安全保障分野での協力・交流を推進するにあたっては、地域の特性、相手国の実情やわが国との関係なども踏まえつつ、最適な手段を組み合わせた二国間・多国間での防衛協力・交流が重要となる。
オーストラリアは、わが国にとって、ともに米国の同盟国として、基本的価値のみならず安全保障上の戦略的利益を共有する、インド太平洋地域の特別な戦略的パートナーである。
これまで、日豪ACSAや日豪情報保護協定、日豪防衛装備品・技術移転協定、日豪RAA(2022年1月署名、2023年8月発効)といった、協力のための基盤を整備してきた。また、2022年10月に署名された新たな「安全保障協力に関する日豪共同宣言1」を踏まえ、国家防衛戦略では、両国の防衛協力をさらに深化させ、日米防衛協力に次ぐ緊密な関係を構築するとしている。
両国は、同共同宣言も踏まえ、緊急事態における日豪協力に関する議論や情報収集・警戒監視・偵察(ISR:Intelligence, Surveillance, and Reconnaisance)における協力、豪国防軍に対する武器等防護2、二国間・多国間共同訓練などを推進し、相互運用性を向上している。また、第三国における能力構築支援、人道支援・災害救援(HA/DR:Humanitarian Assistance/Disaster Relief)にかかる協力や防衛装備・技術協力なども推進している。
参照II部5章3項8(米軍等の部隊の武器等防護)、資料22(米軍等の部隊の武器等防護の警護実績(自衛隊法第95条の2関係))
2023年4月、浜田防衛大臣(当時)は、マールズ・オーストラリア副首相兼国防大臣と電話会談を行い、同月、オーストラリアが公表した「国防戦略見直し3」について、オーストラリアの抑止力強化を通じインド太平洋地域の平和と安定に資するものであり、歓迎、支持する旨を述べた。また、両閣僚は、日豪防衛協力がインド太平洋地域の平和と安定のため、より一層積極的に貢献していく存在へと深化するため、防衛協力・交流を引き続き活発に進めていくことで一致した。
同年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットに際し、アルバニージー・オーストラリア首相と懇談を行った。懇談において、岸田内閣総理大臣は、日豪が戦略認識や進むべき方向性を共有していることは明らかであり心強い旨述べた。また、両首脳は、2022年10月に署名された新たな「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に基づき、両国の安全保障協力が進展していることを歓迎し、この宣言の実施に資する日豪RAAの早期発効に向けた期待を表明した。
同年6月、浜田防衛大臣(当時)は、シンガポールで開催されたシャングリラ会合に際し、マールズ副首相兼国防大臣と会談を行い、「防衛科学技術に関する日豪包括取決め」に署名した。今後、様々な分野で科学技術協力を推進するとともに、双方の戦略的認識を共有し、相互運用性の強化、防衛協力の実効性向上を一層進展させることで一致した。
同年9月、岸田内閣総理大臣は、アルバニージー首相と日豪首脳会談を行い、同年8月に発効した日豪RAAにより、日豪の防衛協力が進展していることに歓迎の意を表した。また新たな「安全保障協力に関する日豪共同宣言」のもと、具体的協力を強化していくことで一致した。
同年10月、木原防衛大臣は、マールズ副首相兼国防大臣と東京にて会談を行い、新たな「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を着実に実行していくことや、両国の同盟国である米国を含めた3か国防衛協力をあらゆる分野で進める重要性を確認した。両国は、防衛装備・技術協力の重要性についても確認し、豪国防省が三菱電機オーストラリアとの間で共同開発事業の契約締結を公表4したことに歓迎の意を表明した。
日豪防衛相会談(2023年10月)
2024年5月、木原防衛大臣は、マールズ副首相兼国防大臣とハワイにて会談を行った。会談では、軌を一にする日豪の戦略のもとで具体的な協力を進め、互いの能力を高める重要性を確認するとともに、日本のスタンド・オフ防衛能力を活用した反撃能力とオーストラリアの長距離精密打撃力の具体的な協力の方向性を検討することを確認した。また、両大臣は、ISR協力に加え、日米共同指揮所演習「ヤマサクラ(YS-85)」や日米共同統合演習「キーン・エッジ24」に豪国防軍が初めて参加するなど、運用協力・共同訓練が深化していることを確認し、太平洋島嶼国地域における協力についても引き続き連携を強化することで一致した。
吉田統幕長は、2023年4月以降、キャンベル豪国防軍司令官と6回にわたる会談を行った。会談では、整合された日豪の戦略に基づき、両国の防衛協力・交流の実効性をさらに向上させ、これをインド太平洋地域の平和と安定の中核とすべく尽力していくことで一致した。
森下陸幕長は、2023年4月以降、スチュアート豪陸軍本部長と5回にわたる懇談を行った。同年8月には、豪陸軍主催陸軍参謀長シンポジウム(CAS:Chief of Army Symposium)に参加し、豪陸軍本部長のほか参加国陸軍参謀長級による意見交換を実施した。
陸自は、各種共同訓練の一環として、陸自特殊作戦群と豪陸軍特殊作戦コマンドとの実動訓練を継続的に実施している。また、豪陸軍と相互に連絡官を派遣し、連携強化を推進している。
酒井海幕長は、2023年4月以降、ハモンド豪海軍本部長と3回にわたる懇談を行った。懇談では、太平洋島嶼国への協力も含め、日豪の連携をより一層強化していくことで合意した。
海自は、二国間共同訓練「日豪トライデント」や日米印豪共同訓練「マラバール5」、日米豪韓共同訓練「パシフィック・ヴァンガード」をはじめとする多国間共同訓練を通じ、豪海空軍とハイエンドな内容を含めた連携強化・相互運用性の向上に努めている。また、同年6月、海上保安庁MCT(Mobile Cooperation Team)、オーストラリア海事サービスアドバイザーを交えて実施した日豪キリバス親善訓練など、太平洋島嶼国との防衛協力、海洋安全保障分野の能力構築支援などにおいても連携を強化している。
内倉空幕長は、同年4月、米国主催宇宙シンポジウムにおいて、ロバーツ豪宇宙コマンド司令官と会談を行った。また、同年11月、米国で行われた太平洋地域空軍参謀長等シンポジウム(PACS:Pacific Air Chiefs Symposium)において、チップマン豪空軍本部長と会談を行った。
空自は、RAA発効後、2023年8月にF-35A戦闘機の米国・オーストラリアへの機動展開訓練を、同年9月に日豪共同訓練「武士道ガーディアン23」をそれぞれ実施した。F-35A戦闘機の機動展開訓練では、F-35A戦闘機などをグアム、オーストラリアに機動展開させ、今後のローテーション展開を見据えた空軍種間の連携強化を図った。
日米印豪共同訓練「マラバール23」において、護衛艦「しらぬい」に
乗り組む連絡士官(手前から印、豪、米)(2023年8月)
オーストラリア・ティンダル空軍基地に降り立ち、歓迎の放水を受ける
空自F-35A戦闘機(2023年8月)
参照IV部1章3節4項1(1)(オーストラリア)、IV部3章1節(訓練・演習に関する取組)、資料41(最近の日豪防衛協力・交流の主要な実績(2020年度以降))
動画:令和5年度豪州における実動訓練【Field Training Exercise in Australia 2023】
URL:https://youtu.be/kn9inxgNUgs?si=zrNdpvwaCRoyOi7w
わが国とオーストラリアは、基本的価値を共有しており、インド太平洋地域および国際社会が直面する様々な課題の解決のため、緊密に協力している。このような協力をより効果的・効率的なものとし、地域の平和と安定に貢献していくためには、日豪それぞれの同盟国である米国を含めた日米豪3か国による協力を積極的に推進することが重要である。
2023年6月、浜田防衛大臣(当時)は、シンガポールで開催されたシャングリラ会合に際し、日米豪防衛相会談を行った。会談では、インド太平洋地域の安全、安定および繁栄を確保するため、日米豪3か国の領域横断的な相互運用性向上や協力深化に向けた具体的、実践的な手段の継続、さらに、ASEAN諸国、太平洋島嶼国などとの協力を一層強化することにコミットした。また、オーストラリアにおける日米豪F-35戦闘機共同訓練の実施、オーストラリア北部における複雑でハイエンドな演習の増加や自衛隊による米軍・豪国防軍の武器等防護の定期化、ならびに情報共有、装備・技術協力、地域課題への対応などにおける3か国の協力を一層強化することにコミットした。
同時期、フィリピンを交えた日米豪比防衛相会談も初めて開催され、4大臣は、地域における共通の課題や4か国の協力の拡大について議論したほか、FOIPの実現に向けて、ともに取り組むことを確認した。
2024年5月、木原防衛大臣は、ハワイにおいて日米豪防衛相会談を行った。会談では、日米豪3か国の深い戦略的整合性および共通の価値観を強調するとともに、中国による南シナ海・東シナ海における力または威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みに強い反対の意を改めて表明した。また、FOIPの実現のために3か国のパートナーシップが果たす重要な役割を確認し、3か国全てにおけるF-35戦闘機共同訓練の実施、初の共同による防空ミサイル防衛実射訓練の実施、豪米の戦力態勢活動への日本の参加の増大など、防衛協力を拡大することにコミットした。さらに、「研究、開発、試験および評価(RDT&E:Research, Development, Test, and Evaluation)プロジェクトに関する日米豪取決め」に署名し、科学技術協力の機会について、さらに議論することで一致した。
同時期、2度目となる日米豪比防衛相会談が行われ、4大臣は、自由で開かれ安全で繁栄したインド太平洋という共通のビジョンを進めるための重要な連携について強調した。
日米豪3か国は、日米豪共同訓練やその他の国も交えた多国間共同訓練などの軍種間協力も継続して行っている。
吉田統幕長は、2023年6月、シャングリラ会合に際し、アクイリノ米太平洋軍司令官、キャンベル豪国防軍司令官と日米豪参謀総長等会談を行った。会談では、インド太平洋地域が国際安全保障の焦点であるという認識を共有し、地域の平和と安定に向け、日米豪の連携を一層強化することで一致した。また、同年8月に実施した日米豪参謀総長等会談では、FOIPの実現のため、今後の日米豪防衛協力の方向性について議論した。
陸自・海自は、同年7月から8月にかけて、オーストラリアで実施された米豪主催多国間共同訓練「タリスマン・セイバー23」に参加し、米豪軍との相互運用性向上、参加国との連携強化を図った。また、2024年2月には、日米共同統合演習「キーン・エッジ24」に豪国防軍が初めて参加し、日米豪の共同統合運用能力の向上を図った。
タリスマン・セイバー23における作戦会議(2023年8月)
森下陸幕長は、2023年9月、インドで開催されたインド太平洋地域陸軍参謀長等会議(IPACC:Indo-Pacific Armies Chiefs Conference)に際し、初の日米豪韓4か国会合を行うとともに、同年12月には、米太平洋陸軍とランド・フォーシーズ・サミット(LFS:Land Forces Summit)を共催し、日米豪にフィリピン陸軍・海兵隊のトップを交えた初の日米豪比4か国懇談および日米豪韓4か国懇談を行った。
陸自は、同年6月から7月にかけて、オーストラリアで米海兵隊および豪陸軍との実動訓練「サザン・ジャッカルー23」を実施し、対ゲリラ・コマンドウ対処にかかる作戦遂行能力の向上、米豪との相互運用性の向上を図った。また、同年12月に実施した日米共同指揮所演習「ヤマサクラ(YS-85)」では、豪陸軍が初めて参加し、日米豪の領域横断的な相互運用性の向上を図った。なお、同演習にはフィリピンが初めてオブザーバー参加し、日米豪比4か国の連携強化も図った。
酒井海幕長は、同年5月、シンガポール主催国際海洋防衛装備展示会(IMDEX(International Maritime Exhibition and Conference) Asia 2023)に際し、日米印豪4か国懇談を行い、マラバールを含む4か国の連携強化について意見交換をした。また、同年9月には、ハワイにおいて、日米印豪参謀長級懇談を行い、4か国の戦略環境認識の共有や連携の方向性について議論した。
海自は、同年6月および2024年2月に日米豪共同訓練を実施したほか、インド太平洋方面派遣(IPD(Indo-Pacific Deployment)23)部隊が、2023年6月から8月にかけて、日米豪加共同訓練「ノーブル・ウルフ」、日米豪韓共同訓練「パシフィック・ヴァンガード23」、日米印豪共同訓練「マラバール2023」を実施した。また、同年6月に行われた日米豪比防衛相会談の結果を受け、同年8月には、初の日米豪比共同訓練や4か国艦隊司令官などによる南シナ海の状況視察を実施した。同年10月には、南シナ海での日米豪加新共同訓練「ノーブル・カリブー」、11月には、米・豪・カナダ海軍に加え、初めてフィリピンのオブザーバー参加を得て、令和5(2023)年度海上自衛隊演習を行った。さらに同月、日米豪共同ISRを、2024年4月には、南シナ海で日米豪比海上協同活動を実施するなど、日米豪の防衛協力の実効性および相互運用性の強化、ならびに多国間連携の中核としての日米豪協力の深化が進んでいる。
空自は、同年12月に日米豪基地警備共同訓練を実施し、相互の運用要領の共有を図った。また、2024年2月、グアムを拠点とする日米豪共同訓練「コープ・ノース24」において、各種戦術訓練および海自も協同したHA/DRの共同訓練を実施し、相互運用性のさらなる向上を図った。
このように、日米豪3か国間での様々な機会を通じて、情勢認識や政策の方向性をすり合わせつつ、相互運用性を高める努力を続けている。
参照IV部3章1節(訓練・演習に関する取組)、資料52(最近の多国間ハイレベル交流の実績(2020年度以降))、資料58(多国間共同訓練の参加など(2020年度以降))
インドは、世界第1位の人口と、高い経済成長や潜在的経済力を背景に影響力を増しており、わが国と中東、アフリカを結ぶシーレーン上のほぼ中央に位置するなど、極めて重要な国である。また、インドとわが国は、基本的価値を共有するとともに、インド太平洋地域および世界の平和と安定、繁栄に共通の利益を有しており、特別戦略的グローバル・パートナーシップを構築している。このため、日印両国は「2+2」などの枠組みも活用しつつ、海洋安全保障をはじめとする幅広い分野において協力を推進している。
インドとの間では、「日印間の安全保障協力に関する共同宣言」、日印防衛装備品・技術移転協定、日印秘密軍事情報保護協定、日印ACSAがそれぞれ署名され、地域やグローバルな課題に対応できるパートナーとしての関係とその基盤が強化されている。
G7広島サミット開催時における日印首脳会談(2023年5月)
【首相官邸HP】
2023年4月、岡防衛審議官(当時)は、デリーにおいてアラマネ・インド国防次官と次官級防衛政策対話を行い、日印両国の安全保障戦略、地域情勢などについての意見交換や、両国の防衛協力など幅広い分野の議論を実施した。
同年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットの機会にモディ・インド首相と日印首脳会談を行い、主権、領土の一体性という国連憲章の原則を守ることの重要性、世界のどこであれ力による一方的な現状変更を許してはならないこと、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の堅持といった点を強調し、平和の実現に向けて協力していくことで一致した。両首脳は二国間関係についても議論し、FOIPの重要性に関し認識を共有するとともに、安全保障を含む様々な分野で協力を進めていくことを確認した。また、同年9月、岸田内閣総理大臣は、G20ニューデリーサミットの機会に、モディ首相と日印首脳会談を行い、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化などのほか、宇宙分野を含む先端技術分野でも日印で連携していくことで一致した。
吉田統幕長は、2023年4月以降、チョーハン印国防参謀本部参謀長と4回にわたる会談を行い、そのうち同年12月の会談時には、チョーハン国防参謀長が着任以来初の公式訪問先として、わが国を訪れた。会談では、両国の戦略環境認識について意見交換し、日印防衛協力・交流の多角的・多層的な取組みを一層強化していくことで一致した。また、同年9月には、初の日印統合幕僚協議が開催され、これまで軍種レベルであった日印防衛協力が、統合レベルへと進展した。
公式招待を受け、防衛省にて儀仗隊を巡閲する
チョーハン印国防参謀長(2023年12月)
森下陸幕長は、同年9月、インドで開催されたインド太平洋地域陸軍参謀長等会議(IPACC)に際し、パンデ印陸軍参謀長と懇談を行った。懇談では、地政学的にもインド太平洋の東西に位置する両国の関係強化は不可欠との認識を共有し、両軍種の連携をさらに深化させていくことで一致した。また、陸自は、2024年2月から3月にインドで日印共同訓練「ダルマ・ガーディアン23」を実施し、陸軍種間のさらなる連携強化を図った。
酒井海幕長は、同年9月、ハワイにて日米印豪参謀長級会談を行い、インド太平洋地域の情勢認識の共有を図るとともに、日米印豪共同訓練「マラバール」などの演習や協力などをさらに拡大させていくことで一致した。また、クマール印海軍参謀長と二国間懇談も行った。
