第4期海洋基本計画では、「自由で開かれた海洋」の維持・発展に向け、防衛当局間における二国間・多国間の様々なレベルの安全保障対話・防衛交流を活用し、各国との海洋安全保障に関する協力を強化することとされている。
これを受け、防衛省・自衛隊は、ADMMプラスやARF海洋安全保障会期間会合(ISM-MS:Inter Sessional Meeting on Maritime Security)といった地域の安全保障対話の枠組みにおいて、海洋安全保障のための協力に取り組んでおり、2024年から2027年までの間、フィリピンとともに、ADMMプラス海洋安全保障専門家会合の共同議長を務める。
また、インド太平洋地域沿岸国に対し、海洋安全保障にかかる能力構築支援を行っており8、沿岸国の海洋状況把握(MDA:Maritime Domain Awareness)能力の向上を支援するほか、同盟国・同志国などと海洋安全保障にかかる協力を強化している。
海自は、インド太平洋地域の各国海軍などと連携しつつ、同地域沿岸国の海軍、警察機関などと海洋安全保障にかかる訓練を実施している。特に、太平洋島嶼国は、違法・無報告・無規制(IUU:Illegal, Unreported, Unregulated)漁業9、海上における犯罪などのため、海洋安全保障能力の強化が急務であることから、海自インド太平洋方面派遣(IPD23:Indo-Pacific Deployment)部隊は、一部の訓練で海上保安庁、米国、オーストラリアと連携しつつ、キリバス、パラオ、ソロモン諸島、トンガ10において海洋安全保障にかかる訓練を実施した。
わが国が供与したパラオ海上保安局巡視船(ケダム)との訓練
(2023年7月)
派遣海賊対処行動水上部隊および航空隊は、海賊対処任務に加え、ジブチに所在する他国軍との防衛交流を推進しており、中東地域沿岸国港湾への寄港や、ソマリア沖・アデン湾などにおいて、戦術技量の向上、各国軍との連携強化を目的に、EU海上部隊など11と共同訓練を実施している。
こうした防衛交流・協力を通じたインド太平洋地域沿岸国との連携強化は、海洋安全保障の維持に寄与するものであり、大きな意義がある。
参照1節2項10(3)(各軍種の取組)、1節4項3(関係各国との連携)、資料58(多国間共同訓練の参加など(2020年度以降))
8 これまで、インドネシア、ベトナム、フィリピン、タイ、ミャンマー、マレーシア、ブルネイ、スリランカに対し、海洋安全保障に関する能力構築支援の取組を行った実績がある。
9 無許可操業、無報告または虚偽報告された操業、無国籍の漁船、地域漁業管理機関非加盟国の漁船による違反操業など、各国の国内法や国際的な操業ルールに従わない漁業活動であり、水産資源の持続可能な利用に対する深刻な脅威、かつ、食料安全保障にも直結する。
10 IPD23部隊は、パラオにおいて、わが国が供与したパラオ海上保安局巡視船(ケダム)と訓練を実施した。キリバスでは、海上保安庁、オーストラリア海事サービスアドバイザーと連携し、キリバス共和国警察と訓練を実施した。トンガでは、米海軍主催パシフィックパートナーシップ2023の一環として、トンガの海洋安全保障能力の強化に寄与するため、米国沿岸警備隊のIUU漁業取締関連アドバイザーとともに、トンガ王国海軍の立入検査部隊と立入検査訓練などを実施した。
11 派遣海賊対処行動水上部隊は、2023年7月にEU海上部隊(スペイン海軍)と、同年9月にEU海上部隊(イタリア海軍)と、同年10月にEU海上部隊(スペイン海軍)と、2024年1月にフランス海軍とそれぞれ海賊対処共同訓練を実施した。