防衛省では、環境の変化に迅速に対応するため、2007年から「総合取得改革推進プロジェクトチーム」会合において、2010年からは有識者による契約制度研究会において、取得制度の検討を行っている。2016年度からは、検討結果を確実に具現化するため、特別研究官制度4を活用している。
装備品の製造には長期間を要することから、一定数量を一括で調達しようとする場合、5年を超える契約が必要になるものが多い。また、装備品や役務については、①防衛省のみが調達を行っていること、②それらを供給する企業が限られていることなどから、スケールメリット5が働きにくく、企業としても高い予見可能性をもって計画的に事業を進めることが難しいという特殊性がある。
このため、財政法において原則5か年度以内とされている国庫債務負担行為による支出年限について、特定の装備品については、長期契約法6の制定により10か年度以内としている。この結果、装備品の安定的な調達が可能となり、計画的な防衛力整備が実現されるとともに、企業側も、将来の調達数量が確約され、人員・設備の計画的な活用と一括発注による価格低減が可能となる。
また、PFI(Private Finance Initiative)法7などを活用し、より長期の複数年度契約を実施することで、国の支出を平準化し予算の計画的取得と執行を実現するとともに、受注者側のリスク軽減、新規参入の促進などを通じた装備品調達コストの低減などのメリットを引き出している。
このほか、装備品の特性により競争性が期待できない調達や、防衛省の制度を利用しコストダウンに取り組む企業については、迅速かつ効率的な調達の実施や企業の予見可能性向上の観点から、透明性・公正性を確保し、対象を類型化・明確化したうえで、随意契約の適切な活用を図っている。
装備品の調達においては、市場価格が存在しないものが多く、高価格になりやすいという特性を踏まえ、調達価格の低減と企業のコストダウン意欲の向上を同時に達成することが必要である。
この実現のため防衛装備庁では、2020年4月以降、官民が共同して契約の履行や進捗の管理、コスト管理を行い、コストダウンが図られた場合は一定の割合を企業に還元する、共同履行管理型インセンティブ契約制度を次期戦闘機事業やスタンド・オフ電子戦機事業などに適用している。また、同月から、企業自らのコストダウンを評価する仕組みとして、価格低減に対して報奨を付与する制度を施行しており、適用範囲の拡大など、企業のコストダウンをより促す仕組みとなるよう検討を続けている。