海自は、2023年4月以降、日印共同訓練を計3回実施するとともに、同年7月の日印共同訓練「JIMEX2023」では、対潜戦など各種戦術訓練を通じて相互運用性の強化を図った。同年6月には、令和5(2023)年度掃海特別訓練(日米印伊共同訓練)において、インド海軍を含む参加国海軍との連携強化を図り、同年8月、オーストラリアで初めて開催した日米印豪共同訓練「マラバール2023」では、ハイエンドな演習を通じて4か国の相互運用性の向上を図った。さらに、2022年から、インド海軍主催多国間共同訓練「MILAN」に継続的に参加しており、2024年2月に参加した「MILAN2024」では、インド海軍や米豪を含む参加国海軍との共同訓練などを通じて連携強化を図った。
内倉空幕長は、2023年11月、米国で行われた太平洋地域空軍参謀長等シンポジウム(PACS)において、チョウダリ印空軍参謀長と会談を行った。
参照IV部3章1節(訓練・演習に関する取組)、資料42(最近の日印防衛協力・交流の主要な実績(2020年度以降))、資料52(最近の多国間ハイレベル交流の実績(2020年度以降))、資料58(多国間共同訓練の参加など(2020年度以降))
欧州諸国は、わが国と基本的価値を共有し、また、テロ対策や「瀬取り」対応などの非伝統的安全保障分野や国際平和協力活動を中心に、グローバルな安全保障上の共通課題に取り組むための中核を担っている。そのため、これらの国と防衛協力・交流を進展させることは、わが国がこうした課題に積極的に関与する基盤を提供するものであり、わが国と欧州諸国の双方にとって重要である。
参照IV部3章1節(訓練・演習に関する取組)、資料43(最近の欧州諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2020年度以降))、資料58(多国間共同訓練の参加など(2020年度以降))
ア 英国との防衛協力・交流の意義
英国は、欧州のみならず世界に影響力を持つ大国であるとともに、わが国と歴史的にも深い関係があり、安全保障面でも米国の重要な同盟国として戦略的利益を共有している。このような観点から、国際平和協力活動、テロ対策、海賊対処、サイバーなどのグローバルな課題における協力や地域情勢などに関する情報交換を通じ、日英間で協力を深めることは、わが国にとって非常に重要である。また、英国は近年、空母打撃群のインド太平洋地域への派遣や哨戒艦2隻を同海域へ恒久的に展開し、北朝鮮船舶による「瀬取り」を含む違法な海洋活動への警戒監視活動に当たらせるなど、ルールに基づく海洋秩序の確保に重要な貢献をしていることから、わが国にとって、FOIPの実現のため日英の協力を深化させることは重要である。
英国との間では、日英「2+2」の開催、防衛装備品・技術移転協定、日英情報保護協定、日英ACSAの締結により、戦略的パートナーシップが一層円滑・強固なものとなっている。また、2023年1月に岸田内閣総理大臣、スナク英首相との間で署名された日英RAAが、同年10月に発効した。本協定により、両国部隊間の協力活動の実施が円滑化され、両国間の安全保障・防衛協力がさらに促進されるとともに、インド太平洋地域の平和と安定が強固に支えられることとなる。なお、2024年3月には、防衛駐在官を1名増員した。
さらに、2022年12月の日英伊首脳による共同声明により発足したグローバル戦闘航空プログラム6(GCAP:Global Combat Air Programme)は、インド太平洋地域と欧州を結ぶ国際社会の安定と繁栄の礎ともなりうる事業である。このように、日英両国は、アジアおよび欧州における相互の最も緊密な安全保障上のパートナーとして、連携を強固にしている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年5月のG7広島サミットに際し、岸田内閣総理大臣、スナク首相との間で行われた日英首脳ワーキング・ディナーでは、次期戦闘機の共同開発の協力機会の活用、日英RAAを活用した共同演習などの拡充や相互運用性の向上、自衛隊によるアセット防護措置の適用の可能性を視野に入れた二国間活動のより高いレベルへの引き上げ、地域や国際的な安全保障上の重要課題について協議した。また、これらに日英で協力して対応することなどを記載した共同文書「日英広島アコード」を発出し、両首脳は幅広い分野で日英関係を深化させていくことで一致し、欧州・アジアにおける互いに最も緊密な安全保障上のパートナーとして、安全保障・防衛協力に一層取り組んでいくことを確認した。
また、サミット出席に先立ち、来日したスナク首相は横須賀に停泊中の護衛艦「いずも」を視察し、「いずも」甲板において栄誉礼を受けるとともに、艦内の視察などを実施した。
同年11月には、第5回日英「2+2」を開催し、FOIPの実現に向けて海洋安全保障分野を含め、日英の具体的な協力を進めていくことを確認した。また、日英RAAの発効を受け、両国は相互運用性の向上や、より頻繁かつ複雑な演習の一層野心的な計画を実現すべく、同協定の適用を確保していくことで一致した。さらに、GCAPの進展、サイバー、宇宙などの領域での協力、経済安全保障、情報戦、女性・平和・安全保障(WPS:Women, Peace and Security)などの分野においても緊密に連携していくことで一致した。
日英「2+2」(2023年11月)
木原防衛大臣は、日英「2+2」に際し、シャップス英国防大臣と会談を行い、「日英広島アコード」を踏まえて、日英の安全保障分野における協力がかつてないほど緊密になっていることを確認した。また、日英RAAを活用し、日英の連携や相互運用性の向上を一層図っていくとともに、GCAPをはじめ、日英の防衛協力・交流のさらなる深化に向け、緊密に連携していくことで一致した。
同年12月、木原防衛大臣は、シャップス英国防大臣とクロセット・イタリア国防大臣と東京で会談を行い、共同声明を発出するとともに、GCAPにかかる政府間の効率的な協業体制を確立するため、「GCAP政府間機関(GIGO:GCAP International Government Organisation)の設立に関する条約」に署名した。また、来日したシャップス英国防大臣は、2025年にインド太平洋に派遣される予定の英空母打撃群が、日本に寄港することを公表した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年4月と8月にラダキン英国防参謀総長とテレビ会談を行った。8月のテレビ会談では、ラダキン英国防参謀総長から、同年7月に英国で発表された国防文書(DCP:Defence Command Paper)について説明を受け、同文書が日本との協力を重視していることに歓迎の意を表した。同年9月に実施した会談では、アジア・欧州における相互に最も緊密な安全保障上のパートナーとして、幅広い分野での安全保障・防衛協力に一層取り組んでいくことを強調した。
森下陸幕長は、同年5月、ハワイで開催された太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC:Land Force Pacific Symposium and Exposition)2023において、サンダース英陸軍参謀長と今後の防衛協力などについて懇談を行った。また、2024年2月にサンダース英陸軍参謀長がわが国を公式訪問した際、「日英陸軍種間協力のためのロードマップ」の改定版に署名した。
陸自は、2023年11月、英陸軍と島嶼防衛にかかる実動訓練「ヴィジラント・アイルズ23」を実施し、本訓練にあたって日英RAAが初めて適用された。
酒井海幕長は、同年8月、英国を公式訪問し、キー第一海軍卿と懇談を行った。懇談では、英空母の展開など英海軍のインド太平洋への関与を歓迎したほか、「日米広島アコード」に基づく英海軍との連携・協力の一層の深化を確認した。
海自は、米比主催共同訓練「Exercise SAMA SAMA 2023」に参加し、英海軍を含む参加国海軍との連携強化を図った。
内倉空幕長は、同年10月、来日したナイトン英空軍参謀長と懇談を行った。また、同年11月、米国で行われた太平洋地域空軍参謀長等シンポジウム(PACS)においても懇談を行い、国際情勢、安全保障環境などについて意見交換をした。
ア フランスとの防衛協力・交流の意義
フランスは、欧州やアフリカのみならず、世界に影響力を持つ大国である。インド洋および太平洋島嶼部に領土を保有し、インド太平洋地域に常続的な軍事プレゼンスを有する唯一のEU加盟国であり、わが国と歴史的にも深い関係を持つ特別なパートナーである。また、アフリカ地域における在外邦人等の保護および輸送などにおいて、同地域に影響力を有するフランスとの協力は不可欠である。
フランスとは、これまで日仏「2+2」などのハイレベル交流を継続的に実施し、日仏情報保護協定や日仏防衛装備品・技術移転協定、日仏ACSAが締結されているほか、部隊間での共同運用・演習のための行政上、政策上、法律上の手続を相互に恒常的に改善する方策についての議論を一層加速させることで一致している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットに際し、マクロン・フランス大統領と日仏首脳会談を行った。会談では、サイバーや宇宙分野などでの連携、共同訓練などの具体的協力を進展させることで一致するとともに、東アジア情勢について、中国をめぐる諸課題への対応、核・ミサイル問題、拉致問題を含む北朝鮮への対応において引き続き連携していくことを確認した。
同月実施した第7回日仏「2+2」では、インド太平洋地域における寄港や、二国間・多国間での共同訓練を通じた自衛隊とフランス軍との間の運用面での交流が定期的、かつ、質の高いものであることを歓迎した。また、太平洋島嶼国のために日仏協力を強化するとともに、部隊間での共同運用・演習のための行政上、政策上、法律上の手続を相互に改善するための恒常的な枠組みについての議論を加速することで一致した。
同年12月に実施した日仏首脳電話会談では、「日仏協力のロードマップ(2023-2027年)」が発出された。安全保障・防衛に関しては、二国間・多国間の共同訓練・演習における日仏の協力や、軍用機・艦艇などの寄港(航)を促進するとともに、宇宙・サイバー・電磁波の分野における協力、海洋安全保障分野、防衛装備・技術分野、第三国における能力構築支援、自国民保護における協力など、日仏の防衛協力・交流をさらに強化することとされた。
また、2024年5月に実施した日仏首脳昼食会において、日仏円滑化協定(RAA)の交渉開始に合意し、交渉を着実に進展させることで一致した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年6月、ビュルカール・フランス統合参謀総長とテレビ会談を行い、欧州およびインド太平洋地域の課題に相互に関与を強化していきたい旨述べた。同年8月には、フィジーで開催されたインド太平洋参謀総長等会議(CHOD:Chiefs of Defense Conference)において、ヴォージュール・フランス統合参謀本部作戦部長(当時)と会談を行い、同月の在ニジェール共和国邦人の退避におけるフランスの支援に謝意を表するとともに、欧州とインド太平洋地域の安全保障は不可分である旨強調し、今後の日仏協力・交流の方向性について認識を共有した。
自衛隊は、同年4月、フランス領ニューカレドニア駐留仏軍が主催するHA/DRの多国間訓練「南十字星」に参加し、フランスおよび参加国との相互理解の増進、信頼関係の強化を図った。
森下陸幕長は、同年9月、インドで開催されたインド太平洋地域陸軍参謀長等会議(IPACC)において、シル・フランス陸軍参謀長と懇談を行った。また、同年11月のフランス公式訪問に際し、シル陸軍参謀長などと懇談を行い、力による一方的な現状変更の試みを許容せず、法の支配に基づく国際秩序を維持するため、日仏の一層の連携が重要であるとの認識で一致した。
陸自は、同年9月にフランス領ニューカレドニアにて、日仏陸軍種として初めてとなる日仏共同訓練「ブリュネ・タカモリ」を実施した。
酒井海幕長は、同年9月、米国主催国際シーパワーシンポジウム(ISS:International Seapower Symposium)において、ヴォージュール・フランス海軍参謀長と懇談を行い、インド太平洋地域における日仏の連携について議論を行った。
海自は、フランス領ポリネシアおよびフランス領ニューカレドニアに駐留するフランス軍と日仏共同訓練「オグリ・ヴェルニー」を毎年実施するほか、フランス軍が主催する多国間共同訓練「ラ・ペルーズ」などに参加している。同年4月以降、日仏共同訓練「オグリ・ヴェルニー」を4回実施するとともに、同年6月には、米国主催大規模共同訓練「LSGE(Large Scale Global Exercise)237」の一環として、日本周辺海域、南シナ海などにおいて日米加仏共同訓練「ノーブル・タイフーン」、日米仏共同訓練「Multi Big-Deck Event」・「ノーブル・バッファロー」を行うなど、ハイエンドな訓練を通じて連携および抑止力の強化を図っている。また、2024年1月、派遣海賊対処行動水上部隊は、アデン湾においてフランス海軍と海賊対処共同訓練を実施し、日仏の連携強化を図った。
陸軍種初の日仏共同訓練「ブリュネ・タカモリ」(2023年7月)
内倉空幕長は、2023年6月、ミル・フランス航空宇宙軍参謀長からの招待に応じ、パリ・エアショーに参加するとともに、同参謀長と会談を行った。同年7月には、国内におけるフランス航空宇宙軍との初の共同訓練に際し、ミル参謀長が来日し、訓練視察や会談などを行った。
空自は、同年6月に実施した「オグリ・ヴェルニー」、「Multi Big-Deck Event」に空自戦闘機を参加させるとともに、同年7月には、フランス航空宇宙軍と国内で初の共同訓練を実施した。
ア ドイツとの防衛協力・交流の意義
ドイツは、わが国と基本的価値を共有し、G7などにおいて国際社会の問題に対し協調して取り組むパートナーである。2020年に策定された「インド太平洋ガイドライン」に基づき、インド太平洋地域への関与を強めており、2021年にドイツ海軍フリゲートが日本に寄港し、共同訓練などを実施して以降、定期的に陸・海・空軍を同地域へ派遣している。ドイツとの間では、日独防衛装備品・技術移転協定、日独情報保護協定が締結されており、2023年11月には、日独ACSAが実質合意に至り、2024年1月に署名された。また、日独「2+2」が開催されるなど、ハイレベルを含む交流が進展している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットの機会にショルツ・ドイツ首相と会談を行い、東アジア情勢について、中国をめぐる諸課題への対応、核・ミサイル問題、拉致問題を含む北朝鮮への対応において、引き続き連携していくことを確認した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年6月、シンガポールで開催されたシャングリラ会合に際し、ブロイアー・ドイツ連邦軍総監と会談を行った。会談では、欧州およびインド太平洋地域の課題に相互に関与を強化し、ドイツとの防衛協力・交流を一層促進していく旨強調した。
森下陸幕長は、同年7月、マイス・ドイツ陸軍総監を公式招待した。同年12月には、マイス陸軍総監とテレビ会談を行い、日独陸軍種間における防衛協力・交流の進展や今後の方向性などについて議論した。
森下陸幕長とマイス・ドイツ陸軍総監との会談(2023年7月)
酒井海幕長は、2024年2月、ドイツを公式訪問し、カーク・ドイツ海軍総監をはじめとする高官と懇談したほか、海自として初めて、ミュンヘン安全保障会議に参加した。
海自は、2023年7月から8月にかけてオーストラリアで実施された米豪主催多国間共同訓練「タリスマン・セイバー23」に陸自とともに参加し、ドイツ海軍を含む多国間の水陸両用作戦訓練などを通じ、連携強化を図った。
内倉空幕長は、同年6月、NATO加盟国などが参加するドイツ空軍主催多国間演習「エアディフェンダー23」の各国空軍参謀長等招待イベントに参加し、ゲルハルツ・ドイツ空軍総監と会談を行った。会談では、双方の地域における安全保障上の問題認識を共有し、より一層、連携強化を図っていくことで一致した。
ア イタリアとの防衛協力・交流の意義
イタリアは、G7の一員であり、基本的価値を共有する戦略的パートナーである。イタリアとの間では、日伊情報保護協定や日伊防衛装備品・技術移転協定の締結、日伊防衛協力・交流に関する覚書への署名など、防衛協力を行っていくうえでの制度面の整備が進んでいる。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットに際し、メローニ・イタリア首相と会談を行った。会談では、外務・防衛当局間協議を通じ、具体的協力について議論を深化させることで一致するとともに、東アジア情勢について、中国をめぐる諸課題への対応、核・ミサイル問題、拉致問題を含む北朝鮮への対応において、緊密に連携していくことを確認した。同年12月の会談では、安全保障・防衛分野における二国間協力に前向きに取り組んでいくことで一致した。
同年10月、和田防衛大臣補佐官(当時)は、イタリアを訪問し、クロセット・イタリア国防大臣、シャップス英国防大臣とGCAPに関して協議を行った。
同年12月、木原防衛大臣は、クロセット・イタリア国防大臣、シャップス英国防大臣と東京で会談を行い、「GIGO設立に関する条約」に署名した。また、日伊防衛相会談を行い、GCAPをはじめ様々な日伊防衛協力・交流をさらに推進していくことや、FOIPの実現に向け、日伊両国関係の一層の深化に向けて緊密に連携していくことで一致した。
2024年2月、岸田内閣総理大臣は、メローニ・イタリア首相と首脳会談を行い、安全保障分野に関して、海軍種間の共同訓練や艦艇の寄港に加え、日伊英による次期戦闘機の共同開発が計画どおり進んでいることに歓迎の意を述べた。
