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第II部 わが国の安全保障・防衛政策

4 重要影響事態への対応

重要影響事態安全確保法18は、重要影響事態が生起した場合の対応として、後方支援活動などを行うことにより、重要影響事態に対処する外国との連携を強化し、わが国の平和および安全の確保に資することを目的としている。同法では、支援対象や対応措置について次のとおり定めている。

KEY WORD重要影響事態

そのまま放置すればわが国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態などわが国の平和および安全に重要な影響を与える事態。

1 支援対象

支援対象となる重要影響事態に対処する軍隊などは、①日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍、②国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行う外国の軍隊、③その他これに類する組織である。

2 重要影響事態への対応措置

重要影響事態に際し、次の対応措置を実施することができる。

ア 後方支援活動

重要影響事態に対処する軍隊などに対する物品および役務の提供(補給、輸送、修理・整備、医療、通信、空港・港湾業務、基地業務、宿泊、保管、施設の利用および訓練業務)、便宜の供与その他の支援措置。

なお、武器の提供は行わないものの、「弾薬の提供」と「戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備」を実施できる。

イ 捜索救助活動

ウ 船舶検査活動19(船舶検査活動法20に規定するもの)

エ その他の重要影響事態に対応するための必要な措置

外国領域での対応措置については、当該外国などの同意がある場合に限り実施可能である。

3 武力行使との一体化に対する回避措置など

他国の武力の行使との一体化を回避するとともに、自衛隊員の安全を確保するため、次の措置が規定されている。

  • 現に戦闘行為が行われている現場では、活動を実施しない。ただし、捜索救助活動については、遭難者が既に発見され、救助を開始しているときは、部隊等の安全が確保される限り当該遭難者にかかる捜索救助活動を継続できる。
  • 自衛隊の部隊等の長などは、活動の実施場所またはその近傍において、戦闘行為が行われるに至った場合またはそれが予測される場合には、活動の一時休止などを行う。
  • 防衛大臣は実施区域を指定し、その区域の全部または一部において、活動を円滑かつ安全に実施することが困難であると認める場合などには、速やかに、その指定を変更し、またはそこで実施されている活動の中断を命じなければならない。
4 重要影響事態と存立危機事態の関係

重要影響事態と存立危機事態の両者は、異なる法律上の概念として、それぞれの法律に定める要件に基づいて該当するか否かを個別に判断するものであるが、わが国にどのくらいの戦禍が及ぶ可能性があるのか、そして国民がこうむることとなる被害はどの程度なのかといった尺度は共通するなど、存立危機事態は概念上、重要影響事態に包含されるものである。したがって、事態の推移により重要影響事態が存立危機事態の要件をも満たし、存立危機事態が認定されることもありうる。

18 重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律

19 国連安保理決議に基づいて、または旗国(海洋法に関する国際連合条約第91条に規定するその旗を掲げる権利を有する国)の同意を得て、わが国が参加する貿易その他の経済活動にかかわる規制措置の厳格な実施を確保する目的で、船舶(軍艦などを除く。)の積荷・目的地を検査・確認する活動や、必要に応じ船舶の航路・目的港・目的地の変更を要請する活動。

20 重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律