整備することとしており、火薬庫の確保にあたっては、陸・海・空自の効率的な協同運用、米軍の火薬庫の共同使用、弾薬の抗たん性の確保の観点から島嶼(しょ)部への分散配置を追求、促進することとしている。

2 自衛隊施設の抗たん性の向上

主要な装備品、司令部などを防護し、粘り強く戦う態勢を確保するため、主要司令部などについては、地下化・構造強化、電力線などにフィルターを設置するなどの電磁パルス(EMP:Electro Magnetic Pulse)攻撃対策などを実施することとしている。また、戦闘機を分散して配置するための分散パッドの整備、戦闘機などの格納庫のえん体化4、電気、水道などのライフラインについても、既存施設の更新などに合わせて多重化や老朽更新を図る計画である。あわせて、省人化を図りつつ、基地警備機能を強化することとしている。

改修したF-15戦闘機用の航空機えん体(空自千歳基地)

改修したF-15戦闘機用の航空機えん体(空自千歳基地)

3 部隊新編や新規装備品導入に必要となる施設の整備

防衛力整備計画期間中においても、引き続き、部隊新編や新規装備品導入に必要となる施設の整備を行うこととしている。具体的には、陸自における佐賀駐屯地(仮称)新設にかかる施設整備や海自の佐世保(崎辺東地区(仮称))の施設整備、空自におけるF-35(A・B)戦闘機受入施設整備などを行うこととしている。

F-35(A・B)戦闘機受入施設(イメージ)

F-35(A・B)戦闘機受入施設(イメージ)

4 施設の構造強化、再配置・集約化など

既存施設の更新に際しては、爆発物、核・生物・化学兵器、電磁波、ゲリラ攻撃などに対する防護性能を付与するものとし、施設の機能・重要度に応じ、構造強化や離隔距離確保のための再配置、集約化などを老朽化対策と合わせて実施することで、施設の機能が十分に発揮できるようにする。

5 災害対処拠点となる駐屯地・基地などの機能維持・強化

大規模災害時などにおける自衛隊施設の被災による機能低下を防ぐため、被害が想定される駐屯地・基地などにおいて、津波などの災害対策を推進することとし、具体的には、受変電設備の高所化や出入り口の止水板の設置などを実施することとしている。今後、気候変動に伴う各種課題へ適応・対応し、的確に任務・役割を果たしていけるよう、駐屯地・基地の施設やインフラの強靱化などを進めることとしている。

3 急傾斜の斜面が豪雨や地震などに伴って急激に崩落するもの。

4 攻撃に耐えうるよう強化すること。