ウ 各軍種の取組
森下陸幕長は、2023年11月に陸幕長として41年ぶりにイタリアを訪問し、カンポレアーレ・イタリア陸上部隊指揮官との懇談や部隊訪問を行った。
酒井海幕長は、同年6月、イタリア海軍フリゲートの横須賀寄港に合わせて来日したクレデンディノ・イタリア海軍参謀長と懇談し、両国の一層の関係強化を推進することで一致した。
海自は、同年6月、令和5(2023)年度掃海特別訓練(日米印伊共同訓練)において、初参加のイタリア海軍を含む参加国海軍との連携強化を図った。また、同年7月には、横須賀寄港を終えたイタリア海軍フリゲートと東シナ海で共同訓練を行ったほか、同年9月、派遣海賊対処行動水上部隊は、アデン湾にてEU海上部隊(イタリア海軍)と海賊対処共同訓練を実施した。
内倉空幕長は、同年4月に米国で開催された宇宙シンポジウム、同年5月のイタリア空軍主催国際航空宇宙力会議において、ゴレッティ・イタリア空軍参謀長と会談を行った。
空自は、2022年の空中給油・輸送機によるイタリア初寄航に引き続き、2023年8月、国内では初めての日伊共同訓練を実施した。同訓練には、イタリア空軍F-35A戦闘機などが参加し、空軍種間の連携強化を図った。
空軍種による国内初の日伊共同訓練(2023年8月)
ア オランダとの防衛協力・交流の意義
オランダは、わが国と400年以上の歴史的関係を有し、基本的価値を共有する戦略的パートナーである。2016年に署名された防衛協力・交流に関する覚書に基づき、防衛当局間の関係をさらに強化することで一致している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年5月、小野田防衛大臣政務官(当時)は、オランダ訪問に際し、エイヘルセイム・オランダ国防軍参謀総長と会談を行った。会談では、オランダをはじめとする欧州各国がインド太平洋への関心を強めていることを歓迎するとともに、引き続き、両国で緊密に連携していくことで一致した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年4月、エイヘルセイム・オランダ国防軍参謀総長を公式招待した。また、同年6月のシャングリラ会合に際し行った会談では、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化していくため、両国の防衛協力・交流を一層促進していきたい旨強調した。
森下陸幕長は、同年8月、豪陸軍主催陸軍参謀長シンポジウム(CAS)に際し、ワイネン・オランダ陸軍司令官と今後の防衛協力に向けた懇談を行った。また、オランダ陸軍は、2024年1月に陸自第1空挺団が実施する「降下訓練始め」に初めて参加した。
酒井海幕長は、2023年7月、来日したタス・オランダ海軍司令官と懇談を行い、両国の関係を一層進展することで一致した。
内倉空幕長は、同年11月、米国で行われた太平洋地域空軍参謀長等シンポジウム(PACS)において、ストゥアー・オランダ空軍司令官と会談を行い、両国の防衛協力・交流を進展させることで一致した。
ア スペインとの防衛協力・交流の意義
スペインは、わが国と基本的価値を共有する戦略的パートナーである。2014年に署名された防衛協力・交流に関する覚書に基づき、防衛当局間の関係をさらに強化することで一致している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
酒井海幕長は、2023年9月、米国主催国際シーパワーシンポジウム(ISS)に際し、サンチェス・スペイン海軍参謀長と懇談を行い、今後の防衛協力について意見交換をした。
派遣海賊対処行動水上部隊は、同年7月および10月、アデン湾においてEU海上部隊(スペイン海軍)と海賊対処共同訓練を実施し、連携強化を図った。
ア NATOとの防衛協力・交流の意義
NATO(North Atlantic Treaty Organization)はわが国と基本的価値やグローバルな安全保障上の課題に対する責任を共有するパートナーである。
2014年に策定された「日・NATO国別パートナーシップ協力計画8(IPCP:Individual Partnership and Cooperation Programme between Japan and NATO)」(2018、2020 年改訂)に基づき、女性・平和・安全保障(WPS)分野における日NATO協力として、NATO本部に女性自衛官を派遣するとともに、NATOジェンダー視点委員会(NCGP:NATO Committee on Gender Perspectives)年次会合に防衛省・自衛隊から職員が参加している。
現在は、国際機関/NGO(Non Governmental Organization)協力幕僚として、NATO本部軍事幕僚部協調的安全保障局(NHQIMSCS:NATO Headquarters International Military Staff, Cooperative Security Division)に自衛官を派遣し、NATOと国連、アフリカ連合(AU:African Union)、欧州安全保障協力機構(OSCE:Organization for Security and Co-operation in Europe)、NGOなどとの協力案件の調整業務に携わっている。
また、防衛省は、欧州連合軍最高司令部(SHAPE:Supreme Headquarters Allied Powers Europe)、NATO海上司令部(MARCOM:NATO Allied Maritime Command)にもそれぞれ連絡官を派遣しており、2018年には、在ベルギー日本国大使館が兼轄する形で、NATO日本政府代表部が開設された。
サイバー分野における協力では、2019年から防衛省職員をNATOサイバー防衛協力センター(CCDCOE:NATO Cooperative Cyber Defence Centre of Excellence)に派遣し、同年以降、NATO主催のサイバー防衛演習「サイバー・コアリション」に参加しているほか、2021年以降、CCDCOE主催のサイバー防衛演習「ロックド・シールズ」に正式参加している。
2022年6月に採択された「NATO戦略概念」において、インド太平洋地域は、欧州・大西洋地域の安全保障に直接的な影響を及ぼしうるNATOにとって重要な地域であるとされ、日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国などのインド太平洋地域のパートナーとの対話および協力を強化することとされた。
また、現下の国際安全保障環境を踏まえ、サイバー分野や偽情報対策を含む情報戦、海洋安全保障など、幅広い分野で日NATO間の実務的協力をさらに推進する観点から、2023年7月、IPCPを改訂した「日・NATO国別適合パートナーシップ計画9(ITPP:Individually Tailored Partnership Programme)」に合意した。日NATOは、今後、ITPPに基づき、協力を一層深めていくことが重要であるとの認識で一致している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年7月、岸田内閣総理大臣は、リトアニアで開催されたNATO首脳会合に出席し、ロシアによるウクライナ侵略や厳しさを増すインド太平洋地域の安全保障情勢を踏まえ、NATOとインド太平洋地域のパートナー国などとの今後の協力について議論を行った。また、ストルテンベルグ・NATO事務総長と会談し、ITPPが合意に至ったことを歓迎した。
同年11月、NATOと日本政府は、第1回目となる日NATOサイバー対話をブリュッセルにおいて開催し、サイバー分野で引き続き緊密に連携していくことを核にした。
2024年2月、木原防衛大臣は、カヴォリ・NATO欧州連合軍最高司令官(SACEUR:NATO Supreme Allied Commander Europe)による表敬を受け、ITPPに基づき、NATOとの連携をさらに強化していくことを確認した。
防衛省は、2023年4月、オーストラリアと合同チームを結成して「ロックド・シールズ2023」に参加し、サイバーセキュリティ動向の把握やサイバー攻撃への対処能力向上を図った。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年4月、バウアー・NATO軍事委員長とテレビ会談を行い、日本とNATOが国際的なルール形成や、インド太平洋地域における安全保障において連携を強化することで一致した。同年6月と8月に実施した会談では、飛躍的に進展している日NATO防衛協力・交流を一層実効的なものにしていきたい旨強調するとともに、欧州とインド太平洋地域の安全保障は不可分であるとしたうえで、ITPPに基づき、日NATO防衛協力・交流を一層推進することを確認した。2024年1月のテレビ会談では、NATO参謀総長等会合(統幕副長が代理出席)に向けて、双方の関心事項を共有した。
吉田統幕長とバウアー・NATO軍事委員長との会談(2023年6月)
酒井海幕長は、2023年8月、英国訪問に際し、マレッテラ・NATO海上司令部副司令官と懇談し、NATOと日本の連携を一層強化していくことで一致した。
内倉空幕長は、同年11月、NATOパートナー空軍司令官会議にオンライン形式で参加し、ITPPのもと、宇宙安全保障に関する実務的協力や相互理解に向け、NATOやNATO加盟国と連携を強化する旨述べた。
ア EUとの防衛協力・交流の意義
EU(European Union)は、自由・民主主義・法の支配といった基本的価値を共有しており、2019年に「日EU戦略的パートナーシップ協定」の暫定適用を開始して以降、安全保障・防衛分野における協力を着実に発展させてきている。2021年には、「インド太平洋戦略に関する共同コミュニケーション」、2022年3月には、パートナー国との海軍演習や寄港・哨戒の頻度を向上させる方針を盛り込んだ「戦略的コンパス」が発表されるなど、EUのインド太平洋地域への関与が強化されているなか、防衛省・自衛隊は、同地域へのEUのコミットメントが不可逆的なものになるよう、積極的かつ主体的に協力を進めている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年3月、井野防衛副大臣(当時)は、EUとして初の開催となる「シューマン安全保障・防衛フォーラム」に出席した。全体会合においては、パネリストとして登壇し、欧州とインド太平洋の安全保障はもはや不可分であるとの認識のもと、EUとの安全保障・防衛分野における連携を強化していきたい旨述べた。
派遣海賊対処行動水上部隊は、同月、吉田統幕長とヌニュス・EUアタランタ作戦司令官との間で署名された「日EU海賊対処共同訓練に係る取決」に基づき、EU海上部隊(EUNAVFOR:EU Naval Force)と連携強化を図っている。同年7月、10月にEU海上部隊(スペイン海軍)と、同年9月には、EU海上部隊(イタリア海軍)と海賊対処共同訓練を実施した。
韓国は、国際社会における様々な課題への対応にパートナーとして協力していくべき重要な隣国である。安全保障・防衛分野においても、北朝鮮の核・ミサイル問題をはじめ、テロ対策や、大規模自然災害への対応、海賊対処、海洋安全保障など、日韓両国を取り巻く安全保障環境が厳しさと複雑さを増すなか、日韓の連携は益々重要となっている。
2023年3月、岸田内閣総理大臣は、東京において尹錫悦(ユンソンニョル)韓国大統領と日韓首脳会談を行った。会談において、両首脳は、政治・経済・文化など多岐にわたる分野で政府間の意思疎通を活性化していくこととし、具体的には、安全保障対話などの早期再開、北朝鮮による核・ミサイルの活動の活発化を踏まえ、日韓、日米韓の安全保障協力を推進することで一致した。
また、同年5月、両首脳は、ソウルおよびG7広島サミットにおいて日韓首脳会談を行い、3月の会談で示した方向性に沿って、日韓安全保障対話の再開など、多岐にわたる分野において両政府間の対話と協力が動き出していることを歓迎した。北朝鮮への対応に関して、日韓、日米韓で緊密に連携し、抑止力・対処力を強化することで一致し、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力を進めていくことも確認した。
岸田内閣総理大臣は、同年7月のNATO首脳会合、8月の米国キャンプ・デービッドにおける日米韓首脳会談、9月のG20サミット、11月のAPEC(Asia-Pacific Economic Cooperation)リーダーズウィークにおいて、日韓首脳会談を行い、北朝鮮への対応に加え、インド太平洋における自由で開かれた秩序の維持強化、中東情勢、ロシアによるウクライナ侵略など、様々な面で緊密に意思疎通していくことで一致した。また、北朝鮮への対応に関し、日韓・日米韓で連携していくことを確認した。
防衛省・外務省は、同年3月の日韓首脳会談を踏まえ、同年4月、約5年ぶりに日韓安全保障対話を実施した。両国は、戦略環境認識や両国の安全保障・防衛政策について理解を深めるとともに、北朝鮮への対応やインド太平洋における協力を含む日韓、日米韓協力の強化などについて意見交換を行い、日韓の安全保障・防衛協力の強化に向けて緊密に意思疎通をしていくことで一致した。
同年6月、浜田防衛大臣(当時)は、シンガポールで開催されたシャングリラ会合に際し、李鍾燮(イジョンソプ)韓国国防部長官(当時)と日韓防衛相会談を行った。会談では、北朝鮮による核・ミサイルの脅威をはじめとする地域の厳しい安全保障環境やグローバルな課題への対応の必要性を踏まえ、日韓・日米韓防衛協力推進の重要性で一致した。また、日韓防衛当局間の協力を進展させるため、火器管制レーダー照射事案10を含む防衛当局間の懸案について、再発防止策を含めた協議を加速化することで一致した。
同年10月、芹澤防衛審議官は、ソウルにおいて開催されたソウル・ディフェンス・ダイアログに際し、申範澈(シンボムチョル)韓国国防部次官(当時)と日韓防衛次官級協議を行った。協議では、日韓・日米韓防衛協力推進の重要性を確認するとともに、同年6月の日韓防衛相会談の結果を踏まえ、引き続き、日韓防衛当局間で緊密に意思疎通していくことで一致した。
2024年6月、木原防衛大臣は、シンガポールで開催されたシャングリラ会合に際し、申源湜(シンウォンシク)韓国国防部長官と日韓防衛相会談を行い、日韓二国間の安全保障協力は、日韓両国に裨益するものであるとともに、強固な日米韓安全保障協力の基礎となり、自由で開かれたインド太平洋の実現のために不可欠であるとの認識で一致した。また、防衛当局間の対話を活性化するため、自衛隊-韓国軍のハイレベル交流の再開などで一致し、今後の日韓安全保障協力の具体的内容について協議を行っていくことで一致した。日韓防衛当局間の懸案については、双方の海軍種を含む事務レベルでの協議の結果、海上幕僚長と韓国海軍参謀総長との間で、「洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準(CUES(キューズ):Code for Unplanned Encounters at Sea))」の遵守、通信要領などの現場における意思疎通の改善や中央レベルの意思疎通の強化の内容を含む文書が作成されたことを踏まえ、両大臣は、事務レベルで確認された事項が実施され、海上自衛隊と韓国海軍の双方が、平時に海上で遭遇した場合に安全を確保することで一致した。
シャングリラ会合での日韓防衛相会談における木原防衛大臣(写真左)と
申韓国国防部長官(写真右)および日韓海軍種代表者(2024年6月)
今般の会談を通じ、防衛省・自衛隊としては、長年の懸案であった火器管制レーダー照射事案の再発防止および部隊の安全確保が図られたと判断しており、自由で開かれたインド太平洋の実現のため、今般の日韓防衛相会談で一致したとおり、様々な分野において協力・交流を推進しつつ、引き続き、日韓・日韓米安全保障協力を強化していく。
参照資料44(最近の日韓防衛協力・交流の主要な実績(2020年度以降))
日米韓3か国は、インド太平洋地域の平和と安定に関して共通の利益を有しており、機会をとらえて緊密な連携を図っていくことが、北朝鮮への対応を含めた様々な安全保障上の課題に対処するうえで重要である。
2023年4月、米国において第13回日米韓防衛実務者協議(DTT:Defense Trilateral Talks)を行った。協議では、北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイム共有に関する日米韓首脳共同表明(2022年11月)を踏まえ、日米韓防衛当局間情報共有取決め(TISA:Trilateral Information Sharing Arrangement)を含む既存の情報枠組みを十分に活用するよう現在進行中の作業を再確認した。また、北朝鮮による核・ミサイルの脅威を抑止し対応するためのミサイル防衛訓練や対潜戦訓練の定例化、海上阻止、海賊対処訓練を含む3か国訓練の再開を含め、日米韓安全保障協力を深化させるための具体的な方法について協議した。
同年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットのために訪日中のバイデン米大統領、尹・韓国大統領と短時間の意見交換を行い、それぞれ強化された二国間関係を土台として、日米韓連携を新たな高みに引き上げることで一致した。また、北朝鮮への対応に加え、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持のためにも、日米韓3か国の戦略的連携を一層強化することで一致した。そのうえで、北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイム共有を含む日米韓安全保障協力、インド太平洋に関する協議の強化、経済安全保障、太平洋島嶼国への関与など、様々な分野で3か国間の具体的協力を前進させることで一致した。
