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第IV部 共通基盤の強化

防衛白書トップ > 第IV部 共通基盤の強化 > 第3章 訓練・演習に関する諸施策 > 第1節 訓練・演習に関する取組 > 1 わが国自身による各種事態への対処力強化に資する訓練

第3章 訓練・演習に関する諸施策

第1節 訓練・演習に関する取組

防衛省・自衛隊が、わが国の防衛の任務を果たすためには、平素から、防衛力の中核である各隊員および各部隊が常に高い練度を維持、向上させることが必須であり、高い能力・練度こそが、わが国の抑止力・対処力の根幹をなすといえる。

防衛省・自衛隊は、様々なハイレベルの共同訓練・演習および他省庁・自治体を交えた各種演習を積極的に実施し、抑止力・対処力のさらなる向上に努めている。

また、自国の平和を維持するためには、抑止力・対処力を強化するのみならず、自国を取り巻く安全保障環境の安定化が不可欠である。そのため、防衛省・自衛隊は、自由で開かれたインド太平洋(FOIP:Free and Open Indo-Pacific)の実現に向けた取組として、広くインド太平洋地域において同盟国・同志国などとの共同訓練を積極的に推進している。特に、わが国の安全保障と密接な関係を有するインド太平洋地域において、パートナーシップを強化するとともに、共同訓練などといった共通の努力を同盟国・同志国などと行い、各国の能力・練度の維持・向上および共同・連携による抑止力・対処力の強化により、相乗効果を発揮することで、力による一方的な現状変更やその試みを許さない安全保障環境の創出を図っている。そのほか、一国のみでは対応が困難なグローバルな安全保障上の課題や不安定要因の対応に向けた連携強化にも努めている。

参照図表IV-3-1-1(わが国独自および日米同盟を基軸とした主要訓練)

図表IV-3-1-1 わが国独自および日米同盟を基軸とした主要訓練

1 わが国自身による各種事態への対処力強化に資する訓練

1 自衛隊の統合訓練

平素から陸・海・空自の統合運用について訓練を積み重ねることにより、自衛隊の抑止力・対処力がシームレスに遺憾なく発揮されるように準備しておくことが重要である。

このため、自衛隊は、1979年以来、統合運用を演練する自衛隊統合演習(実動演習)および自衛隊統合演習(指揮所演習)をおおむね毎年交互に実施している。また、大規模災害など各種の災害にも迅速かつ的確に対応するため、各種の防災訓練を実施しているほか、国や地方公共団体などが行う防災訓練にも積極的に参加し、各省庁や地方公共団体などの関係機関と連携強化を図っている。

さらに、海外における緊急事態においては、在外邦人等の輸送または保護措置を速やかに実施できるよう、自衛隊は、平素から訓練を実施している。

(1)自衛隊統合演習「JX(Joint Exercise)」

2023年11月、自衛隊は、日本全国において令和5年度自衛隊統合演習(実動演習)「05JX」を実施した。本演習は、自衛隊が実施する統合訓練の中で最も大規模な実動訓練であり、陸・海・空自から約3万人が参加し、グレーゾーンから武力攻撃事態にいたる一連の状況を想定して、宇宙・サイバー・電磁波を含めた様々な領域において、武力攻撃に対処するための訓練を総合的に実施した。また、一部の訓練には、米軍が参加し、日米の連携要領の維持・強化も図った。なお、本演習では、空自戦闘機などによる民間空港を利用しての訓練を、統合訓練として初めて実施したほか、民間船舶・港湾を利用した部隊の機動展開訓練、米軍基地の共同使用、離島における防災訓練なども実施し、実戦的かつ高度な演習を通じて自衛隊の統合運用能力の維持・向上を図った。

令和5年度自衛隊統合演習「05JX」における水陸両用作戦の演習(2023年11月)

令和5年度自衛隊統合演習「05JX」における水陸両用作戦の演習
(2023年11月)

(2)自衛隊統合防災演習「JXR(Joint Exercise for Rescue)」

自衛隊は、大規模地震発生時における自衛隊の指揮幕僚活動、主要部隊間の連携要領、防災関係機関や在日米軍などとの連携に関する防災訓練を行うことで、災害対処能力の維持・向上を図っている。2023年6月に実施された本訓練では、南海トラフ地震が発生したことを想定し、孤立地域が発生した状況において、孤立地域への部隊・装備品などの緊急輸送、沿岸部の孤立した被災地域への物資輸送などにかかる訓練を実施し、対応方針の検証を行い、自衛隊の災害対処能力の向上を図った。

(3)離島統合防災訓練「RIDEX(Remote Island Disaster Exercise)」および日米共同統合防災訓練「TREX(Tomodachi Rescue Exercise)」

離島における突発的な大規模災害への対処について、実動により訓練し、自衛隊の離島災害対処能力の維持・向上および米軍・関係防災機関などとの連携強化を図っている。

(4)「防災の日」総合防災訓練

防衛省・自衛隊は、大規模地震発生時において、迅速かつ組織的な自衛隊の災害派遣などを行えるよう、首都直下地震発生時を想定した防衛省災害対策本部運営訓練を2023年9月1日に実施した。また、地方公共団体が実施する防災訓練などに参加した。

動画アイコンQRコード資料:自衛隊の部隊訓練について
URL:https://www.mod.go.jp/j/approach/defense/training/index.html

