Contents

ダイジェスト 第IV部 共通基盤の強化

防衛白書トップ > ダイジェスト 第IV部 共通基盤の強化

いわば防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤の強化

防衛生産基盤の強化

  • 現代において自衛隊は、高度な技術が適用された装備品を用いて初めて、その能力を十分に発揮し、わが国防衛の任務を全うすることが可能。優れた装備品の確保に不可欠の要素である防衛生産・技術基盤は、いわばわが国の防衛力そのものであり、その抜本的な強化が必要
  • わが国の防衛産業は装備品のライフサイクルの各段階(研究、開発、生産、維持・整備、補給、用途廃止など)を担っており、装備品と防衛産業は一体不可分。防衛産業が高度な装備品を生産し、高い可動率を確保できる能力を維持・強化していくために必要な施策を講じるための法律である防衛生産基盤強化法が成立、施行
  • 同法に基づき、防衛省は基本方針を公表。この基本方針のもと、同法に定められた施策のほか、防衛産業の活性化、強靱なサプライチェーンの構築、防衛産業保全の強化など、基盤強化のための取組を推進

進水式を迎えたもがみ型護衛艦「ゆうべつ」(2023年11月)

進水式を迎えたもがみ型護衛艦「ゆうべつ」(2023年11月)

防衛技術基盤の強化

  • 新しい戦い方に必要な装備品を取得するためには、わが国が有する技術をいかに活用していくかが極めて重要。わが国の高い技術力を基盤とした、科学技術とイノベーションの創出は、わが国の経済的・社会的発展をもたらす源泉であり、わが国の安全保障にかかわる総合的な国力の主要な要素。また、わが国が長年にわたり培ってきた官民の高い技術力を、従来の考え方にとらわれず、安全保障分野に積極的に活用していくことは、わが国の防衛体制の強化に不可欠
  • 防衛技術基盤の強化の方針を具体化し、各種の取組を防衛省として一体的かつ強力に推進する際の指針となるものとして、防衛省は、防衛技術指針2023を策定。この指針のもと、将来にわたり、技術でわが国を守り抜くことを目指し、基盤強化のための取組を推進
  • わが国の防衛にとって、航空優勢を将来にわたって確保するためには、最新鋭の優れた戦闘機を保持し続けることが不可欠。次期戦闘機については、日英伊3か国の技術を結集し、開発コストやリスクを分担しつつ、将来の航空優勢を担保する優れた戦闘機を共同開発。日英伊3か国は、効率的な協業体制の確立に不可欠な国際機関GIGO設立に関する条約に署名
  • 防衛イノベーションや画期的な装備品を生み出す機能の抜本的強化が必要。防衛装備庁に防衛イノベーション技術研究所(仮称)を創設し、米国防省高等研究計画局(DARPA)における取組などを参考に、これまでとは異なるアプローチ、手法を採用することにより、変化の早い様々な科学技術から、将来の戦い方を大きく変える革新的な機能・装備を創出するブレークスルー研究を実施

GIGO設立条約に署名する日英伊国防相(2023年12月)

GIGO設立条約に署名する日英伊国防相(2023年12月)

防衛装備庁で研究中のレールガン(電磁砲)

防衛装備庁で研究中のレールガン(電磁砲)

防衛装備・技術協力と防衛装備移転の推進

  • 防衛装備移転は、特にインド太平洋地域における平和と安定のために、力による一方的な現状変更を抑止して、わが国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略や武力の行使または武力による威嚇を受けている国への支援などのための重要な政策的手段
  • 安全保障上意義が高い防衛装備移転や国際共同開発を幅広い分野で円滑に行うため、制度の見直しについて与党WTで議論が重ねられ、2023年12月、政府は防衛装備移転三原則と運用指針を一部改正。これにより、幅広い分野の防衛装備が移転可能となったが、同時に移転にかかる審査をより一層厳格に実施
  • 2024年3月、運用指針を一部改正し、次期戦闘機にかかる完成品のわが国からパートナー国以外の国への直接移転を認めうることとするにあたって、閣議決定において、将来実際に移転をする際にも、個別の案件ごとに閣議で決定することを確認
  • 防衛装備移転や国際共同開発を含む、防衛装備・技術協力の取組の強化を通じ、相手国軍隊の能力向上や相手国との中長期にわたる関係を維持・強化。2023年度、米国とはGPIの共同開発の開始を発表、オーストラリアとは「研究、開発、試験及び評価プロジェクトに関する取決め」に署名。フィリピンに対しては、わが国から海外への完成装備品の移転としては初の案件である警戒管制レーダーの1基目および2基目をフィリピン空軍に納入