同年6月、浜田防衛大臣(当時)は、シャングリラ会合に際し、オースティン米国防長官および李・韓国国防部長官(当時)と日米韓防衛相会談を行った。会談では、情報共有、ハイレベル政策協議および3か国間訓練を含め、FOIPを推進するための重要な課題について、日米韓3か国の協力深化の重要性を確認した。また、北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイム共有について、2023年末までに始動するための3か国の取組を確認するとともに、ミサイル防衛訓練や対潜戦訓練の定例化など、3か国による防衛協力を促進させるための方策について議論した。
同年8月、岸田内閣総理大臣は、米国キャンプ・デービッドにて、バイデン米大統領および尹・韓国大統領と日米韓首脳会談を行った。会談では、FOIPという共通の目的のもと、日米同盟、米韓同盟の間の戦略的連携を強化し、日米韓の安全保障協力を新たな高みに引き上げることとし、防衛大臣を含む閣僚級などの会合を少なくとも年1回開催することで合意した。北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイム共有に関しては、初期的措置を実施したことを確認し、2023年末までのメカニズムの始動に向けて重要な一歩を踏み出した。また、複数領域に及ぶ3か国共同訓練を毎年実施することを発表した。さらに、FOIPの実現に向け、日米韓の連携を推進し、特に、ASEAN、太平洋島嶼国における海洋安全保障分野の能力構築などにおいて協調していくことで一致した。
キャンプ・デービッドにおける日米韓首脳会談(2023年8月)
同年9月、浜田防衛大臣(当時)は、日米韓防衛相電話会談を行い、8月の首脳会談の成果も踏まえ、北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイム共有の実現に向けた調整をさらに加速していくことや3か国共同訓練の定例化に向けた複数年にわたる訓練計画の策定・実行などを含め、3か国で一層緊密に連携していくことで一致した。
同年11月、木原防衛大臣は、オースティン米国防長官、申源湜韓国国防部長官と日米韓防衛相テレビ会談を行った。会談では、ミサイル警戒データのリアルタイム共有に関するメカニズムについて、年内の始動に向けた調整が順調に進捗し、最終段階を迎えていることを強調するとともに、日米韓3か国の共同訓練を、より計画的に実施していくため、複数年にわたる日米韓共同訓練の計画を2023年末までに策定すべく調整を加速させることで一致した。また、日米韓3か国の共同訓練が着実に進展していることに留意し、インド太平洋地域における脅威に対応するため、こうした活動を継続し、3か国の強固な意思と能力を示すことの重要性を強調した。
同年12月、木原防衛大臣は、オースティン米国防長官、申・韓国国防部長官と共に、日米韓防衛相共同プレス声明を発出し、北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイム共有メカニズムが始動したこと、また、複数年にわたる3か国の訓練計画を共同で策定したことを発表した。
日米韓防衛相共同プレス声明(2023年12月)
吉田統幕長は、2023年7月、ハワイにおいて日米韓参謀総長等会談を行った。会談では、北朝鮮の活動など安全保障上の課題について認識を共有し、地域の平和と安定、FOIPの実現のため、日米韓3か国で協力を進めていくことで一致した。
森下陸幕長は、同年9月、インドで開催されたインド太平洋地域陸軍参謀長等会議(IPACC)に際し、フリン米太平洋陸軍司令官、スチュアート豪陸軍本部長および朴正煥(パクジョンファン)韓国陸軍参謀総長(当時)との初の日米豪韓4か国懇談を行い、4か国陸軍種間で緊密なネットワークを構築していくことで一致した。また、同年12月、米太平洋陸軍と共催のランド・フォーシーズ・サミット(LFS)に際し実施した日米豪韓4か国懇談(韓国はVTCで参加)では、日米豪韓で相互理解を図りつつ、インド太平洋地域全体の平和と安定に向け着実に防衛交流を促進するため、ロードマップを作成することに合意した。
海自は、同年4月、7月、8月、10月、11月および2024年1月に日米韓共同訓練を実施し、3か国による弾道ミサイル共同対処や対潜戦、電子戦など各種戦術訓練を通じ、連携強化を図った。また、2023年5月、韓国主催の多国間PSI(Proliferation Security Initiative)訓練11「Eastern Endeavor23」に海自護衛艦を派遣した。同年7月には、日米豪韓共同訓練「パシフィック・ヴァンガード23」を実施し、戦術技量の向上および各国海軍などとの連携強化を図った。
空自は、同年4月、日韓中級幹部交流(訪韓)を実施した。また、同年10月と12月、米空軍、韓国空軍と共同訓練を実施した。
空軍種初の日米韓共同訓練(2023年10月)【米国防省提供】
これらの日米韓共同訓練は、地域における安全保障上の課題に対応するための3か国協力を推進するものである。また、共通の安全保障と繁栄を保護するとともに、ルールに基づく国際秩序を強化していくという日米韓3か国のコミットメントを示すものである。
参照IV部3章1節(訓練・演習に関する取組)、資料52(最近の多国間ハイレベル交流の実績(2020年度以降)、資料58(多国間共同訓練の参加など(2020年度以降))
北朝鮮をめぐる情勢がさらに深刻化していることを踏まえ、北朝鮮の核・ミサイルに関する秘密情報の交換・共有のため、日韓の協力をさらに進めるべく、2016年11月、日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA:General Security of Military Information Agreement)を締結した。これにより、日韓政府間で共有される秘密軍事情報が適切に保護される枠組みが整備された。2019年8月には、韓国政府から、この協定を終了させる旨の書面による通告があったが、同年11月、韓国政府から、同通告の効力を停止する旨の通告があった。そして、2023年3月に、韓国政府から終了通告を撤回し、同協定が効力を有することを確認するとの正式通報があった。
カナダおよびニュージーランドは、わが国と基本的価値を共有し、また、テロ対策や「瀬取り」対応などの非伝統的安全保障分野や国際平和協力活動を中心に、グローバルな安全保障上の共通課題に取り組むための中核を担っている。これらの国と防衛協力・交流を進展させることは、わが国がこうした課題に積極的に関与する基盤を提供するものであり、わが国とカナダ、ニュージーランドの双方にとって重要である。
参照IV部3章1節(訓練・演習に関する取組)、資料45(最近のカナダ、ニュージーランドとの防衛協力・交流の主要な実績(2020年度以降))、資料58(多国間共同訓練の参加など(2020年度以降))
ア カナダとの防衛協力・交流の意義
カナダは、G7に参加し、同じ太平洋国家であるとともに、基本的価値を共有する戦略的なパートナーである。2019年の防衛協力に関する共同声明や、日加ACSAの発効、2017年以降毎年実施している日加共同訓練「KAEDEX(カエデックス)」や多国間共同訓練の実施など、日加防衛当局間の関係は、ここ数年で飛躍的に深化してきた。
なお、カナダは2022年11月に「インド太平洋戦略」を発表し、FOIPへの支持のためインド太平洋地域に派遣するアセットを増加するなど、近年、同地域への関与を強めている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
岸田内閣総理大臣は、2023年5月のG7広島サミット、同年11月のAPEC首脳会談の機会にトルドー・カナダ首相と日加首脳会談を行った。会談では、東アジア情勢に関する意見交換を行い、中国をめぐる諸課題への対応や、核・ミサイル問題、拉致問題を含む北朝鮮への対応において、引き続き日加で緊密に連携していくことで一致した。また、日加情報保護協定の交渉実施などをはじめとした「自由で開かれたインド太平洋に資する日加アクションプラン」(2022年発表)の着実な進展を歓迎するとともに、北朝鮮の「瀬取り」に対する警戒監視活動など、カナダの軍事アセット派遣に謝意を示した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年4月、エア・カナダ軍参謀総長とテレビ会談を行い、カナダ軍との連携は、インド太平洋地域の平和と安全に大いに寄与するものであるとして、FOIPの実現に向け、防衛協力・交流を一層強化することで一致した。また、同年6月にエア参謀総長を日本へ公式招待した際の会談では、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、地域の平和と安定を確保していくため、両国の防衛協力をより実効的に推進していくことで一致した。
酒井海幕長は、同年9月、米国主催国際シーパワーシンポジウム(ISS)に際し、トップシー・カナダ海軍司令官と懇談を行い、両国の防衛協力・交流について意見交換した。
海自は、同年6月に遠洋練習航海部隊がカナダ(ビクトリア)に寄港し、カナダ海軍と日加共同訓練「KAEDEX(カエデックス)23」を実施したほか、同年6月から10月にかけて、IPD23部隊などが日本周辺海域、東シナ海、南シナ海などで日米豪加共同訓練「ノーブル・ウルフ」、日米加仏共同訓練「ノーブル・タイフーン」、日米加共同訓練「ノーブル・レイブン23」・「ノーブル・チヌーク」・「ノーブル・スティングレイ」、日米豪加新共同訓練「ノーブル・カリブー」を実施し、対潜戦や対水上戦など各種戦術訓練を通じて、連携強化を図った。また、同年10月、派遣海賊対処行動水上部隊が米比主催共同訓練「Exercise SAMA SAMA 2023」に参加し、カナダ海軍を含む参加国海軍との連携強化を図った。さらに、同年11月に実施した令和5(2023)年度海上自衛隊演習にカナダ海空軍が参加した。
内倉空幕長は、同年4月、カナダを公式訪問し、ケニー・カナダ空軍司令官と会談を実施した。会談では、空軍種間の相互理解、宇宙領域を含む防衛協力・交流の一層の深化・発展に取り組んでいくことで一致した。
内倉空幕長によるカナダ公式訪問(カナダ宇宙庁)(2023年4月)
ア ニュージーランドとの防衛協力・交流の意義
ニュージーランドは、わが国と基本的価値を共有しており、戦略環境が厳しさを増すインド太平洋地域において、重要な戦略的協力パートナーである。防衛当局間においても、ハイレベル交流や共同訓練、部隊間交流などを活発に実施している。
2022年4月の日ニュージーランド首脳会談では、情報保護協定の正式交渉開始について両首脳が決定した旨を発表し、関係当局間で調整を進めている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年6月、浜田防衛大臣(当時)は、シンガポールにおいて開催されたシャングリラ会合に際し、リトル・ニュージーランド国防大臣(当時)との間で「太平洋島嶼国地域における海洋安全保障、人道支援・災害救援及び気候変動における防衛協力に関する意図表明文書」に署名した。両国は、同文書に基づき、太平洋島嶼国地域における防衛協力を一層推進することで一致した。
同時期、岡防衛審議官(当時)は、ブリッジマン・ニュージーランド国防次官と次官級協議を行い、FOIPの実現のため、両国の連携を強化することや防衛当局間で一層緊密に意思疎通を図っていくことで一致した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年8月、フィジーで開催されたインド太平洋参謀総長等会議(CHOD:Chiefs of Defense Conference)に際し、ショート・ニュージーランド国防軍司令官と会談を行い、FOIPの実現のため、機会をとらえて二国間による共同訓練の実施を追求していくことで一致した。
森下陸幕長は、同年8月、豪陸軍主催陸軍参謀長シンポジウム(CAS)に際し、キング・ニュージーランド陸軍副本部長と今後の防衛協力に向けた懇談を実施した。
酒井海幕長は、同年5月、シンガポール主催国際海洋防衛装備展示会(IMDEX Asia 2023)に際し、プロクター・ニュージーランド海軍司令官と懇談を行い、太平洋島嶼国における防衛協力・交流について意見交換した。
海自は、同年10月、南シナ海にて日米豪加新共同訓練「ノーブル・カリブー」を実施し、戦術技量の向上および参加国海軍との連携強化を図った。
ア スウェーデンとの防衛協力・交流の意義
スウェーデンは、基本的価値を共有するパートナーであり、2022年12月には、北欧諸国で初となる防衛装備品・技術移転協定が署名・発効されるなど、防衛協力・交流を進めている。また、近年、NATOとわが国の関係が強化されていることから、2024年にNATOへの新規加盟を果たしたスウェーデンとの防衛協力・交流の進展が見込まれる。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年5月、小野田防衛大臣政務官(当時)は、スウェーデン訪問に際し、サンドウォール・スウェーデン国防副大臣と地域情勢や防衛協力・交流について意見交換を行い、引き続き緊密に連携していくことで一致した。
同年6月、浜田防衛大臣(当時)は、来日したヨンソン・スウェーデン国防大臣と会談を行った。会談では、スウェーデンのNATO加盟申請に対し支持を表明するとともに、日スウェーデン関係の深化やFOIPの実現に向けて、引き続き緊密に連携することを確認した。
2024年2月、三宅防衛大臣政務官は、ミュンヘン安全保障会議に際し、ヨンソン国防大臣を表敬し、地域情勢や日スウェーデン防衛協力・交流について意見交換を行った。
ウ 各軍種の取組
酒井海幕長は、2023年11月、豪海軍主催インド太平洋シーパワー会議(IP23:Indo-Pacific Sea Power Conference)に際し、ハスラム・スウェーデン海軍参謀長と懇談を行い、双方の安全保障環境に関する情報共有や両国の防衛協力・交流について意見交換をした。
ア デンマークとの防衛協力・交流の意義
デンマークは、基本的価値を共有する戦略的パートナーであり、ハイレベルの会談や研究交流などの防衛交流を積み重ねている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年10月、岸田内閣総理大臣は、訪日したフレデリクセン・デンマーク首相と会談を行った。会談では、欧州大西洋とインド太平洋の安全保障が不可分であることを認識したうえで、二国間および多国間の安全保障協力の一層の強化に向けて取り組むことで一致した。また、防衛当局間の協議の実施、海洋安全保障分野における協力の維持・発展について一致した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年10月、訪日したヘレビュア・デンマーク軍統合作戦部長の表敬を受け、厳しさを増すインド太平洋地域の安全保障環境について強調した。また、統幕において実務者交流を行い、戦略環境や防衛政策について認識を共有するとともに、両国の防衛協力・交流の方向性などについて意見交換を実施した。
ア フィンランドとの防衛協力・交流の意義
フィンランドは、価値や原則を共有する戦略的パートナーであり、2019年に日フィンランド防衛協力・交流に関する覚書に署名している。また、近年、NATOとわが国の関係が強化されていることから、2023年にNATOへ新規加盟を果たしたフィンランドとの防衛協力・交流の進展が見込まれる。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年5月、小野田防衛大臣政務官(当時)は、フィンランド訪問に際し、カイッコネン・フィンランド国防大臣(当時)を表敬し、両国の関係を一層深化させるため、様々な分野で防衛協力・交流を推進していきたい旨を伝えた。また、プルッキネン・フィンランド国防次官との会談では、同国のNATO正式加盟について、その戦略的に大きな決断に支持と祝福の意を表するとともに、引き続き緊密に連携していくことで一致した。
2024年2月、三宅防衛大臣政務官は、ミュンヘン安全保障会議に際し、ハッカネン・フィンランド国防大臣を表敬し、地域情勢や両国の防衛協力・交流について意見交換を行った。
ア エストニアとの防衛協力・交流の意義
エストニアは、基本的価値を共有するパートナーである。世界有数のIT立国として先進的な取組を行っており、防衛省・自衛隊との間でサイバー防衛分野における協力が進展している。また、国内にNATOサイバー防衛協力センター(CCDCOE)を擁するなど、日NATO協力の観点からも重要な役割を担っている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年7月、第1回日エストニア防衛当局間協議を開催し、地域情勢や両国の防衛政策などについて意見交換を行うとともに、今後の日エストニア防衛協力・交流について議論を深めた。
2024年2月、三宅防衛大臣政務官は、ミュンヘン安全保障会議に際し、ペフクル・エストニア国防大臣を表敬し、サイバー防衛における協力が促進されていることを歓迎したほか、日エストニア防衛協力・交流について意見交換を行った。また、同年3月には、訪日したヘレム・エストニア国防軍司令官と会談を行い、引き続き緊密に連携していくことで一致した。
会談を行ったヘレム・エストニア国防軍司令官と三宅防衛大臣政務官
(2024年3月)
