先進的な民生技術を取り込み、効率的な研究開発を行うため、防衛装備庁と国立研究開発法人などの研究機関との間で、研究協力や技術情報の交換などを積極的に実施している。
国内においては、統合イノベーション戦略2023(令和5年6月9日閣議決定)を踏まえ、先端技術の活用による優れた装備品の創製や効率的、効果的な研究開発を行うため、総合科学技術・イノベーション会議3(CSTI:Council for Science, Technology and Innovation)などをはじめとする関係府省庁とは平素から緊密に連携を行っている。また、同戦略を推進するために設置された統合イノベーション戦略推進会議4に積極的に参画し、関係府省庁や国立研究開発法人、産業界、大学などとの一層の連携を図っている。
また、政府内の取組として、民生分野の取組を進める関係府省庁と、防衛省とがお互いに連携することが有効である。国家安全保障戦略においても、研究開発などに関する資金や情報を政府横断的に活用するべく体制を強化するとしており、この戦略に基づいて、政府一丸で取り組んでいくことが重要である。
具体的には、AIや量子技術といった多義性を有する先端分野について、経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)などにより、国が重点的に後押しし、得られた研究開発成果は安全保障分野の強化にも円滑につなげていく。このほか、防衛省の意見を踏まえた研究開発ニーズと関係省庁が有する技術シーズを合致させることにより、総合的な防衛体制の強化への貢献が期待できる技術の開発を加速する政府横断的な仕組みを設置した。
さらに、国外においては、同盟国・同志国との技術交流や技術者同士の人的交流を引き続き積極的に進めていくとともに、様々な場を活用して意見交換などを継続し、多様な可能性を検討していくこととしている。
参照図表IV-1-2-3(国立研究開発法人などとの主な技術交流)、III部1章1節2項(国全体の防衛体制の強化)、5節(経済安全保障に関する取組)
先進的な民生技術を積極的に活用することは、将来にわたって国民の命と平和な暮らしを守るために不可欠であるのみならず、米国防省高等研究計画局(DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)による革新的な科学技術への投資が、インターネットやGPS(Global Positioning System)の誕生など民生技術を含む科学技術全体の進展に寄与してきたように、防衛分野以外でもわが国の科学技術イノベーションに寄与するものである。防衛省としては、こうした観点から関連する施策を推進していく。
具体的には、防衛分野での将来における研究開発に資することを期待し、目的指向の基礎研究を公募・委託する安全保障技術研究推進制度(競争的研究費制度)を実施している。大学や研究機関およびスタートアップ企業などから広く研究課題を公募しており、2023年度までに165件の研究課題を採択している。2024年度も、引き続き革新的・萌芽的技術の発掘・育成を推進する。
なお、本制度が対象とする基礎研究においては、研究者の自由な発想こそが革新的、独創的な知見を獲得するうえで重要であり、研究の実施にあたっては、学会などでの幅広い議論に資するよう研究成果を全て公開できるなど、研究の自由を最大限尊重することが必要である。よって、本制度では、防衛省が研究に介入したり研究成果の公表を制限することはなく、防衛省が研究成果を秘密に指定することや研究者に秘密を提供することもない。研究成果については、既に学会発表や学術雑誌への掲載などを通じて公表されている。引き続き、本制度が学問の自由と学術の健全な発展を確保していることの周知に努めることとしている。あわせて、民生における先端技術の発掘・育成には、スタートアップ企業や国内の研究機関などとの連携が必要不可欠であることから、関係者の理解と協力を得つつ、広くアカデミアを含む最先端の研究者の参画促進に取り組む。
また、2020年度から、安全保障技術研究推進制度で得られた基礎研究の成果などのなかから、有望な先進技術を早期に発掘、育成し、技術成熟度を引き上げて装備品の研究開発に適用する「先進技術の橋渡し研究」も開始している。2024年度も、将来的なゲーム・チェンジャーとなりうる装備品の創製につなげることを目指し、本研究を引き続き実施することとしている。
防衛装備庁で研究中のレールガン(電磁砲)
加えて、装備品の研究開発を加速するため、2022年度から、民間企業に研究を委託し、企業の有する先進的な技術を装備品の研究開発に使用可能なレベルまで向上させる取組として、「ゲーム・チェンジャーの早期実用化に資する取組」を開始した。
参照資料64(安全保障技術研究推進制度の2023年度新規採択研究課題)
防衛イノベーションや画期的な装備品などを生み出す機能を抜本的に強化するため、防衛装備庁に防衛イノベーション技術研究所(仮称)を創設する。そして、DARPAや国防イノベーションユニット(DIU:Defense Innovation Unit)における取組を参考に、これまでとは異なるアプローチ、手法を採用することにより、変化の早い様々な科学技術から、将来の戦い方を大きく変える革新的な機能・装備を創出するブレークスルー研究を実施する。
自衛隊の現在や将来の戦い方に直結できる分野のうち、特に政策的に緊急性・重要性の高い事業について、企業などから優れた提案を広く募りつつ、民生先端技術の取り込みも図りながら、実証を通じて早期装備化の実現に取り組んでいる。
資料:安全保障技術研究推進制度について
URL:https://www.mod.go.jp/atla/funding.html
動画:【レールガン】ATLA R&D Projects Progress in FY2023(防衛装備庁の研究開発事業)
URL:https://www.youtube.com/watch?v=EYH1CqhxbdE
資料:最先端技術の早期装備化に向けた取組
URL:https://www.mod.go.jp/j/budget/rapid_acquisition/index.html