フィリピン空軍主催警戒管制レーダー1基目の引渡し式典の様子(2023年12月)

フィリピン空軍主催警戒管制レーダー1基目の引渡し式典の様子
(2023年12月)

防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化

人的基盤の強化

  • 防衛力の中核は自衛隊員。防衛力を発揮するにあたり、必要な人材を確保するとともに、全ての隊員が高い士気と誇りを持ち、個々の能力を発揮できる環境を整備すべく、人的基盤の強化を推進
  • 「防衛省・自衛隊の人的基盤強化に関する有識者検討会」の報告書などを踏まえ、部外人材も含めた多様な人材の確保や、隊員のライフサイクル全般における活躍の推進に向けた各種施策を実施
  • 募集活動・中途採用の強化、自衛隊奨学生制度の充実・強化、予備自衛官の活用、自衛官の定年年齢の引上げや退職自衛官の再任用などを推進
  • 処遇の向上、生活勤務環境の改善、再就職支援の強化、栄典・礼遇など、隊員の在職中・退職後も含めた各段階において効果的な施策を実施

令和6年能登半島地震災害派遣において活動する予備自衛官

令和6年能登半島地震災害派遣において活動する予備自衛官

ハラスメントを一切許容しない環境の構築

  • ハラスメントを一切許容しない環境の構築のため、ハラスメント案件の対応およびハラスメント防止対策の抜本的見直しを推進
  • 防衛大臣指示に基づき設置された「防衛省ハラスメント防止対策有識者会議」からの提言や特別防衛監察の結果などを踏まえ、「ハラスメント防止対策検討チーム」を設置し、相談体制や教育の見直しを含めた有効な施策を検討
  • 防衛大臣などによるハラスメント防止に関する定期的なトップメッセージの発信、ハラスメント防止教育の見直しや教育機会を利用した隊員の意識改革、懲戒処分基準の適正化・明確化、相談体制の拡充や窓口の再周知などを図り、ハラスメントを一切許容しない環境を構築

ワークライフバランス・女性の活躍のさらなる推進

  • 各種事態に持続的に対応できる態勢を確保するため、職員が心身ともに健全な状態で、高い士気と誇りを持ちながら、その能力を十分に発揮できる環境を整えることが必要
  • 女性職員活躍とワークライフバランス推進のため、テレワークやペーパーレス化の推進、勤務時間管理の徹底、男性育休の取得促進、あらゆる職員が働きやすい職場環境の確立などを推進
  • 災害派遣など迅速な対応を求められる場合に、自衛隊の駐屯地などで職員のこどもを一時的に預かる緊急登庁支援の施策を推進
  • 女性の採用・登用の拡大や、女性自衛官の配置制限の解除に加え、女性の活躍を支える教育基盤の整備や女性自衛官の増勢を見据えた隊舎・艦艇などにおける女性用区画の整備などを推進

令和6年能登半島地震の災害派遣に従事する職員に対する緊急登庁支援

令和6年能登半島地震の災害派遣に従事する職員に対する緊急登庁支援

衛生機能の変革

  • 自衛隊衛生は、隊員の壮健性の維持を重視するだけでなく、持続性・強靱性の観点から、隊員の生命・身体を救う組織に変革する必要
  • 戦傷医療対処能力の向上のため、①第一線から最終後送先までのシームレスな医療・後送態勢の強化、②衛生にかかる統合運用態勢の強化、③防衛医科大学校の運営の抜本的改革を3本柱とし、衛生機能の強化を推進
  • 「防衛省・自衛隊の戦傷医療における輸血に関する有識者検討会」の提言を踏まえ、自衛隊において血液製剤を自律的に確保・備蓄する態勢を構築
  • 2024年度に「外傷・熱傷・事態対処医療センター」を新設するなど、戦傷医療対処にあたる医官などにとって臨床の現場となる防衛医科大学校の機能を強化
  • 国際緊急援助活動としての海外被災地での医療提供や、医療分野での能力構築支援など、様々な国際協力を実施