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年9月、エストニアを公式訪問し、サルム・エストニア国防次官を表敬したほか、ヘレム・エストニア国防軍司令官と会談を行った。会談では、欧州とインド太平洋地域の安全保障は不可分であり、グローバルな安全保障上の課題のみならず、欧州およびインド太平洋地域の課題に相互に関与を強化することで一致した。2024年3月には、ヘレム国防軍司令官を公式招待し、日エストニア防衛協力を一層推進していく旨を再確認した。
ア ラトビアとの防衛協力・交流の意義
ラトビアは、価値や原則を共有するパートナーである。欧州とインド太平洋の安全保障は不可分という認識が同志国間で広がるなか、FOIPの実現に向けた連携やEU、NATOなどを通じた協力が重要となってきている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年10月、第1回日ラトビア防衛当局間協議を開催し、両国の防衛政策やウクライナおよびイスラエル・パレスチナ情勢について意見交換を行うとともに、今後の日ラトビア防衛協力・交流について議論を深めた。
ア リトアニアとの防衛協力・交流の意義
リトアニアは、戦略的パートナーであり、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け、連携を深めている。また、2023年10月、日リトアニア防衛協力・交流に関する覚書に署名した。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年6月、シンガポールで開催されたシャングリラ会合に際し、岡防衛審議官(当時)は、トムクス・リトアニア国防副大臣と会談を行った。会談では、ウクライナ侵略を含む地域情勢について意見交換をするとともに、二国間の防衛協力・交流に加え、NATO、EUを通じた協力促進に向けても連携することを確認した。
同年10月、芹澤防衛審議官は、トゥチュクテ・リトアニア国防副大臣との間で防衛協力・交流に関する覚書に署名するとともに、会談において、今般署名した覚書のもと、両国の防衛協力・交流を一層推進していくことで一致した。
2024年2月、三宅防衛大臣政務官は、ミュンヘン安全保障会議の際にトゥチュクテ国防副大臣と会談を行い、防衛協力・交流に関する覚書締結を歓迎したほか、日リトアニア防衛協力・交流や地域情勢について議論した。
参照資料43(最近の欧州諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2020年度以降)
ア ウクライナとの防衛協力・交流の意義
ウクライナは、自由、民主主義、法の支配といった基本的価値を共有するパートナーである。同国との間では、2018年、日ウクライナ防衛協力・交流に関する覚書に署名したほか、日ウクライナ安全保障協議を開催した。
2022年2月に開始されたロシアによるウクライナ侵略は、ウクライナの主権および領土一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国連憲章を含む国際法の深刻な違反であるとともに、国際秩序の根幹を揺るがすものであり、断じて認められない。こうした立場のもと、わが国は、国際社会と結束し、断固たる決意で対応に当たっている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
ロシアによるウクライナ侵略後、ウクライナ政府から装備品などの提供要請を受け、2022年3月以降、防弾チョッキ、防護マスク、防護衣、車両、小型のドローン、非常用糧食など非殺傷の物資の提供を順次行っている。
2023年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットに出席するため訪日していたゼレンスキー・ウクライナ大統領と日ウクライナ首脳会談を行った。会談では、ウクライナ側の要請を踏まえ、新たにトラックなどの自衛隊車両および約3万食の非常用糧食を提供すること、ならびにウクライナ負傷兵を自衛隊中央病院に受入れることを決定した旨伝達し、ゼレンスキー大統領からは、感謝の意が述べられた。
ゼレンスキー大統領と原爆死没者慰霊碑に献花する
岸田内閣総理大臣(2023年5月)【首相官邸HP】
会談を受け、同月、ウクライナからの要請に基づき、費用を原則日本側が負担するかたちで、下腿切断(膝から下の足が切断された状態)のウクライナ負傷兵2名を自衛隊中央病院に受け入れ、必要なリハビリ治療を実施する旨公表した。また、同年6月から、約3万食の非常用糧食および自衛隊車両(小型トラック、高機動車、資材運搬車)合計101台を追加提供した。
同年6月、浜田防衛大臣(当時)は、シンガポールで開催されたシャングリラ会合に際し、レズニコフ・ウクライナ国防大臣(当時)と会談し、力による一方的な現状変更は断じて認められず、国際社会と結束して断固たる決意で対応する旨、述べた。
同年10月、木原防衛大臣は、ウメロフ・ウクライナ国防大臣とテレビ会談を行い、防衛省・自衛隊として、引き続き国際社会と連携しながら、ウクライナを可能な限り支援していく旨伝えた。
防衛省は、米国防省主催のウクライナ防衛コンタクトグループに定期的に参加し、ウクライナへの支援に関する情報共有など、参加国との連携を図っている。同年12月には、ウクライナ政府などからの要請を踏まえ、欧州などの有志国が参加する「ウクライナ支援のためのITコアリション」および「ウクライナ支援のための地雷除去コアリション」の活動を通じ、ITおよび地雷除去の分野で支援を行うことを決定した。
ウ 各軍種の取組
2024年1月、コヴァリ・ウクライナ国防大学学校長以下10名が統幕学校および防衛研究所を訪問し、学生などに対し、現在のウクライナ情勢などに関する講義および意見交換を実施した。また、同訪問中、統幕学校長は、コヴァリ国防大学学校長と「教育及び科学研究の分野に関する意図表明文書」に署名し、学校間交流のさらなる深化を図ることで認識を共有した。
参照3節2項6(ウクライナ被災民に対する救援活動への協力)、IV部1章3節4項1(8)(ウクライナ)
ア チェコとの防衛協力・交流の意義
チェコは、基本的価値を共有する戦略的パートナーである。2017年に中東欧諸国との間では初となる防衛協力・交流に関する覚書が署名された。また、国家防衛戦略では、チェコを含む中東欧諸国との連携を強化していくことが明記されている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年7月、第1回日チェコ防衛当局間協議を開催し、地域情勢や両国の防衛政策などについて意見交換を行うとともに、今後の日チェコ防衛協力・交流について議論を深めた。
ア ポーランドとの防衛協力・交流の意義
ポーランドは、価値と原則を共有する戦略的パートナーである。同国との間では、戦略的パートナーシップに関する行動計画に基づき、政治・安全保障の分野を含めた協力が進められている。2022年2月には、日ポーランド防衛協力・交流に関する覚書が署名された。また、国家防衛戦略では、ポーランドを含む中東欧諸国との連携を強化していくことが明記されている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年7月、小野田防衛大臣政務官(当時)は、ポーランド訪問に際し、ヴィシニェフスキ・ポーランド国防副大臣(当時)と会談を行い、両国の防衛当局間の交流が進展していることを歓迎する旨述べた。また、ウクライナを含む地域情勢や防衛協力・交流について意見交換を行い、引き続き緊密に連携していくことで一致した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年4月、アンジェイチャク・ポーランド軍参謀総長(当時)とテレビ会談を行い、戦略環境認識などについて意見交換するとともに、自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け、引き続き緊密に連携していくことで一致した。また、同年9月には、ポーランドを公式訪問し、ブワシュチャク・ポーランド副首相兼国防大臣(当時)に表敬したほか、アンジェイチャク参謀総長(当時)と会談し、今後の日ポーランド防衛協力・交流の方向性について議論した。
ア ルーマニアとの防衛協力・交流の意義
ルーマニアは、戦略的パートナーであり、ロシアによるウクライナ侵略など、厳しさを増す安全保障環境を受け、両国間における安全保障分野での対話を強化することとしている。なお、2023年7月、約20年ぶりに防衛駐在官を派遣した。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年8月、小野田防衛大臣政務官(当時)は、ルーマニア訪問に際し、トゥルヴァル・ルーマニア国防大臣を表敬し、様々な分野で防衛協力・交流を推進することで一致した。また、コジョカル・ルーマニア国防次官と会談を行い、ウクライナを含む地域情勢や防衛協力・交流のほか、WPSについても意見交換を行い、引き続き緊密に連携していくことで一致した。
参照資料43(最近の欧州諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2020年度以降)
ASEAN(Association of Southeast Asian Nations)諸国は、高い経済成長を続けるなど、世界の「開かれた成長センター」としての高い潜在性を有している。また、わが国のシーレーンの要衝を占めるなど戦略的に重要な地域に位置し、わが国および地域全体の平和と繁栄の確保に重要な役割を果たしている。
こうしたASEAN諸国の重要性を踏まえれば、防衛省・自衛隊が、地域協力の要となるASEANの中心性・一体性・強靱性の強化を支援しつつ、ASEAN諸国それぞれとの間で防衛協力・交流を強化することは、FOIPの実現において大きな意義を有する。また、わが国にとって望ましい安全保障環境を創出することにもつながるものである。
わが国は、このような考えに基づき、ASEAN諸国との間でハイレベル・実務者レベル交流を通じ、信頼醸成や相互理解の促進を行っている。また、能力構築支援や共同訓練、防衛装備・技術協力などを推進している。さらに、二国間協力に加え、拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス:ASEAN Defence Ministers' Meeting Plus)やASEAN地域フォーラム(ARF:ASEAN Regional Forum)といった多国間の枠組みでの協力も実施している。
わが国が2016年に日ASEAN防衛協力の指針として表明した「ビエンチャン・ビジョン」は、ASEAN全体への防衛協力の方向性について、透明性をもって重点分野の全体像を初めて示したものであった。また、2019年、タイで開催された第5回日ASEAN防衛担当大臣会合において、河野防衛大臣(当時)は「ビエンチャン・ビジョン」のアップデート版である「ビエンチャン・ビジョン2.0」を発表し、ASEAN各国の大臣から歓迎の意が示された。
2023年11月、インドネシアで実施された第8回日ASEAN防衛担当大臣会合において、木原防衛大臣は、ASEANが提唱する「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP:ASEAN Outlook on the Indo-Pacific)」とFOIPは、開放性、透明性、ルールに基づく枠組みなど本質的な原則を共有していることを確認するとともに、日ASEANの防衛協力を新たな段階に進めるため、「防衛協力強化のための日ASEAN大臣イニシアティヴ(JASMINE(Japan-ASEAN Ministerial Initiative for Enhanced Defense Cooperation):ジャスミン)」を提示した。
防衛省としては、こうした二国間・多国間の協力を今後も積極的に推進する考えである。
参照3項(多国間安全保障協力の推進)、4項(能力構築支援への積極的かつ戦略的な取組)、IV部3章1節(訓練・演習に関する取組)、資料46(最近のASEAN諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2020年度以降))、資料52(最近の多国間ハイレベル交流の実績(2020年度以降)、資料56(ビエンチャン・ビジョン2.0)、資料57(防衛協力強化のための日ASEAN大臣イニシアティヴ(ジャスミン))、資料58(多国間共同訓練の参加など(2020年度以降))
ア インドネシアとの防衛協力・交流の意義
インドネシアは、ASEANでリーダーシップを発揮する域内の大国であり、わが国と基本的価値を共有する、包括的・戦略的パートナーである。マラッカ海峡など海上交通の要衝に位置し、2015年の日インドネシア首脳会談において、海洋と民主主義に支えられた戦略的パートナーシップの強化で一致して以降、日インドネシア「2+2」を開催するなど、様々なレベルと分野で防衛協力・交流が活発に行われている。
2021年に防衛装備品・技術移転協定を締結するとともに、同年の「2+2」において、海洋監視・海上法執行の能力向上や漁業監視船供与などの海洋協力の強化、スールー・セレベス海周辺地域における協力強化で一致した。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットに際し、ジョコ・インドネシア大統領と首脳会談を行った。会談では、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守っていくことの重要性について言及し、ジョコ大統領より同意する旨発言があった。
同年9月、12月に実施した首脳会談では、地域の課題についても引き続き連携していくことを確認した。
同年11月、宮澤防衛副大臣(当時)は、ADMMプラスに際し、へリンドラ・インドネシア国防副大臣と会談を実施した。
防衛省は、同年7月、インドネシア国防省語学教育訓練センターにおける日本語教育コースを強化するため、能力構築支援として同センター教官や課程学生の日本語能力向上を支援した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年4月、ユド・インドネシア国軍司令官とテレビ会談を行った。会談では、FOIPの実現に向けた取組を含め、地域・国際社会の諸課題について一層連携していくことで一致した。
森下陸幕長は、同年8月、豪陸軍主催陸軍参謀長シンポジウム(CAS)に際し、ドゥドゥン・インドネシア陸軍参謀長(当時)と懇談を行い、専門家交流や多国間訓練を通じて二国間・多国間の連携を強化していくことで一致した。
陸自は、同年8月から9月にかけて、米・インドネシア陸軍主催多国間共同訓練「スーパー・ガルーダ・シールド23」に参加し、島嶼奪回訓練を含む各種戦術訓練を通じて、参加国との連携強化を図った。また、同年10月、インドネシア国軍に対し、HA/DRにかかる能力構築支援として、災害発生時における自衛隊と地方公共団体との連携要領など、防衛省・自衛隊の知見を共有した。
海自は、同年5月、最新鋭護衛艦「くまの」をIPD23部隊として、ジャカルタに寄港させ、国防大臣などインドネシア高官に対する艦艇見学やインドネシア海軍との親善訓練を実施した。また、同年6月、インドネシア海軍主催多国間共同訓練「Komodo(コモド)2023」における国際海洋安全保障シンポジウムや医療支援活動プログラムに参加した。
内倉空幕長は、同月、ファジャル・インドネシア空軍参謀長を公式招待し、空軍種間の防衛協力・交流などに関する意見交換を実施した。
ア カンボジアとの防衛協力・交流の意義
カンボジアは、1992年にわが国として初めて国連PKO(Peacekeeping Operations)に自衛隊を派遣した国である。また、2013年から能力構築支援を開始するなど、両国間での防衛協力・交流は着実に進展している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年9月および12月、岸田内閣総理大臣は、フン・マネット・カンボジア首相と首脳会談を行った。会談では、陸軍種間の人的交流に加え、海自艦艇の寄港など海軍種間の協力も発展していることを歓迎するとともに、防衛次官級協議の創設や安全保障分野の協力強化を進めることで一致した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年4月、ボン・ピセン・カンボジア王国軍司令官とテレビ会談を行った。会談では、国連PKOや能力構築支援など様々な分野において着実に進展してきた日カンボジアの防衛協力・交流を、地域と国際社会の平和と安定に向け、引き続き強化していくことで一致した。
森下陸幕長は、同年9月、インドで開催されたインド太平洋地域陸軍参謀長等会議(IPACC)に際し、マオ・ソパン・カンボジア陸軍司令官と懇談を行い、多層的な防衛協力・交流を通じて二国間関係を強化していくことで一致した。
陸自は、同年11月から12月にかけて、カンボジア王国軍に対し、PKO(施設)分野に関する能力構築支援を行った。
酒井海幕長は、同年5月、シンガポール主催国際海洋防衛装備展示会(IMDEX Asia 2023)に際し、テア・カンボジア海軍副司令官と懇談を行い、海自艦艇の寄港など今後の防衛協力について議論を実施した。
海自は、同年4月にインド太平洋中東方面派遣(IMED23:Indo-Pacific and Middle East Deployment)がシハヌークビルに寄港し、指揮官によるビン・カンボジア海軍司令官表敬、カンボジア海軍に対する応急工作機材の実演展示やスポーツ交歓などの交流行事、親善訓練を実施した。また、2024年2月には、外洋練習航海部隊がシハヌークビルに寄港し、カンボジア海軍と親善訓練を実施した。
