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第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチ

防衛白書トップ > 第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチ > 第1章 わが国自身の防衛体制 > 第2節 力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境の創出 > 1 「瀬取り」への対応

第2節 力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境の創出

国家防衛戦略における第一の目標は、力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境の創出である。

力による一方的な現状変更を許さない取組において重要なのは、わが国自身の防衛体制の強化に裏付けられた外交努力である。外交努力とあいまって、防衛省・自衛隊においては、同盟国との協力や同志国などとの多層的な連携を推進し、望ましい安全保障環境の創出に取り組んでいく。

また、海洋国家であるわが国にとって、海洋の秩序を強化し、航行・飛行の自由や安全を確保することは、わが国の平和と安全にとって極めて重要である。このため、わが国の重要なシーレーンの安定的利用を確保するために、日本関係船舶の安全確保に必要な取組などを実施していく。

参照2章(日米同盟)3章(同志国などとの連携)IV部1章3節(防衛装備・技術協力と防衛装備移転の推進)

1 「瀬取り」への対応

1 基本的考え方

2017年9月に採択された国連安保理決議第2375号において、国連加盟国は、北朝鮮籍船舶に対する、または、北朝鮮籍船舶からの洋上での船舶間の物資の積替え(いわゆる「瀬取り」)を容易にし、あるいは、関与することが禁止されている。これは、「瀬取り」により、北朝鮮が、国連安保理決議に基づく制裁を逃れて密輸することを防ぐ狙いがある。

わが国としては、朝鮮半島の完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な非核化という共通の目標に向け、米国や韓国のみならず、中国・ロシアを含む国際社会と密接に連携しながら、「瀬取り」への対応を含め、国連安保理決議の実効性を確保していく必要がある。

2 防衛省・自衛隊の対応

防衛省・自衛隊としては、わが国周辺海域において、平素実施している警戒監視活動の一環として、海自において国連安保理決議違反が疑われる船舶の情報収集をしており、関係省庁、関係国および関係国際機関と緊密に協力を行っている。北朝鮮籍タンカーと外国籍タンカーなどが東シナ海の公海上で接舷(横付け)している様子を、海自艦艇などが、2018年以降、2024年3月末までの間に計24回確認し、関係省庁とその都度、情報共有を行った。

これらの船舶は、政府として総合的に判断した結果、国連安保理決議で禁止されている「瀬取り」を実施していたことが強く疑われるとの認識に至ったため、わが国として、国連安保理北朝鮮制裁委員会などに通報するとともに、関係国との情報共有や、これらのタンカーの関係国などに対する情報提供と対外公表を実施した。

こうした北朝鮮籍船舶との「瀬取り」を含む違法な海上活動に対し、近年、国際的な関心が高まってきており、米国はもとより、2018年4月以降、オーストラリア、カナダ、英国、ニュージーランド、フランス、ドイツが、東シナ海を含むわが国周辺海域に艦艇や航空機を派遣し、警戒監視活動を実施している。防衛省・自衛隊は、引き続き関係国と緊密に協力を行い国連安保理決議の実効性を確保していく。

3 関連する事象

オーストラリア政府の発表によると、2023年11月、日本周辺海域において、北朝鮮による「瀬取り」に対する警戒監視活動を実施していた豪海軍のフリゲート「トゥーンバ」に対し、中国軍の駆逐艦が接近して音波探知機を作動させ、豪海軍潜水士が負傷した事案があった。

動画アイコンQRコード資料:わが国における国連安保理決議の実効性の確保のための取組
URL:https://www.mod.go.jp/j/approach/defense/sedori/index.html