令和5年度自衛隊統合演習「05JX」における統合後方補給・衛生訓練(2023年11月)

令和5年度自衛隊統合演習「05JX」における統合後方補給・衛生訓練
(2023年11月)

政策立案機能の強化

  • 厳しさ、複雑さ、スピード感を増す戦略環境に対応するためには、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案が必要
  • 有識者から政策的な助言を得るための会議体として、「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」を開催し、防衛力の抜本的強化などについて率直な議論を実施
  • 関係省庁や民間の研究機関、防衛産業を中核とした企業との連携強化に加え、防衛研究所をはじめとする防衛省・自衛隊の研究体制の見直し・強化など、知的基盤の強化を推進

防衛研究所主催の政策シミュレーション国際会議「コネクションズ・ジャパン2023/24」(2024年1月)

防衛研究所主催の政策シミュレーション国際会議
「コネクションズ・ジャパン2023/24」(2024年1月)

訓練・演習に関する諸施策

訓練・演習に関する取組

  • 防衛省・自衛隊が、わが国の防衛の任務を果たすためには、平素から防衛力の中核たる各隊員および各部隊が常に高い練度を維持、向上させることが必須であり、高い能力・練度こそが、わが国の抑止力・対処力の根幹
  • 防衛省・自衛隊の、そして米国と共同での抑止力・対処力を強化するため、様々なハイレベルの訓練・演習を積極的に実施
  • 自国の平和を維持するためには、自国を取り巻く安全保障環境の安定化が不可欠との認識のもと、FOIPの実現に向け、広くインド太平洋地域において同盟国・同志国などとの共同訓練を積極的に推進

令和5年度自衛隊統合演習「05JX」(2023年11月)

令和5年度自衛隊統合演習「05JX」(2023年11月)

各種訓練環境の整備や安全管理

  • 訓練環境をより一層充実させていくため、国内外での訓練実施基盤の拡充を推進するとともに、他国との共同訓練の機会を活用
  • 防衛省・自衛隊は、平素から安全管理を徹底

国内における日仏空軍種初の共同訓練(2023年7月)

国内における日仏空軍種初の共同訓練(2023年7月)

地域社会や環境との共生に関する取組

地域社会との調和にかかる施策

  • 防衛省・自衛隊の様々な活動は、国民一人一人、そして、地方公共団体などの理解と協力があってはじめて可能となるものであり、地域社会・国民と自衛隊相互の信頼をより一層深めていく必要
  • わが国の安全を確保する上で極めて重要な要素である在日米軍の安定的な駐留のためにも、周辺の地方公共団体などの理解と協力を得ることが不可欠

茨城県小美玉市における防衛セミナーの様子(2023年11月)

茨城県小美玉市における防衛セミナーの様子(2023年11月)

気候変動・環境問題への対応

  • 防衛省・自衛隊は、政府の一員として気候変動や環境問題の各種課題に対応し、解決に貢献するとともに、自衛隊施設や米軍施設・区域と周辺地域の共生についてより一層重点を置いた施策を推進
  • 令和6年通常国会において防衛・風力発電調整法案が可決・成立。安全保障と再生可能エネルギーの両立を図るための施策を推進
  • PFOSを含有する泡消火薬剤などについて、適切に対応

情報発信や公文書管理・情報公開など

  • 国民や諸外国の信頼と協力を得るため、防衛省・自衛隊の活動について、分かりやすい広報活動を様々な方法で、より積極的に実施するとともに、行政文書を適切に管理し、情報公開請求に適切に対応

自衛隊記念日記念行事の一環として実施している自衛隊音楽まつり(2023年11月)

自衛隊記念日記念行事の一環として実施している
自衛隊音楽まつり(2023年11月)