動画アイコンQRコード資料:統合演習・訓練
URL:https://www.mod.go.jp/js/activity/training.html

(5)大規模地震時医療活動訓練

防衛省・自衛隊は、内閣府が主催する大規模地震時医療活動訓練に参加し、災害派遣時の各種行動や防災関係機関との連携要領を演練し、災害対処能力の維持・向上を図っている。2023年9月に実施された本訓練では、防衛省・自衛隊を含む関係機関(警察庁、消防庁、厚生労働省(災害派遣医療チーム(DMAT:Disaster Medical Assistance Team)含む。)、国土交通省、海上保安庁など)に加え、複数の自治体(徳島県、香川県、愛媛県、高知県、大分県、宮崎県)が参加し、南海トラフ地震を想定した実動訓練を行った。

各自治体、DMATなどと連携して災害対応の訓練を行う隊員(2023年9月)

各自治体、DMATなどと連携して災害対応の訓練を行う隊員(2023年9月)

(6)統合展開・行動訓練(中東アフリカ地域)「FD(Furnace Darter)」

2022年12月、ジブチとヨルダンの協力を得て、中東・アフリカ地域の実環境下で在外邦人等の保護措置に関する訓練を実施した。本訓練では、派遣統合任務部隊の部隊展開後から在外邦人等の警護輸送までの行動に関し、関係機関、米軍、イタリア軍、フランス軍との連携強化を図った。なお、本訓練の教訓などは、2023年4月の在スーダン共和国邦人等の輸送および同年10月の在イスラエル国邦人等の輸送において活かされた。

参照III部1章7節2項(在外邦人等の保護措置および輸送への対応)III部3章1節2項11(15)(ヨルダン)III部3章1節2項12(2)(ジブチ)

2 各自衛隊の訓練

統合による防衛力が十分に発揮される大前提は、各自衛隊の高い練度である。そのため、各自衛隊においては、隊員個々の訓練と、部隊の組織的な訓練を継続的に実施し、それが、精強な自衛隊の基礎となっている。

(1)陸上自衛隊

陸自は、方面隊規模での実動演習を実施し、各種事態などへの対処能力の向上を図っている。また、全国の陸自部隊による陸上自衛隊演習を実施し、各種部隊行動の演練を通じて任務遂行能力や運用の実効性向上を図るとともに、抑止力・対処力の強化に寄与している。

そのほか、国内外における米空軍機などからの空挺降下訓練、水陸両用作戦にかかる訓練、中SAM(Surface-to-Air Missile)/SSM(Surface-to-Surface Missile)部隊の実射訓練などを実施し、統合・共同による領域横断作戦に必要な各種戦術技量の向上を図っている。

動画アイコンQRコード資料:陸上自衛隊の教育訓練の概要
URL:https://www.mod.go.jp/gsdf/about/training/index.html

(2)海上自衛隊

海自は、艦艇部隊間や艦艇、航空機(空自を含む。)、陸上部隊(陸自を含む。)間の訓練を実施するほか、国内における機雷戦訓練や、米海軍の協力を得て、良好な米国の訓練基盤を活用した派遣訓練を実施し、各種戦術技量の向上を図っている。また、全国の部隊が実動する海上自衛隊演習(実動演習)を実施し、即応能力の向上を図っている。2023年11月に実施した「令和5年度海上自衛隊演習」では、グレーゾーンから武力攻撃事態までの一連の状況を想定し、指揮官の戦術判断および部隊運用要領を演練した。本演習は、海上自衛隊において過去最大の演習となり、米、豪、カナダ海空軍に加え、フィリピン海軍から初のオブザーバー参加を得て、対潜戦、対水上戦など各種戦術訓練を行い、海上自衛隊の任務遂行能力の向上、参加国海軍との連携強化を図った。

令和5年度海上自衛隊演習(2023年11月)

令和5年度海上自衛隊演習(2023年11月)

海自は、海上保安庁との連携も強化しており、2023年6月、防衛大臣による海上保安庁の統制要領の策定後、初めて海上保安庁と実動訓練を実施した。本訓練は、武力攻撃事態において海上保安庁を防衛大臣の統制下に入れ、住民の避難、船舶への情報提供および避難支援を行うことを想定したものであり、訓練を通じて、海上保安庁と情報伝達要領などについて演練、検証を行った。そのほか、海上保安庁との共同訓練では、総合的な対処・連携強化にかかる訓練、不審船対処にかかる訓練などを実施し、共同対処能力を強化した。

参照III部1章3節1項3(2)(海上保安庁との連携強化)

動画アイコンQRコード資料:海上自衛隊の訓練・演習
URL:https://www.mod.go.jp/msdf/operation/training/

(3)航空自衛隊

空自は、戦闘機、レーダー、地対空誘導弾などの先端技術の装備を駆使するため、個人の専門的な知識技能を段階的に引き上げることを重視している。また、戦闘機部隊、航空警戒管制部隊、地対空誘導弾部隊などによる部隊ごとの訓練、部隊間の連携要領の訓練、さらに、航空輸送部隊や航空救難部隊などを加えた総合的な訓練も実施している。

例えば、空自は、全国の部隊が実動する航空総隊総合訓練(実動訓練)、PAC-3機動展開訓練、国外運航訓練などを実施し、機動展開能力、即応能力の向上を図っている。また、米国におけるペトリオットの実射訓練や、米国高等空輸戦術訓練センターを活用した訓練により、任務遂行能力の向上を図っている。

空自ペトリオット実射訓練

空自ペトリオット実射訓練

動画アイコンQRコード資料:航空自衛隊の訓練
URL:https://www.mod.go.jp/asdf/report/cat-kunren/