ア シンガポールとの防衛協力・交流の意義
シンガポールは、2009年に東南アジア諸国の中で最初に、わが国との間で防衛交流に関する覚書(2022年6月改定)に署名した国である。以後、この覚書に基づき、各種協力関係が着実に進展しており、2023年6月には、防衛装備品・技術移転協定が発効した。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年6月、浜田防衛大臣(当時)は、ウン・シンガポール国防大臣とともに、日シンガポール防衛装備品・技術移転協定の署名式に立ち会った。
同年8月、木村防衛大臣政務官(当時)は、シンガポールを訪問し、ヘン・シンガポール国防担当上級国務大臣と会談を行った。会談では、北朝鮮や東シナ海・南シナ海を含む地域情勢について意見交換をしたほか、防衛協力・交流を引き続き強化していくことで一致した。また、チャン・シンガポール国防次官との会談では、装備移転案件の具体化を含め、両国間の防衛協力関係が深化することへの期待を述べた。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年6月、シンガポールで開催されたシャングリラ会合に際し、ベン・シンガポール国軍司令官と会談を行い、インド太平洋地域の平和と安定のため、防衛協力・交流を一層推進していきたい旨強調した。
森下陸幕長は、同年5月、ハワイで開催された太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC)2023に際し、ネオ・シンガポール陸軍司令官と懇談を行い、専門家交流や多国間訓練などを通じて二国間・多国間の連携を強化していくことで一致した。
酒井海幕長は、同年5月、シンガポール主催国際海洋防衛装備展示会(IMDEX Asia 2023)参加のため、シンガポールを公式訪問し、ワット・シンガポール海軍司令官と懇談を行った。懇談では、FOIPの実現およびインド太平洋地域の平和と安定に寄与するため、両国の連携を強化していくことで一致した。また、同年11月の豪海軍主催インド太平洋シーパワー会議(IP23)において、両国の防衛協力・交流に関し、懇談を行った。
海自は、同年4月にIMED23部隊がチャンギに寄港し、艦艇見学、シンガポール海軍との親善訓練などを実施した。また、同年5月、シンガポール主催国際海洋防衛装備展示会(IMDEX Asia 2023)に海自の最新鋭護衛艦「くまの」が参加し、艦艇公開を実施するなど、シンガポールをはじめとする参加国海軍に海自の精強性、技術力、省人化の取組などについて広く紹介した。
ア タイとの防衛協力・交流の意義
タイとの間では、早くから防衛駐在官の派遣や防衛当局間協議を開始するなど、伝統的に良好な関係のもと、長きにわたる防衛協力・交流の歴史を有している。また、防衛大学校において、1958年に初めて外国人留学生として受け入れたのがタイ人学生であり、その累計受入れ数も最多となっている。
2022年5月、防衛装備品・技術移転協定が発効するとともに、同年11月、両国の関係を包括的戦略的パートナーシップに格上げし、両国の安全保障協力深化に向けた協議を加速させている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年8月、木村防衛大臣政務官(当時)は、タイ訪問に際し、サニットチャノック・タイ国防次官、ティティチャイ・タイ統合参謀長と会談を行い、東シナ海・南シナ海を含む地域情勢などについて議論するとともに、二国間の防衛協力・交流を一層推進していくことを確認した。
同年11月、宮澤防衛副大臣(当時)は、ADMMプラスに際し、スティン・タイ国防大臣への表敬を実施した。
ウ 各軍種の取組
自衛隊は、米国・タイ共催多国間共同訓練「コブラ・ゴールド」に継続的に参加しており、2024年2月に実施された訓練では、在外邦人等の保護措置や国際平和協力活動に関する統合運用能力の向上、参加国との連携強化を図った。
森下陸幕長は、2023年5月、ハワイで開催された太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC)2023において、ナロンパン・タイ陸軍司令官(当時)と懇談を行い、専門家交流や多国間訓練などを通じて二国間・多国間の連携を強化していくことで一致した。
酒井海幕長は、同年11月、豪海軍主催インド太平洋シーパワー会議(IP23)に際し、パンイアム・タイ海軍司令官と懇談を行い、違法・無報告・無規制(IUU:Illegal, Unreported, Unregurated)漁業や両国の防衛協力・交流について議論した。
ア フィリピンとの防衛協力・交流の意義
フィリピンは、南シナ海やルソン海峡といったわが国にとって重要なシーレーンに面しており、フィリピンとの連携および同国の沿岸監視能力や海洋状況把握(MDA:Maritime Domain Awareness)能力の強化は、これらのシーレーンの安全を確保するうえで重要である。米国の同盟国でもあるフィリピンとの間では、ハイレベル交流のほか、艦艇の訪問や防衛当局間協議をはじめとする実務者交流、軍種間交流が頻繁に行われている。
2016年に防衛装備品・技術移転協定が発効、2022年には、日比間で初めてとなる「2+2」を行い、相互訪問や後方支援分野における物品・役務の相互提供を円滑にするための枠組みについて、検討を開始することで一致した。また、2023年2月には、「防衛省とフィリピン国防省との間のフィリピンにおける自衛隊の人道支援・災害救援活動に関する取決め12」が署名され、同年11月にはRAAの交渉開始で一致するなど、両国の安全保障協力は着実に深化している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年6月、浜田防衛大臣(当時)は、シンガポールで開催されたシャングリラ会合に際し、オースティン米国防長官、マールズ・オーストラリア副首相兼国防大臣、ガルベス・フィリピン国防大臣代行(当時)との間で初めてとなる日米豪比防衛相会談を行った。4大臣は、地域における共通の課題や4か国の協力の拡大について議論したほか、FOIPの実現に向け、共に取り組むことを確認した。
同年11月、岸田内閣総理大臣は、フィリピンを訪問し、マルコス・フィリピン大統領と首脳会談を行った。会談では、政府安全保障能力強化支援13(OSA:Official Security Assistance)による最初の協力案件である沿岸監視レーダーシステム供与に関する交換公文の署名を歓迎するとともに、警戒管制レーダーの移転を含む防衛装備・技術協力や、巡視船供与を含む海洋安全保障能力向上にかかる協力を引き続き強化したい旨を述べた。また、両首脳は、RAAの交渉開始で一致したことを歓迎し、安全保障・防衛分野での二国間協議を着実に実施すべく調整を進めることとした。さらに、日米比協力を推進し、サイバーセキュリティ、経済安全保障などの分野における協力も一層進めていくことで一致した。
同月、宮澤防衛副大臣(当時)は、インドネシアで開催されたADMMプラスに際し、テオドロ・フィリピン国防大臣への表敬を実施した。
防衛装備移転に関して、2020年にフィリピン国防省と三菱電機との間で、警戒管制レーダー4基を納入する契約が締結され、納入に先立って、空自および陸自がフィリピン軍レーダー要員に対し教育を行った。わが国として最初の完成装備品移転案件として、2023年10月に1基目、2024年3月に2基目の警戒管制レーダーがフィリピン空軍に納入され、テオドロ・フィリピン国防大臣出席のもと、それぞれ2023年12月および2024年4月に現地で引き渡し式典が実施された。
2024年4月、岸田内閣総理大臣は、米国において日米比首脳会談を行い、3か国の首脳は、防衛当局間協議や共同訓練などを通じた安全保障・防衛協力を引き続き強化していくことで一致した。
同年5月、木原防衛大臣は、ハワイにおいて、テオドロ・フィリピン国防大臣と会談を行った。会談では、警戒管制レーダーのフィリピンへの納入に関して、テオドロ国防大臣から謝意が示されるとともに、同年4月に南シナ海で実施した日米豪比による海上協同活動および2023年11月に交渉開始を発表した日比RAAについての意見交換を行った。RAAは、共同訓練など、日比部隊間の協力活動の円滑化に資することが期待されるものであり、その早期の妥結に向けて両国が一層連携していくことで一致した。
同時期、木原防衛大臣は、日米豪比防衛相会談を行い、4大臣は、東シナ海・南シナ海の状況について深刻な懸念を表明するとともに、南シナ海における、海上保安機関および海上民兵船舶の危険な使用に断固反対する意を示した。また、同年4月に実施した日米豪比による海上協同活動など、4か国間の防衛協力がこれまでになく強力となってきていることを強調し、南シナ海における4か国の協力活動や、能力構築支援の強化を含め、4か国の防衛協力を進めるための機会について議論した。
日米豪比防衛相会談(2024年5月)
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年4月、センティーノ・フィリピン国軍参謀総長(当時)とのテレビ会談に加え、アクイリノ米インド太平洋軍司令官を交えて日米比テレビ会談を行った。会談では、インド太平洋地域の平和と安定や国際社会の諸課題およびFOIPの実現のため、日比・日米比3か国の連携を一層促進させることで一致した。同年6月、シャングリラ会合に際し行った日米比3者会談では、インド太平洋地域における課題について認識を共有したほか、日米比防衛協力の重要性について再確認した。同年8月には、フィジーで開催されたインド太平洋参謀総長等会議(CHOD)に際し、ブラウナー・フィリピン国軍参謀総長と会談を行い、今後二国間、多国間での防衛協力・交流を一層推進することで一致した。また、アクイリノ米インド太平洋軍司令官を交えて日米比参謀総長級会談を実施した。同年12月に実施した日比テレビ会談では、南シナ海をめぐる情勢認識を共有し、緊張を高めるいかなる行為にも強く反対する立場を強調するとともに、日比間で緊密に連携することで一致した。
森下陸幕長は、同年5月、ハワイで開催された太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC)2023に際し、ブラウナー・フィリピン陸軍司令官(当時)と今後の防衛協力などについて懇談を行った。同年12月には、米太平洋陸軍と共催のランド・フォーシーズ・サミット(LFS)において、フリン米太平洋陸軍司令官、ジャーニー米太平洋海兵隊司令官、ガリード・フィリピン陸軍司令官およびロハス・フィリピン海兵隊司令官と日米比3か国懇談を行った。懇談では、戦略環境や3か国陸軍種による今後の連携の方向性について認識を共有するとともに、今後5年間の協力の指針となるロードマップについて議論した。さらに、スチュアート豪陸軍司令官を交えた日米豪比4か国懇談を初めて開催し、4か国の防衛協力に関して意見交換を行った。
日米豪比4か国懇談を行う森下陸幕長(2023年12月)
陸自は、同年10月と2024年3月に、HA/DR分野の能力構築支援として、フィリピン陸軍に対し災害発生時の対処方法についての知見を共有するとともに、人命救助機材の使用要領について技術指導・助言を実施した。
酒井海幕長は、2023年5月、シンガポール主催国際海洋防衛装備展示会(IMDEX Asia 2023)に際し、アダシ・フィリピン海軍司令官と懇談を行い、戦略環境認識、今後の防衛協力について議論した。また、同年11月、豪海軍主催インド太平洋シーパワー会議(IP23)に際し、バレンシア・フィリピン海軍副司令官と懇談を行い、南シナ海情勢、海上法執行活動など海洋安全保障分野における協力などについて議論した。
海自は、同年8月にIPD23部隊が米海軍、豪海空軍、フィリピン海軍とともに日米豪比4か国による初の共同訓練を実施した。その際、日米豪海軍はマニラに共同寄港し、日米豪比艦隊司令官などによる南シナ海状況視察を実施したほか、日米比艦隊司令官懇談を初めて開催し、3か国の共同訓練、情報共有を今後さらに強化すること、フィリピン海軍の能力向上に向けた各種取組を日米で支援することで一致した。同年10月、海自は、英国、カナダ海軍とともに、米比主催共同訓練「Exercise SAMA SAMA 2023」における、海洋状況把握(MDA)、国際法、医療に関する専門家会合に参加したほか、洋上での捜索救難訓練などを実施し、戦術技量の向上および参加国海軍との連携強化を図った。同年11月には、米・豪・カナダ海空軍に加え、初めてフィリピン海軍のオブザーバー参加を得て、令和5(2023)年度海上自衛隊演習を行った。また、2024年2月に艦船整備分野の能力構築支援として、フィリピン海軍に対し艦船のエンジン整備にかかる実習を実施した。さらに、同年4月には、日米豪比による海上協同活動として、米海軍、豪海空軍、フィリピン海軍と南シナ海にて共同訓練を実施した。
空自は、2023年8月、フィリピンにおいて米比主催の多国間共同訓練「パシフィック・エアリフト・ラリー」に初めて参加するとともに、日比人道支援・災害救援共同訓練をあわせて実施し、HA/DRにかかる能力の向上やフィリピンを含む参加国空軍との連携強化を図った。
動画:IPD23第1水上部隊活動記録(日米豪比共同訓練)
URL:https://youtu.be/geFXHik9eY4?si=v8HNi4wYVnLufpK8
ア ブルネイとの防衛協力・交流の意義
ブルネイとの間では、2023年に防衛協力・交流覚書に署名しており、ハイレベルを含む各種交流や艦艇などの寄港(航)、共同訓練などのプログラムを通じ、両国防衛当局間の関係を一層強化していくことに合意している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年6月、岡防衛審議官(当時)は、アディ・ブルネイ国防副次官(当時)と第1回日ブルネイ防衛政策対話を開催し、日ブルネイ間の防衛協力・交流や地域情勢などについて意見交換を行った。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年8月、フィジーで開催されたインド太平洋参謀総長等会議(CHOD)に際し、ハズザイミ・ブルネイ国軍司令官と会談を行い、FOIPおよびAOIPの実現に向けた日ブルネイ防衛協力・交流について認識を共有した。
森下陸幕長は、同月、豪陸軍主催陸軍参謀長シンポジウム(CAS)に際し、シャノニザム・ブルネイ陸軍司令官と懇談を行い、多層的な防衛協力・交流を通じて二国間関係を強化していくことで一致した。
酒井海幕長は、同年11月、豪海軍主催インド太平洋シーパワー会議(IP23)に際し、サリフ・ブルネイ海軍司令官代行と今後の防衛協力・交流について懇談した。
海自は、同年4月と2024年2月に外洋練習航海部隊がムアラに寄港し、ブルネイ海軍と親善訓練を実施した。また、2023年4月から5月、海自IMED23部隊がムアラに寄港し、ブルネイ海軍への艦艇公開や共同での海岸清掃ボランティアなど各種交流行事を実施した。
ア ベトナムとの防衛協力・交流の意義
南シナ海の沿岸国であるベトナムとの間では、防衛当局間の協力・交流が進展している。2021年の防衛相会談を契機に、日越二国間だけではなく、地域や国際社会の平和と安定により積極的に貢献するための「新たな段階に入った日越防衛協力」のもと、ハイレベル交流などを推進している。2023年11月には、両国の関係を、アジアと世界における平和と繁栄のための包括的戦略的パートナーシップに発展することとし、安全保障分野では、防衛装備移転に向けた手続を着実に進めることの重要性やOSAについて議論することで一致するなど、防衛協力・交流をさらに拡大している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットに際し、チン・ベトナム首相と首脳会談を行い、東シナ海・南シナ海情勢や北朝鮮への対応における連携を確認した。また、同年11月のトゥオン・ベトナム国家主席(当時)訪日時、同年12月のチン首相訪日時に首脳会談を行い、両国の防衛協力・交流のさらなる拡大や防衛装備移転に向けて、協力を推進することで一致した。
2023年11月、宮澤防衛副大臣(当時)は、インドネシアで開催されたADMMプラスの参加に際し、ザン・ベトナム国防大臣への表敬を実施した。また、芹澤防衛審議官は、2024年1月の第13回日ASEAN防衛当局次官級会合および同年2月の日越次官級協議に際し、チェン・ベトナム国防次官と会談を行った。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年4月、クオン・ベトナム人民軍総参謀長とテレビ会談を行い、日越防衛協力・交流が新たな段階に発展しているとして、地域と国際社会の平和と安定に向け、引き続き連携を強化していくことで一致した。また、同年10月、クオン人民軍総参謀長を公式招待し、日越外交関係樹立50周年における訪日を心から歓迎するとともに、日越防衛協力・交流を一層緊密かつ強固なものとしていくことで一致した。
森下陸幕長は、同年8月、豪陸軍主催陸軍参謀長シンポジウム(CAS)に際し、ギア・ベトナム人民軍副総参謀長と懇談を行い、多層的な防衛協力・交流を通じて二国間関係を強化していくことで一致した。
海自は、同年5月、ベトナム人民海軍に対し、水中不発弾処分に関する能力構築支援を行った。また、IPD23部隊は、同年6月、カムランに寄港し、各種交流行事やベトナム人民海軍との親善訓練を実施した。
内倉空幕長は、同年11月、ヒエン・ベトナム防空・空軍司令官を公式招待し、防衛協力・交流などに関する意見交換を実施した。
日越空軍種中級幹部交流(2023年11月)
空自は、2022年にベトナムとの間で中級幹部交流を実施することに合意し、2023年11月に、第1回交流団をベトナムへ派遣した。
