東南アジア各国は、近年、経済成長などを背景として国防費を増額させ、第4世代戦闘機を含む戦闘機や潜水艦などの装備品の導入を中心とした軍の近代化を進めている。
また、南シナ海における領有権をめぐる係争などを背景に、各国は、艦艇、無人機などの情報収集・警戒監視・偵察(ISR:Intelligence, Surveillance, and Reconnaissance)能力強化に努めている。
インドネシアは、航空戦力について、ラファール戦闘機(仏)42機の調達を計画しているほか、F-15EX戦闘機(米)36機の調達に向け米国と交渉している。また、2016年1月、韓国と第4.5世代戦闘機(KF-21)の共同開発の費用分担や協力内容を定めた合意書を締結しており、2022年7月、最初のプロトタイプ機の初飛行が実施された。米国からは、スキャンイーグル無人偵察機を導入している。さらに2019年12月、CH-4無人機(中)のデザインを取り入れた国産のブラックイーグル無人攻撃機の試作機を公開した。
海軍戦力について、209級潜水艦(韓)3隻を購入する契約を締結し、2隻を韓国で、3隻目をインドネシア国内で生産した。
マレーシアは、航空戦力に関して、2023年2月にFA-50軽戦闘機(韓)18機を購入する契約を締結した。また、スキャンイーグル無人偵察機(米)を導入している。
海軍戦力について、国産の沿海域戦闘艦(LCS)6隻の建造を推進しており、2017年8月に1番艦が進水した。加えて、2021年12月までに、沿海域任務艦(LMS:Littoral Mission Ship)(中)4隻を導入している。
ミャンマーは、2019年12月、インドからキロ級潜水艦(露)を受領し、2021年12月には、ミン級潜水艦(中)を就役させた。ミャンマーの潜水艦の調達には近隣諸国も注目している。2022年12月には、FTC-2000G軽戦闘機(中)を導入している。また、2022年12月までに、Su-30戦闘機(露)を導入している。
フィリピンは、南シナ海における領有権をめぐる係争などを背景に、近年装備の近代化を進めている。
航空戦力については、2015年11月から韓国製FA-50PH軽戦闘機を順次導入し、2017年5月までに合計12機を配備した。現在は、マルチロール戦闘機の調達を計画しており、スウェーデン製JAS-39グリペンとF-16(米)が候補にあがっている。また、2020年10月、ブラジルからA-29軽攻撃機6機を受領し、2021年3月、さらに18機追加購入する方針を示した。2022年11月には、スキャンイーグル無人偵察機(米)を受領している。また、2022年1月、インドから超音速巡航ミサイル「ブラモス」を調達する契約を締結した。
海軍戦力としては、2016年までに、ハミルトン級フリゲート(米)を3隻導入するとともに、2017年までにインドネシア製ドック型輸送揚陸艦を2隻導入した。また、2021年3月までにフリゲート2隻(韓)を導入した。2019年8月、韓国から供与されたポハン級コルベット1隻が就役したことで、フィリピンは長期にわたり欠如していた対潜戦能力を復活させた。さらに、同年9月、フィリピンは陸海空統合演習「DAGIT-PA」を実施し、同年6月に就役したAAV水陸両用車4両を運用した。
シンガポールは、軍の近代化に努めている、世界有数の武器輸入国である。
航空戦力については、2013年までにF-15戦闘機(米)40機を導入したほか、F-35統合攻撃戦闘機(米)計画に参加している。2020年1月、米国政府は、シンガポールへのF-35B戦闘機の売却を承認した。
海軍戦力について、2017年5月までにドイツ製の218SG型潜水艦を4隻購入する契約を締結しており、2023年7月には1隻目を受領した。2023年3月には、現有ミサイル・コルベットの後継艦として、多用途戦闘艦6隻を設計および建造する契約を国内企業と締結した。
タイは、航空戦力に関して、2013年までに、スウェーデン製JAS-39グリペン戦闘機12機を導入している。
海軍戦力について、2014年7月、潜水艦隊司令部を発足させており、2017年4月には、ユアン級潜水艦(中)を今後11年間で合計3隻購入することを海軍が計画し、うち1隻の購入を閣議決定した。しかし、当初はドイツ製エンジンを搭載予定であったが、ドイツが中国への輸出を拒否したため調達が延期されている。また、2012年9月にフリゲート2隻を導入する計画が閣議で了承され、1隻目として2018年12月にフリゲート(韓)を受領した。さらに、2019年9月、71ドック型輸送揚陸艦(韓)1隻の購入契約を締結した。
ベトナムは、航空戦力に関して、Su-30戦闘機(露)を2004年から順次導入しており、これまでに最大36機が導入されたと報じられている。さらに、2020年1月、ベトナムはYak-130練習機(露)12機を発注したと報じられ、2021年11月、最初の6機を受領した。また、スキャンイーグル無人偵察機(米)を導入している。
海軍戦力について、2017年1月までにキロ級潜水艦(露)6隻を導入したほか、2018年2月までにゲパルト級フリゲート(露)4隻の運用を開始した。