戦い方については、従来のそれとは様相が大きく変化しているが、大規模なミサイル攻撃や情報戦を含むハイブリッド戦などに加え、これまでの航空侵攻・海上侵攻・着上陸侵攻といった伝統的なものにも対応していく必要がある。陸上・海上・航空防衛力は領域横断作戦の基本であり、島嶼部を含むわが国への侵攻に対しては、海上優勢・航空優勢を確保し、わが国に侵攻する部隊の接近・上陸を阻止する。
わが国に対する武力攻撃があった場合、自衛隊は防衛出動により対処することになる。その際の対応としては、①防空のための作戦、②周辺海域の防衛のための作戦、③陸上の防衛のための作戦、④海上交通の安全確保のための作戦などに区分される。なお、これらの作戦の遂行に際し、米軍は日米防衛協力のための指針(ガイドライン)にあるとおり、自衛隊が行う作戦を支援するとともに、打撃力の使用を伴うような作戦を含め、自衛隊の能力を補完するための作戦を行うことになる。
周囲を海に囲まれたわが国の地理的な特性や現代戦の様相20から、わが国に対する本格的な侵攻が行われる場合には、まず航空機やミサイルによる急襲的な航空攻撃が行われ、また、こうした航空攻撃は幾度となく反復されると考えられる。防空のための作戦においては、敵の航空攻撃に即応して国土からできる限り遠方の空域で迎え撃ち、敵に航空優勢を獲得させず、国民と国土の被害を防ぐとともに、敵に大きな損害を与え、敵の航空攻撃の継続を困難にするよう努めることになる。
このため、電子戦能力に優れたF-35A戦闘機や、短距離離陸・垂直着陸が可能なF-35B戦闘機の取得を継続するとともに、空自新田原(にゅうたばる)基地(宮崎県)に臨時F-35B飛行隊(仮称)を新設する。
F-35B戦闘機
参照図表III-1-4-7(防空のための作戦の一例)
島国であるわが国に対する武力攻撃が行われる場合には、航空攻撃に加えて、艦船などによるわが国船舶への攻撃やわが国領土への攻撃などが考えられる。また、大規模な陸上部隊をわが国領土に上陸させるため、輸送艦などの活動も予想される。周辺海域の防衛のための作戦は、洋上における対処、沿岸海域における対処、主要な海峡における対処、周辺海域の防空からなる。これら各種作戦の成果を積み重ねて敵の侵攻を阻止し、その戦力を撃破または消耗させることにより、周辺海域を防衛することになる。
このため、長射程ミサイルの搭載、対潜戦能力の強化など、各種海上作戦能力が向上した新型FFMや探知能力などが向上した潜水艦、洋上における後方支援能力を強化した新型補給艦の建造などを進めている。
新型FFM(イメージ)
参照図表III-1-4-8(周辺海域の防衛のための作戦の一例)
わが国を占領するには、侵攻国は海上優勢・航空優勢を得て、海から地上部隊を上陸、空から空挺部隊などを降着陸させることとなる。侵攻する地上部隊や空挺部隊は、艦船や航空機で移動している間や着上陸前後は、組織的な戦闘力の発揮が困難という弱点があり、この弱点を捉え、できる限り沿岸海域と海岸地域の間や着陸地点において、早期に撃破することが必要である。
これを踏まえ、機動戦闘車などと連携し、機動的に侵攻部隊対処を行うための共通戦術装輪車(歩兵戦闘車、機動迫撃砲)や、水際障害処理装置の取得などを進めている。
共通戦術装輪車(機動迫撃砲)(イメージ)
参照図表III-1-4-9(陸上の防衛のための作戦の一例)
わが国は、資源や食料の多くを海外に依存しており、海上交通路はわが国の生存と繁栄の基盤を確保するための生命線である。また、わが国に対する武力攻撃などがあった場合、海上交通路は、継戦能力の維持やわが国防衛のため米軍が来援する際の基盤となる。
海上交通の安全確保のための作戦では、対水上戦、対潜戦、対空戦、対機雷戦などの各種作戦を組み合わせて、哨戒21、船舶の護衛や海峡・港湾の防備を実施するほか、航路帯22を設定してわが国の船舶などを直接護衛することになる。なお、海上交通路でのわが国の船舶などに対する防空(対空戦)は護衛艦が行い、状況により戦闘機などの支援を受けることになる。