ア マレーシアとの防衛協力・交流の意義
マレーシアは、マラッカ海峡および南シナ海という海上交通の要衝に位置する。マレーシアとの間では、2018年に防衛協力・交流に関する覚書、防衛装備品・技術移転協定が発効した。2023年12月には、両国の関係を包括的・戦略的パートナーシップに格上げし、両国の安全保障協力をさらに推進することとしている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年12月、岸田内閣総理大臣は、訪日したアンワル・マレーシア首相と首脳会談を行った。会談では、マレーシア国軍のためのOSAに関する交換公文の署名を歓迎するとともに、自衛隊とマレーシア国軍との間の訓練・交流を推進することで一致した。
ウ 各軍種の取組
森下陸幕長は、2023年5月、太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC)2023において、ムハンマド・マレーシア陸軍司令官と今後の防衛協力などについて懇談を行った。
陸自は、同年11月、HA/DR分野の能力構築支援として、マレーシア軍関係者を招へいし、防衛省における各種プログラム、装備品展示、地方公共団体を交えた意見交換などを実施した。
海自は、同年4月に外洋練習航海部隊がポートクランに寄港し、マレーシア海軍と親善訓練を実施した。同年5月、海自の最新鋭護衛艦「くまの」は、マレーシア主催ランカウィ国際海洋航空宇宙装備品展示会2023(LIMA'23)に参加し、海自の精強性、技術力、省人化の取組などについて広く紹介した。また、国際観艦式、多国間海上訓練、スポーツ交流など各種交流行事を通じて、参加国海軍との友好親善を図った。派遣海賊対処水上部隊は、2024年2月、ポートクランに寄港するとともに、マレーシア海軍と初めての共同訓練を実施した。
2021年に発生した国軍によるクーデターを受け、同年、わが国は米国を含む12か国の参謀長などとの連名により、国軍や関連する治安機関による民間人への軍事力の行使を非難し、国軍に対して暴力を停止するよう求める声明を発出した。
ア ラオスとの防衛協力・交流の意義
ラオスとの間では、2019年に防衛協力・交流に関する覚書に署名しており、HA/DR分野をはじめ幅広い分野で防衛協力・交流を進めていくこととしている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年11月、宮澤防衛副大臣(当時)は、インドネシアで開催されたADMMプラスに際し、チャンサモーン・ラオス副首相兼国防大臣への表敬を行った。
ウ 各軍種の取組
陸自は、2023年9月から10月にかけて、HA/DR分野の能力構築支援として、ラオス人民軍を日本に招へいし、災害対応における施設分野の実習などを実施した。また、同年12月には、ラオス人民軍が実施する水害を想定した災害対応訓練に対して助言を行った。
モンゴルとの関係は、2022年に平和と繁栄のための特別な戦略的パートナーシップに格上げされており、防衛協力・交流についても幅広い分野で進展している。
2023年10月、芹澤防衛審議官は、ソウルで開催されたソウル・ディフェンス・ダイアログに際し、サイハンバヤル・モンゴル国防大臣を表敬し、両国の防衛協力・交流のさらなる推進について意見交換を行った。
2024年2月、木原防衛大臣は、モンゴル国防大臣として約5年ぶりに訪日したサイハンバヤル国防大臣と防衛相会談を実施した。会談では、防衛装備・技術協力を含む様々な分野での防衛協力・交流を引き続き推進していくことで一致したほか、日モンゴル防衛協力・交流の覚書の改定文書に署名した。
吉田統幕長は、2023年8月、フィジーで開催されたインド太平洋参謀総長等会議(CHOD)に際し、ガンビャンバ・モンゴル軍参謀総長と会談を行い、昨近の空軍種間の交流の進展を歓迎するとともに、今後の日モンゴル防衛協力・交流についての認識を共有した。
森下陸幕長は、同年5月、ハワイで開催された太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC)2023に際し、ツォクトジャンガル・モンゴル陸軍司令官と懇談を行い、専門家交流や多国間訓練などを通じて二国間・多国間の連携を強化していくことで一致した。
陸自は、同年6月、モンゴル軍が主催するPKOに関する世界最大規模の多国間訓練「カーン・クエスト23」に参加した。また、同年4月、6月、10月に施設分野の能力構築支援として、モンゴル軍工兵部隊に対し、PKO派遣に必要な道路構築分野についての教育や教育指導を行った。さらに、2023年5月、10月には、HA/DR分野の能力構築支援として、モンゴル軍中央病院に対し、同国非常事態庁を含む関係機関などと連携した災害時の大量傷者受入訓練(MCRE:Mass Casuality Response Exercise)における助言、指導を行った。このほか、2024年1月、日米共同訓練「ノース・ウインド24」に、モンゴル軍人2名が初めてオブザーバー参加した。
内倉空幕長は、2023年7月、空自発足以来、初めての空幕長訪問として、モンゴルを公式訪問した。今回の訪問は、2022年11月にわが国を初めて公式訪問したガンバト・モンゴル空軍司令官の招待に応じて実現したものであり、訪問中、ガンバト司令官とインド太平洋地域の安全保障環境について認識を共有したほか、両国の防衛協力・交流を推進することで一致した。
空自初の公式訪問においてモンゴル空軍司令官とギフト交換をする
内倉空幕長(2023年7月)
空自はモンゴル空軍との覚書に基づき、教育研究交流や専門家交流を実施しており、2023年7月にモンゴル国防大と研究交流を実施したほか、同年10月、モンゴル空軍との間で航空管制分野での専門家交流を、同年12月には、警戒管制分野の専門家交流を実施した。
参照資料47(最近のアジア諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2020年度以降))、資料58(多国間共同訓練の参加など(2020年度以降))
太平洋島嶼国は、法の支配に基づく自由で開かれた持続可能な海洋秩序の重要性についての認識を、海洋国家であるわが国と共有するとともに、わが国と歴史的にも深い関係を持つ重要な国々である。また、わが国とオーストラリアを結ぶシーレーン、インド洋から南シナ海を抜け太平洋に至るシーレーンが交わる戦略的要衝に位置する。
わが国は、太平洋島嶼国との間で定期的に太平洋・島サミット(PALM:Pacific Islands Leaders Meeting)を開催しており、2022年のPALM9では、「太平洋のキズナ政策」を発表し、太平洋島嶼国との関係強化を進めている。
防衛当局間では、2021年に防衛省が初めて、日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD:Japan Pacific Islands Defense Dialogue)を主催するなど、防衛協力・交流を推進しており、国家防衛戦略では、重要なパートナーとして、同盟国・同志国などとも連携し、沿岸警備隊など軍隊以外の組織も含め、能力構築支援などの協力に取り組むこととした。
2023年12月、防衛省は、フランス領ニューカレドニアで開催された第8回南太平洋国防大臣会合14(SPDMM:South Pacific Defence Ministers' Meeting)にオブザーバー参加した。
2024年3月、防衛省は、第2回日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD)を東京で開催した。対面形式では初となった同会合において、木原防衛大臣は、太平洋島嶼国地域における防衛・安全保障分野の協力をさらに推進するため、「太平洋島嶼国地域における一体となった安全保障の取組のための協力コンセプト」を提示した。また、同会合に参加したトンガ王国皇太子への表敬やフィジー、パプアニューギニアの国防担当大臣と会談を行った。
吉田統幕長は、2023年8月、フィジーで開催されたインド太平洋参謀総長等会議(CHOD)に際し、フィエラケパ・トンガ王国軍参謀総長と会談を行った。会談では、2022年1月にトンガ王国にて発生した火山噴火による被害について、改めて心からのお見舞いを伝えるとともに、FOIPの実現に向けた両国の防衛協力・交流について認識を共有した。また、同時期に、カロニワイ・フィジー国軍司令官と会談を行うとともに、米軍主催パシフィック・パートナーシップの一環として、フィジーで行われたマングローブ植樹事業に、海自IPD23部隊の輸送艦「しもきた」乗員・陸自隊員とともに参加し、同国の環境保護に寄与した。さらに、同月、パラオにおいて実施された太平洋安全保障会議にオンライン形式で参加し、南太平洋の各国軍長などに対し、同地域における安全保障への自衛隊のコミットを示した。
陸自は、同年6月から7月にかけて、HA/DR分野の能力構築支援として、パプアニューギニア国防軍工兵大隊の整備要員を日本に招へいし、施設機械整備の基礎的事項に関する教育を行った。また、同年7月には、国防軍軍楽隊に対し、軍楽隊育成に関する能力構築支援を実施した。さらに、2024年1月には、ソロモン諸島に対する初めての能力構築支援として、ソロモン国家警察不発弾処理局に対する不発弾処理分野の事業を実施した。
酒井海幕長は、2023年6月、米太平洋艦隊主催海軍種多国間テレビ会談に参加し、太平洋島嶼国地域で横行するIUU漁業が安全保障上の脅威であることを再確認するとともに、規制のための積極的な支援を表明し、各国海軍参謀長などに対し、IUU漁業撲滅に向けた連携強化を呼びかけた。
海自は、同年4月から9月にかけて行われたIPD23において、ソロモン諸島、パプアニューギニア、パラオ、フィジー、トンガに寄港した。また、海自として初めて、キリバス共和国警察、パプアニューギニア国防軍と親善訓練を行うとともに、パラオ海上保安局、ソロモン諸島海上警察、トンガ王国海軍とも親善訓練を実施した。キリバスとの親善訓練は、海上保安庁MCT、オーストラリア海事サービスアドバイザーと共同で実施した。
空自は、ミクロネシア連邦などにおける人道支援・災害救援共同訓練「クリスマス・ドロップ」に参加した。
参照図表III-3-1-4(太平洋島嶼国での主な活動(2023年4月~2024年3月))、3項(多国間安全保障協力の推進)、4項(能力構築支援への積極的かつ戦略的な取組)、2節3項(海洋安全保障にかかる協力)、IV部3章1節(訓練・演習に関する取組)、資料48(最近の太平洋島嶼国との防衛協力・交流の主要な実績(2020年度以降))、資料58(多国間共同訓練の参加など(2020年度以降))
インド洋沿岸・中東地域の平和と安定は、シーレーンの安定的利用やエネルギー・経済の観点から、わが国を含む国際社会の平和と繁栄にとって極めて重要であり、防衛省・自衛隊としても、同地域の国と協力関係の構築・強化を図るため、ハイレベル交流や部隊間交流を進めてきている。2023年1月から5月にかけて、防衛省・自衛隊は、海自掃海母艦などによる令和4(2022)年度インド太平洋・中東方面派遣(IMED23)を実施し、わが国が同地域の安定と繁栄に深くコミットしていくという意思を示した。
参照資料49(最近のインド洋沿岸国・中東諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2020年度以降))、資料58(多国間共同訓練の参加など(2020年度以降))
ア スリランカとの防衛協力・交流の意義
スリランカは、インド洋のシーレーン上の要衝に位置する重要国であり、近年、同国との防衛協力・交流を強化している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
派遣海賊対処行動水上部隊は、2023年6月にコロンボ、同年10月にトリンコマリーに寄港し、スリランカ海軍と親善訓練、交流行事を実施した。
海自は、同年7月にIPD23部隊がコロンボに寄港し、海外における艦艇の整備検証として、コロンボ・ドックヤード15による船体などの点検整備を行った。また、スリランカ海軍とスポーツ交歓、親善訓練など各種防衛交流を実施し、相互理解・友好親善の増進を図った。同年10月には、スリランカ海軍主催海洋安全保障シンポジウム(ゴール・ダイアログ)に参加し、スリランカ海軍やインドなど参加国海軍の代表者と海洋安全保障にかかる議論を実施した。
ア パキスタンとの防衛協力・交流の意義
パキスタンは、南アジア、中東、中央アジアの連接点に位置し、わが国にとって重要なシーレーンにも面しているなど、インド太平洋地域の安定にとって重要な国家である。また、同国は、伝統的にわが国と友好的な関係を有する親日国でもあり、そのような観点から、同国との防衛協力・交流を推進している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年9月、第12回日パキスタン防衛当局間協議を開催し、地域情勢や両国の防衛政策などについて意見交換を行うとともに、今後の日パキスタン防衛協力・交流について議論を深めた。また、日パキスタン安全保障対話もあわせて実施し、安全保障・防衛分野や地域情勢を含む幅広い事項について意見交換を行った。
ア バングラデシュとの防衛協力・交流の意義
バングラデシュは、南アジア、東南アジアの連接点に位置し、わが国にとって重要なシーレーンにも面しているなど、インド太平洋地域の安定にとって重要な国家である。2023年4月、両国の関係を戦略的パートナーシップに格上げするとともに、防衛協力・交流覚書に署名し、防衛装備品・技術移転協定の交渉を開始するなど、安全保障協力を一層強化することとしている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年4月、岸田内閣総理大臣は、ハシナ・バングラデシュ首相と首脳会談を行った。会談では、FOIPの実現に向けての両国のコミットメントを再確認するとともに、艦艇、航空機による相互訪問、部隊間交流、親善訓練などを引き続き促進することで一致した。また、OSAに基づく協力、防衛装備品・技術移転協定の交渉開始に歓迎の意を表すとともに、防衛当局間の対話を強化することで一致した。さらに、同年11月には、OSAに関する交換公文の署名が行われた。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年4月、訪日したワカル・バングラデシュ首相府軍務局首席幕僚(当時)と会談を行い、戦略環境認識や両国の防衛協力・交流について意見交換した。
森下陸幕長は、同年5月、ハワイで開催された太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC)2023に際し、アーメド・バングラデシュ陸軍参謀長と懇談を行い、両国陸軍種間の関係を一層発展していくことで一致した。
海自は、同年4月にIMED23部隊がチッタゴンに寄港し、艦艇公開や、バングラデシュ海軍と親善訓練、機雷戦に関するセミナー、スポーツ交歓など各種交流行事を実施した。
ア モルディブとの防衛協力・交流の意義
モルディブは、インド洋上の戦略的要衝に位置し、わが国にとって重要なシーレーンにも面しているなど、インド太平洋地域の安定にとって重要な国家である。過去20年以上にわたり、国連PKOや海賊対処部隊への物資輸送の中継地として空自輸送機などが寄航するとともに、派遣海賊対処行動水上部隊、同航空隊などの進出・帰投時における重要な補給地点でもある。同国とは、海洋安全保障分野などにおける防衛当局間の交流を推進することとしている。
イ 各軍種の取組
海自は、2023年3月から4月にかけて、IMED23部隊がマレに寄港し、部隊指揮官によるモルディブ国軍司令官、同沿岸警備隊司への表敬、親善訓練(潜水訓練)、艦艇見学、スポーツ交歓など各種交流行事を実施した。また、同年7月には、海自IPD23部隊がマレに寄港し、部隊指揮官によるモルディブ国軍司令官、同沿岸警備隊司令官への表敬のほか、スポーツ交歓、共同による海岸清掃など各種交流行事を行い、友好親善を図った。
アラブ首長国連邦(UAE:United Arab Emirates)との間では、2018年に防衛交流に関する覚書が署名された。これ以降、防衛大臣や統幕長などによるハイレベル交流や防衛当局間協議の定期開催、空軍種間協力などを通じて、二国間防衛協力・交流を深化し続けている。
2023年5月には、中東地域の国との間では初めてとなる防衛装備品・技術移転協定が署名され、2024年1月に発効した。
2023年10月、芹澤防衛審議官は、ソウルで開催されたソウル・ディフェンス・ダイアログに際し、アラウィ・UAE空軍司令官と空軍種間協力や防衛装備・技術協力を含む二国間防衛協力・交流について協議し、防衛当局間のコミュニケーションを一層緊密に行うことの重要性について一致した。
イスラエルとは、2022年8月に実施した日イスラエル防衛相会談の際に、防衛協力・交流に関する覚書の改訂版に署名し、防衛装備・技術協力や軍種間協力を含む両国間の防衛協力・交流を引き続き強化していくことで一致している。
イランとの間では、防衛大臣などのハイレベル交流の機会を通じ、中東地域における日本関係船舶の安全確保を目的とした自衛隊による情報収集活動の延長などについて説明するとともに、防衛当局間の意思疎通を継続していくことで一致している。
エジプトとの間では、防衛副大臣などのエジプト訪問を含むハイレベル交流を通じて、PKOを含む分野における二国間防衛協力・交流の推進の重要性について確認している。
オマーンとの間では、2019年に防衛協力に関する覚書が署名された。ハイレベル交流のほか、海自艦艇の寄港・訓練を含む海軍種間協力を継続している。
2023年6月、第1回日オマーン防衛当局間協議を開催し、日オマーン間の防衛協力、地域情勢について意見交換を行った。
