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第IV部 共通基盤の強化

2 日米同盟の強化に資する訓練

日米同盟は、わが国の安全保障にとって不可欠であり、その抑止力・対処力の強化にあたり、日米共同訓練は重要な役割を果たしている。自衛隊は、各軍種間の共同訓練や日米共同統合演習(実動演習および指揮所演習)を着実に積み重ねており、自衛隊の戦術技量の向上や米軍との連携強化などを図るとともに、地域の平和と安定に向けた日米の一致した意思や能力を示してきた。

1 統合による日米共同訓練

自衛隊は、1986年以来、武力攻撃事態などにおける自衛隊の運用要領および日米共同対処要領を演練し、自衛隊の即応性と日米の相互運用性の向上を図るため、日米共同統合演習「キーン・ソード」(実動演習)、「キーン・エッジ」(指揮所演習)を実施している。

2023年度は、令和5年度日米共同統合演習(指揮所演習)「キーン・エッジ24」を実施し、各種事態における日米共同対処および自衛隊の統合運用にかかる指揮・幕僚活動を演練した。本演習では、日米豪防衛協力の実効性を向上するため、初めて豪国防軍が参加し、指揮統制について演練した。このほか、日米共同による弾道ミサイルへの対処などの訓練を実施し、自衛隊の統合運用能力および日米共同対処能力の維持・向上を図った。

「キーン・エッジ24」で米軍と調整を実施する隊員(2024年2月)

「キーン・エッジ24」で米軍と調整を実施する隊員(2024年2月)

動画アイコンQRコード資料:進化する日米共同訓練(陸自)
URL:https://www.mod.go.jp/gsdf/about/japan-us/index.html

2 各自衛隊の日米共同訓練
(1)陸上自衛隊

近年、陸自は、中央・太平洋レベルなどの米陸軍および米海兵隊と運用上・戦略上の連携を強化している。共同訓練は、ハイレベル交流などとあわせ、日米共同対処態勢の抜本的な強化につながる取組として、進化・発展を続けている。

2023年度は、米陸軍と実施した「オリエント・シールド23」、米海兵隊と実施した「レゾリュート・ドラゴン23」など各種の共同訓練により、日米の連携要領の具体化および相互運用性の向上を図った。また、9年ぶりに積雪寒冷地における米陸軍との共同訓練「ノース・ウインド24」を実施し、日米それぞれの部隊が有する積雪地での戦術行動にかかるノウハウを共有するなど、あらゆる事態に対処しうる能力の向上を図った。

ア 米陸軍との実動訓練「オリエント・シールド23」

陸自は、2023年9月、領域横断作戦と米陸軍のマルチ・ドメイン・オペレーションを踏まえた日米の連携能力向上に資する訓練を実施した。本訓練では、日米共同での共同対艦戦闘などの指揮所訓練を実施したほか、実動訓練では、陸自多連装ロケットシステム(MLRS:Multiple Launch Rocket System)、米陸軍高機動ロケット砲システム(HIMARS:High Mobility Artillery Rocket System)などによる実射訓練を含む対艦戦闘訓練、対戦車ミサイルや砲迫などの実射を含む米陸軍歩兵部隊との共同戦闘訓練を実施した。また、奄美大島において、米小型揚陸艇と連携した補給品の事前集積・輸送にかかる訓練を初めて実施するなど、実動で相互連携要領を演練し、日米の相互対処能力を向上させた。

共同対艦戦闘訓練(陸自MLRS)(2023年9月)

共同対艦戦闘訓練(陸自MLRS)(2023年9月)

イ 日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン23」

陸自は、2023年10月、領域横断作戦と米海兵隊の(EABO:Expeditionary Advanced Base Operation1)を踏まえた連携を焦点としつつ、一連の島嶼(しょ)防衛作戦について演練した。本訓練は、指揮所演習と実動訓練からなり、北海道、九州から沖縄にかけて実施した、国内における米海兵隊との最大規模の訓練である。実動訓練では、指揮所演習の成果を踏まえつつ、日米の指揮機関による戦闘指導と連携し、陸自の地対艦誘導弾(SSM)、多連装ロケットシステム(MLRS)、米海兵隊の高機動ロケット砲システム(HIMARS)などを活用した対艦・対空戦闘や対着上陸戦闘、共同兵站・衛生支援など、島嶼防衛に必要な訓練を実施した。また、陸自V-22(オスプレイ)が本演習に初めて参加し、日米オスプレイによる患者後送訓練を実施したほか、日米共同の滑走路復旧を実施するなど、島嶼部における作戦の持続性を向上させた。

「レゾリュート・ドラゴン23」における実動訓練(2023年10月)

「レゾリュート・ドラゴン23」における実動訓練(2023年10月)

動画アイコンQRコード動画:令和5年度国内における米海兵隊との実動訓練「レゾリュート・ドラゴン」
URL:https://youtu.be/rClkaLSKXW4

(2)海上自衛隊

海自は、伝統的に米海軍と精力的に共同訓練を実施してきており、艦艇や航空機による日米共同訓練、対潜特別訓練、掃海特別訓練、衛生特別訓練、日米衛生共同訓練を通じ、日米共同対処などの実効性や領域横断作戦能力の向上を図っている。

例えば、米海軍空母打撃群との共同訓練を着実に積み重ねるとともに、わが国周辺海域、東シナ海、南シナ海において幅広く日米共同訓練を実施し、日米同盟の抑止力・対処力を不断に強化している。また、2023年9月には、米海軍の無人水上艦と初めての共同訓練を行うとともに、陸自および米海兵隊との共同訓練や、空自および米空軍との捜索救助訓練「Rescue Flag Okinawa」など、他軍種を交えた日米共同訓練を積極的に実施し、総合的な抑止力・対処力強化に取り組んでいる。

沖縄南方で米海軍「セオドア・ルーズベルト」、「カール・ヴィンソン」空母打撃群と共同訓練を行う護衛艦「いせ」(写真中央)(2024年1月)

沖縄南方で米海軍「セオドア・ルーズベルト」、「カール・ヴィンソン」空母打撃群と共同訓練を行う護衛艦「いせ」(写真中央)(2024年1月)

動画アイコンQRコード動画:日米共同訓練Rescue Flag Okinawa
URL:https://youtu.be/2wjXvLuzOwg?si=XFaa8P4RQaUVycJT

(3)航空自衛隊

空自は、1996年以来参加している米空軍演習「レッド・フラッグ・アラスカ」や、1999年以来実施している米空軍との共同訓練「コープ・ノース」などを通じ、日米同盟の抑止力・対処力を強化している。また、米海軍や米海兵隊との対戦闘機戦闘訓練、要撃戦闘訓練、防空戦闘訓練、戦術攻撃訓練、空中給油訓練、捜索救難訓練、編隊航法訓練などの各種日米共同訓練により、日米共同対処などの実効性の向上や領域横断作戦能力の向上を図っている。

例えば、2023年度は、米軍のF-35A/B戦闘機やB-1爆撃機、B-52爆撃機を含めた訓練を実施するなど、強固な日米同盟のもと、自衛隊と米軍の即応態勢を確認し、あらゆる事態に対処する日米の強い意思と緊密な連携を内外に示した。

自衛隊と米軍は、引き続き、わが国の防衛および地域の平和と安定の確保のため平素から緊密に連携し、あらゆる事態に即応するため、万全の態勢を維持していくこととしている。

参照資料28(主な日米共同訓練の実績(2023年度))

1 機動展開前進基地作戦。敵の火力圏内において迅速に分散展開し、一時的な拠点を設置することにより前線での作戦を実行する作戦構想。