国際平和共同対処事態に際し、わが国は、国際平和支援法21に基づき、国際社会の平和および安全の確保のため、国際社会の平和と安全のために活動する諸外国の軍隊などに対して協力支援活動などを行うことができる。同法は、あらゆる事態への切れ目のない対応を可能にするという観点から、一般法として整備することにより、迅速かつ効果的に活動を行い、国際社会の平和および安全に主体的かつ積極的に寄与することができるようにしている。
KEY WORD国際平和共同対処事態
国際社会の平和および安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国連憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、わが国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの。
わが国が行う協力支援活動などの対象となる諸外国の軍隊などの活動について、次のいずれかの国連(総会または安全保障理事会)決議の存在を要件としている。
国際平和共同対処事態に際し、次の対応措置を実施することができる。
ア 協力支援活動
諸外国の軍隊などに対する物品および役務の提供(補給、輸送、修理・整備、医療、通信、空港・港湾業務、基地業務、宿泊、保管、施設の利用、訓練業務および建設)。
なお、重要影響事態安全確保法と同様、武器の提供は行わないものの、「弾薬の提供」と「戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備」を実施できる。
イ 捜索救助活動
ウ 船舶検査活動(船舶検査活動法に規定するもの)
他国の武力の行使との一体化を回避するとともに、自衛隊員の安全を確保するため、次の措置が規定されている。
国際平和協力法22は、わが国が国際連合を中心とした国際平和のための努力に積極的に寄与することを目的としている。同法は、国際連合平和維持活動(国連PKO(Peacekeeping Operations))23、国際連携平和安全活動24などに対し適切かつ迅速な協力を行うため、国際平和協力業務の実施体制を整備するとともに、これらの活動に対する物資協力のための措置などを講ずる手続などを定めている。
ア 国連PKO
国連PKOへの参加にあたっての基本方針としては、いわゆる「参加5原則」がある。
イ 国際連携平和安全活動
国際連携平和安全活動は、その性格、内容などが国連PKOと類似したものであるため、参加5原則を満たしたうえで、次のいずれかが存在する場合に参加可能である。
ア 自衛官の国連への派遣(国連PKOの司令官などの派遣)
国連の要請に応じ、国連の業務であって、国連PKOに参加する自衛隊の部隊等または外国軍隊の部隊により実施される業務の統括に関するものに従事させるため、内閣総理大臣の同意を得て、自衛官を派遣することが可能である25。
イ 大規模災害に対処する米軍等に対する物品または役務の提供
自衛隊の部隊等と共に同一の地域に所在して大規模な災害に対処する米国・オーストラリア・英国・フランス・カナダ・インド・ドイツの軍隊から応急の措置として要請があった場合は、国際平和協力業務などの実施に支障のない範囲で、物品または役務の提供が可能である。
参照III部3章3節2項(国連PKOなどへの取組)、資料12(国際平和協力活動関連法の概要比較)、資料60(自衛隊が行った国際平和協力活動など)
国際緊急援助隊法26は、海外の地域、特に開発途上にある地域における大規模な災害に対し、救助活動や医療活動などを実施する国際緊急援助隊を派遣するために必要な措置について定めている。
自衛隊の部隊等による活動については、外務大臣が特に必要があると認める場合には、防衛大臣と協議を行うこととしており、防衛大臣は、協議に基づき、自衛隊の部隊等に、救助活動、医療活動、人員または物資の輸送などを行わせることができる27。
参照III部3章3節3項(国際緊急援助活動への取組)、資料12(国際平和協力活動関連法の概要比較)、資料60(自衛隊が行った国際平和協力活動など)
21 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律
22 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律
23 国連の統括する枠組みのもと、紛争に対処して国際の平和および安全を維持することを目的として行われる活動であって、国連事務総長の要請に基づき参加する2以上の国および国連により、紛争当事者の同意などを確保した上で実施される活動。
24 国連が統括しない枠組みのもと、紛争に対処して国際の平和および安全を維持することを目的として行われる活動であって、2以上の国の連携により、紛争当時者の同意などを確保した上で実施される活動。
25 この自衛官の派遣は、派遣される自衛官が従事することとなる業務にかかる国連PKOが行われる地域の属する国および紛争当事者の当該国連PKOが行われることについての同意(紛争当事者が存在しない場合にあっては、当該国連PKOが行われる地域の属する国の同意)が当該派遣の期間を通じて安定的に維持されると認められ、かつ、当該派遣を中断する事情が生ずる見込みがないと認められる場合に限ることとしている。
26 国際緊急援助隊の派遣に関する法律
27 被災国内において、治安の状況などによる危険が存在し、国際緊急援助活動またはこれにかかる輸送を行う人員の生命、身体、当該活動にかかる機材などを防護するために武器の使用が必要と認められる場合には、国際緊急援助隊を派遣しないこととしている。したがって、被災国内で国際緊急援助活動などを行う人員の生命、身体、当該活動にかかる機材などの防護のために、当該国内において武器を携行することはない。