各自衛隊は、米国のみならず、第三国の参加も得たハイレベルな多国間共同訓練に積極的に取り組んでいる。オーストラリアや欧州諸国の軍隊を交えた訓練を通じ、自衛隊の戦術技量の向上を図るとともに、各国軍隊との連携および相互運用性を高め、わが国の抑止力・対処力を強化している。
陸自は、2023年6月から7月にかけて、オーストラリアで実施された米豪軍との実動演習に参加し、重要施設などの防護、攻撃・防御および砲迫射撃を含む各種地形に応じた射撃訓練を実施し、陸自部隊の作戦遂行能力の向上、米豪軍部隊との連携強化を図った。
米豪軍と対ゲリラ・コマンドウ作戦の訓練を行う陸自隊員(2023年7月)
動画:令和5年度豪州における米豪軍との実動訓練「サザンジャッカルー23」
URL:https://youtu.be/FR0-cFToS8I?si=y_yJs_XWpyh_YLC9
2023年11月から12月にかけて、わが国で実施したYS-85は、日米陸軍種による最大規模の指揮所演習であり、本年は、豪陸軍が初めて演習に参加した。
演習では、日米の海・空軍種の参加を得て、戦略レベルから作戦レベルの指揮幕僚活動を演練するとともに、作戦を支える兵站、衛生、人事などの要素も拡充して実施した。また、宇宙・サイバー・電磁波の領域を加えた自衛隊の領域横断作戦と米陸軍のマルチ・ドメイン・オペレーションにかかる日米の連携要領を演練するなど、日米共同での対処能力の向上および日米豪3か国の連携強化を図った。
また、フィリピン、英国、カナダ、シンガポール、フランスが初めてオブザーバーとして本演習に参加し、相互の連携を強化した。
米国が主催する抑止力強化を目的としたLSGEの一環として、海自は2023年6月、沖縄東方から東シナ海に至る海空域で、空母2隻を含む米海軍、米空軍、フランス海軍、空自F-15戦闘機とともに日米仏共同訓練「Multi Big-Deck Event」を実施した。そのほか、日米豪加共同訓練「ノーブル・ウルフ」、日米加仏共同訓練「ノーブル・タイフーン」、日米加共同訓練「ノーブル・レイブン23」、日米仏共同訓練「ノーブル・バッファロー」など、インド太平洋地域において複数の共同訓練を行い、対水上戦、対潜戦など各種訓練を通じ、参加各国との連携強化を図った。
米空母「ロナルド・レーガン」・「ニミッツ」、護衛艦「いずも」、仏海軍最新フリゲート「ロレーヌ」、空自F-15戦闘機などが参加した日米仏共同訓練「Multi Big-Deck Event」(2023年6月)
海自は、2023年7月、グアム島周辺海空域において、米海軍、米海兵隊、豪海軍および韓国海軍との共同訓練を実施した。本訓練では、対水上・対地射撃、対水上戦および対潜戦などについて演練を実施し、戦術技量の向上や参加各国との連携強化を図った。
海自は、2023年8月、オーストラリア東方海空域およびシドニーにおいて米海軍、インド海軍、豪海軍および豪空軍との共同訓練を実施した。海自からは、護衛艦「しらぬい」および特別警備隊が参加し、対潜戦、対空戦、対水上戦、洋上補給などの訓練を実施し、参加各国との相互運用性の向上を図った。なお、今回のマラバールは、2022年に正式メンバーとなったオーストラリアが初めて主催した。FOIPの実現の中核となる4か国の枠組みで、「マラバール」を継続して実施してきた意義は大きく、引き続き関係強化に取り組むこととしている。
空自は、2023年8月、日豪円滑化協定(RAA:Reciprocal Access Agreement)発効後にF-35A戦闘機の米国・オーストラリアへの機動展開訓練を、同年9月に日豪共同訓練「武士道ガーディアン23」をそれぞれ実施した。機動展開訓練では、F-35A戦闘機などをグアム、オーストラリアに展開し、今後のローテーション展開を見据えた空軍種間の連携強化を図った。
空自は、2023年12月、日米豪で初めて基地警備共同訓練を実施し、相互の運用要領の共有などを通じて、基地警備体制の強化を図った。
空自は、2024年2月、グアムを拠点とする日米豪共同訓練「コープ・ノース24」において、海自とともに人道支援・災害救援(HA/DR:Humanitarian Assistance/Disaster Relief)の共同訓練を実施し、相互運用性のさらなる向上を図った。
日米豪共同訓練「コープ・ノース24」【米国国防省提供】