同年8月と2024年1月、派遣海賊対処行動水上部隊は、アラビア海などにおいて、オマーン国海軍と親善訓練を実施した。派遣海賊対処行動水上部隊は、オマーンのドゥクム港を主要な補給地として活用しており、寄港に際し、オマーン国海軍と親善訓練など各種防衛交流を実施し、相互理解・友好親善を深めている。
2024年2月、酒井海幕長は、オマーンを公式訪問し、ラフビー・オマーン海軍司令官との懇談において、今後の防衛協力・交流について議論した。
酒井海幕長とラフビー・オマーン海軍司令官との懇談(2024年2月)
カタールとの間では、2015年に防衛交流に関する覚書が署名された。2019年の初の防衛相会談以降、防衛大臣や統幕長によるハイレベル交流など防衛協力・交流を引き続き深化させている。カタールについては、在クウェート防衛駐在官が兼轄していたところ、2023年6月に防衛駐在官を新規に派遣した。
同年11月、第1回日カタール防衛当局間協議を開催し、日カタール間の防衛協力、地域情勢について意見交換を行った。
サウジアラビアとの間では、2016年に防衛交流に関する覚書が署名された。コロナ禍においても防衛相電話会談を実施するなど、防衛協力・交流を継続的に深化させてきている。
2023年7月、浜田防衛大臣(当時)は、ハーリド・サウジアラビア国防大臣と会談を行った。会談では、双方の国防政策について説明し、力による一方的な現状変更の試みを許容しないことを確認するとともに、防衛装備・技術分野を含む二国間の防衛協力・交流について議論し、今後、防衛当局間の交流を一層緊密に行うことで一致した。
トルコとの間では、2012年に防衛協力・交流の意図表明文書が署名された。
2023年10月、陸自はトルコ陸軍との間で幕僚協議を行い、同年2月に発生したトルコ南東部地震に関連し、HA/DR分野での専門家交流を始めることや両国陸軍種将官級の相互訪問について検討することで合意した。
酒井海幕長は、同年9月、米国主催国際シーパワーシンポジウム(ISS)に際し、タトゥルオール・トルコ海軍司令官と懇談を行い、海自艦艇のトルコ寄港など、今後の防衛協力・交流について意見交換した。また、海自は同年10月、トルコ海軍との間で幕僚協議を行い、地域情勢や防衛協力・交流などについて議論を実施した。
バーレーンとの間では、2012年に防衛交流に関する覚書が署名され、ハイレベル交流などを実施してきたところ、2023年11月に同覚書を改定し、両国の防衛協力・交流を一層推進することとしている。
派遣海賊対処行動水上部隊は、2023年7月、ミナサルマンに寄港し、バーレーン王国海軍と各種交流を実施した。また、2024年3月、同じくミナサルマンに寄港し、バーレーン王国海軍と初めての親善訓練を実施した。
ヨルダンとの間では、2016年に防衛交流に関する覚書が署名され、外務・防衛当局間協議を継続的に開催している。
2022年12月、自衛隊は、中東地域において初となる、統合展開・行動訓練(在外邦人等の保護措置にかかる訓練)をヨルダンにおいて行った。
2023年4月、浜田防衛大臣(当時)は、訪日中のアブドッラー2世ヨルダン国王を表敬し、2022年に行われた在外邦人等の保護措置にかかる訓練への協力に謝意を表するとともに、両国の防衛協力・交流を促進することで一致した。
同月、吉田統幕長はフネイティ・ヨルダン統合参謀本部議長とテレビ会談を行った。会談では、ヨルダンにおける在外邦人等の保護措置にかかる訓練をはじめとして、両国の防衛協力・交流が着実に進展しているとしたうえで、これをさらに進展させることで一致した。
同年10月から2024年1月まで、在イスラエル邦人等輸送の実施において、空自輸送機はヨルダンで待機し任務にあたった。
2024年2月、木原防衛大臣は、訪日したハサーウネ・ヨルダン首相兼国防大臣と防衛相会談を行い、在イスラエル邦人等輸送に対するヨルダンからの支援に謝意を示すとともに、実務者協議などを活用しながら、今後も防衛当局間のコミュニケーションを緊密に行うことで一致した。
アフリカ諸国は、国際社会において、その重要性と発言力を高めている。
アフリカ連合(AU:African Union)など多国間枠組みにより、地域の平和と安定に向けた積極的な取組が見られる一方、深刻な格差や貧困、政情不安といった課題や、近年は、パンデミック、ロシアによるウクライナ侵略といった複合的な危機による影響や、気候変動の影響(自然災害、食糧危機など)もあり、こうした地球規模の課題において、アフリカ諸国と協力することが、自由で開かれた国際秩序を守り抜くため、ますます重要になっている。
防衛省・自衛隊は、アフリカ地域における国際平和協力活動、ジブチを拠点とするソマリア沖・アデン湾の海賊対処活動に従事するほか、アフリカ諸国の平和維持活動に関する自助努力を支援するため、アフリカに所在するPKO訓練センターに自衛官を講師として派遣するなど、アフリカ地域の平和と安定に寄与するための活動を実施している。
参照2節2項(海賊対処への取組)、3節2項(国連PKOなどへの取組)、資料50(最近のその他の諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2020年度以降))
ア ジブチとの防衛協力・交流の意義
ジブチは、海賊対処のため、海外で唯一自衛隊の拠点が存在する重要な国家である。同拠点は、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS:United Nations Mission in the Republic of South Sudan)派遣部隊への物資の輸送に活用されたほか、わが国がジブチに対して実施している災害対処能力強化支援における教育の際にも活用されている。
また、2023年4月に発生した在スーダン邦人等輸送や同年10月の在イスラエル邦人等輸送において、ジブチ拠点が輸送機の前進待機場所として活用された。
国家安全保障戦略などでは、ジブチ政府の理解を得つつ、今後、在外邦人等の保護および輸送など、アフリカ諸国などにおける運用基盤強化のため、本活動拠点を長期的・安定的に活用することとしており、同年12月、ジブチにおいて、在外邦人等の保護措置および輸送、ならびに、その可能性を見据えた臨時の態勢の整備を行う自衛隊の地位を確保するため、日ジブチ地位取極16を準用する内容の交換公文をジブチ政府との間で締結した。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
陸自は、2023年10月から12月にかけて、ジブチ災害対処能力強化支援事業として、ジブチ軍に対し、施設分野に関する教育などを行った。
派遣海賊対処行動水上部隊は、同年11月、ジブチ海軍と親善訓練を実施した。その際、ジブチ海軍士官を海自艦艇に招待し、操艦法などの説明や若手士官同士の交流を行った。
ジブチ災害対処能力強化支援事業(2023年11月)
ケニアとの間では、2024年1月に第1回日ケニア防衛当局間協議を開催し、地域情勢や防衛協力・交流について議論を実施したほか、同年2月、両国の間で、日ケニア防衛協力・交流に関する意図表明文書が署名された。
中南米諸国には、太平洋に面する国やわが国と基本的価値を共有する国が多く存在しており、そのような国々との防衛協力・交流を推進している。
アルゼンチンとの間では、2023年8月、海自遠洋練習航海部隊がブエノスアイレス沖において、アルゼンチン海軍と親善訓練を実施した。
コロンビアとの間では、2016年に防衛交流に関する覚書に署名した。また、2023年9月、海自遠洋練習航海部隊がカルタヘナ周辺海域において、コロンビア海軍、米海軍とともに親善訓練を実施した。
チリとの間では、2023年7月、海自遠洋練習航海部隊が、バルパライソ沖において、チリ海軍と親善訓練を実施した。また、2024年3月には、デラマサ・チリ海軍司令官を公式招待した。
ブラジルとの間では、2020年に初となる日ブラジル防衛相会談をオンラインで実施した。その際、日ブラジル防衛協力・交流に関する覚書に署名し、今後も防衛協力・交流を推進していくことで合意した。また、2023年8月、海自遠洋練習航海部隊がレシフェ沖などにおいて、ブラジル海軍と親善訓練を実施した。
ペルーとの間では、2023年7月、海自遠洋練習航海部隊が、カヤオ沖において、ペルー海軍と親善訓練を実施した。また、同年9月、酒井海幕長が米国主催国際シーパワーシンポジウム(ISS)において、ポラール・ペルー海軍総司令官と懇談を行い、海自遠洋練習航海部隊で発生した病者への対応に関し、謝意を伝えた。
メキシコとの間では、2023年6月、海自遠洋練習航海部隊が、マンサニージョに寄港し、メキシコ海軍士官とのスポーツ交流、艦艇研修など各種交流を実施した。
参照資料50(最近のその他の諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2020年度以降))、資料58(多国間共同訓練の参加など(2020年度以降))
動画:令和5年度遠洋練習航海
URL:https://www.youtube.com/watch?v=r4lKHVOiRZc
わが国は、中国との間で、「戦略的互恵関係」を包括的に推進するとともに、様々なレベルの意思疎通を通じ、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、諸懸案も含め対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力をしていくといった、「建設的かつ安定的な関係」を構築していく。
防衛省・自衛隊は、中国がインド太平洋地域の平和と安定のために責任ある建設的な役割を果たし、国際的な行動規範を遵守するとともに、軍事力強化や国防政策にかかる透明性を向上するよう引き続き促す。一方で、わが国の懸念を率直に伝達していく。また、両国間における不測の事態を回避するため、ホットラインを含む日中防衛当局間の海空連絡メカニズムを運用していく。
日中防衛当局間においては、2023年2月、約4年ぶりに日中安保対話を東京で実施するなど、対面での対話や交流を再開させている。
同年5月、浜田防衛大臣(当時)は、李尚福(りしょうふく)・中国国務委員兼国防部長(当時)との間で、同年3月31日に設置された日中防衛当局間ホットラインによる初回の通話を実施した。双方は、ホットラインの運用を歓迎するとともに、ホットラインを含む「日中海空連絡メカニズム」が、日中間の信頼醸成および不測事態の回避といった重要な役割を担っていることを確認した。また、今後、ホットラインを適切かつ確実に運用していくことを確認し、日中防衛当局間における意思疎通を継続していくことで一致した。
同年6月、浜田防衛大臣(当時)は、シンガポールで開催されたシャングリラ会合に際し、李・国防部長(当時)と会談を行った。会談において、浜田防衛大臣(当時)から、日中間には安全保障上の多くの懸念があるからこそ、日中防衛当局間で率直な議論を重ねることが重要である旨を述べ、李・国防部長からも同様の考えが示された。
地域情勢について、浜田防衛大臣(当時)から、尖閣諸島を含む東シナ海情勢や南シナ海情勢などについて、深刻な懸念を改めて表明し、中露がわが国周辺で軍事的な共同行動を継続していることへの重大な懸念を表明した。また、台湾海峡の平和と安定の重要性について、改めて強調した。
このほか、日中防衛当局間の意思疎通に関し、両大臣は、同年5月に運用を開始した日中防衛当局間ホットラインについて、今後、適切かつ確実に運用していくことを改めて確認し、今後も対話や交流を推進していくことで一致した。
同年11月、岸田内閣総理大臣は、米国において開催されたAPEC(Asia Pacific Economic Cooperation)首脳会議に際し、習近平(しゅうきんぺい)中国国家主席と首脳会談を行った。会談では、「戦略的互恵関係」を包括的に推進することを確認するとともに、岸田内閣総理大臣から、「日中海空連絡メカニズム」のもとでの日中防衛当局間ホットラインの運用開始を歓迎しつつ、安全保障分野における意思疎通の重要性について述べた。
2023年7月、新型コロナウイルス感染症の影響などにより中断されていた、笹川平和財団主催日中佐官級交流が、約4年ぶりに対面で再開された。訪中した自衛隊佐官級訪問団は、中国人民解放軍傘下のシンクタンクを訪問し、日中関係や両国間の安全保障分野での課題について意見を交わしたほか、中国軍高官の表敬、中国軍施設などへの訪問を行った。
2018年6月、海空連絡メカニズムの運用が開始された。本メカニズムは、日中防衛当局の間で、①日中両国の相互理解および相互信頼を増進し、防衛協力・交流を強化するとともに、②不測の衝突を回避し、③海空域における不測の事態が軍事衝突または政治外交問題に発展することを防止することを目的として作成されたものであり、主な内容は、①防衛当局間の年次会合・専門会合の開催、②日中防衛当局間のホットライン開設、③自衛隊と人民解放軍の艦船・航空機間の連絡方法となっている。
参照資料51(最近の日中防衛協力・交流の主要な実績(2020年度以降))
2022年2月に発生したロシアによるウクライナ侵略について、政府は、明らかにウクライナの主権および領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国連憲章を含む国際法の深刻な違反であり、決して認められない行為である、という立場であり、このような力による一方的な現状変更は、国際秩序の根幹を揺るがすものであるとして、ロシアを最も強い言葉で非難している。
ロシアとの関係については、ウクライナ情勢を踏まえ、政府としてG7の連帯を重視しつつ適切に対応することとしている。同時に、隣国であるロシアとの間で、不測の事態や不必要な摩擦を招かないためにも、最低限の必要なコンタクトは絶やさないようにすることも必要である。
1 日豪の特別な戦略的パートナーシップを再確認するとともに、ルールに基づく秩序の維持およびインド太平洋地域の平和と安定のため、あらゆるレベルにおける日豪、日米豪の連携を強化するとしており、自衛隊と豪国防軍の相互運用性の強化やISRにおける協力、HA/DR、地域のパートナー国の能力構築、先進的防衛科学技術、サイバー・宇宙分野などにおける防衛協力の強化が明記されている。また、日豪両国や周辺地域の安全保障上の利益に影響を及ぼしうる緊急事態の際に、相互に対応措置を検討することとしている。
2 2023年度は、計5回実施。
3 インド太平洋地域における安全保障環境を踏まえ、2023年4月に発表。原子力潜水艦取得を通じた抑止力の向上、長距離精密打撃能力の発展、オーストラリア北部からの運用能力の向上、わが国やインドを含むインド太平洋地域のキーパートナーとの外交および国防パートナーシップの深化などが優先事項として示された。(参照 I部3章6節1項(オーストラリア))
4 三菱電機株式会社が有する電子・光学システム技術(レーザー技術)を活用し、豪国防軍の装備品の警戒能力や残存性を高めるために実施する共同開発事業。
5 1992年に米印の二国間訓練として始まり、2007年に海自が招待を受けて以降、継続的に参加している。2022年にオーストラリアがメンバー国に加わり、マラバール2023は、初めてオーストラリア主催で実施された。
6 2035年までに日英伊3か国により、いわゆる第5世代戦闘機を超える次期戦闘機を共同開発する事業。
7 自衛隊、米軍や同志国軍の複数の訓練および活動を取り入れた訓練の枠組みであり、インド太平洋地域において、参加国間の連携強化を図り、相互運用性を向上させることを目的としている。
8 日NATO協力の一層の進展を目的として、ハイレベル対話の強化や防衛協力・交流の促進などの協力を推進する旨定めるとともに、実務的な協力の優先分野を特定している。2020年6月にIPCPが改訂され、実務的な協力の優先分野として「人間の安全保障」が追加された。
9 新時代の挑戦に対応すべく、日NATO協力を新たな高みへと引き上げるために策定された日NATO間の新たな枠組み協力文書であり、2023年から2026年の4年間を対象にしている。
10 2018年12月、能登半島沖(わが国排他的経済水域内)において警戒監視中の海自P-1哨戒機が韓国海軍駆逐艦から火器管制レーダーを照射されるという事案が発生した。詳細については、防衛省HPを参照(https://www.mod.go.jp/j/surround/radar/index.html)
11 国際社会の平和と安定に対する脅威である大量破壊兵器・ミサイルおよびそれらの関連物資の拡散を阻止するため、国際法・各国国内法の範囲内で、参加国が共同してとりうる移転(transfer)および輸送(transport)の阻止のための措置を検討・実践する取組であり、これに基づき、大量破壊兵器などの拡散阻止能力の向上のためのPSI訓練が実施されている。
12 自衛隊がHA/DRに関連する活動のためにフィリピンを訪問する際の手続を簡素化するもの。
13 令和5年度に創設された、資機材供与やインフラ整備などを通じて、同志国の安全保障上の能力や抑止力の強化に貢献することにより、わが国との安全保障協力関係の強化、わが国にとって望ましい安全保障環境の創出および国際的な平和と安全の維持・強化に寄与することを目的とする、軍などが裨益者となる新たな無償による資金協力の枠組み。
14 オーストラリア・チリ・フィジー・フランス・ニュージーランド・パプアニューギニア・トンガの7か国により構成される(日本・英国・米国がオブザーバー)。SPDMMでは、南太平洋地域唯一の大臣級安全保障協議体として、様々な域内安全保障問題が議論されている。
15 わが国の民間造船会社が、出資および技術支援をしている。
16 海賊対処活動のためにジブチにおいて活動する要員の地位を確保する内容の交換公文であり、2009年にジブチ政府との間で締結。