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第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチ

2 防衛装備・技術協力

同盟の技術的優位性、相互運用性、即応性、さらには継戦能力を確保するため、先端技術に関する共同分析や共同研究、装備品の共同開発・生産、相互互換性の向上、各種ネットワークの共有や強化、米国製装備品の国内における生産・整備能力の拡充、サプライチェーンの強化にかかる取組など、防衛装備・技術協力を一層強化することとしている。わが国は、日米安保条約や日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基づく相互協力の原則を踏まえ、技術基盤・産業基盤の維持に留意しつつ、米国との装備・技術面での協力を積極的に進めることとしている。

わが国は、日米の技術協力体制の進展と技術水準の向上といった状況を踏まえ、米国に対しては武器輸出三原則などによらず武器技術を供与することとし、1983年、対米武器技術供与取極(とりきめ)1を締結、2006年には、これに代わる対米武器・武器技術供与取極2を締結した。こうした枠組みのもと、弾道ミサイル防衛共同技術研究に関連する武器技術など20件の武器・武器技術の対米供与を決定している。加えて、2022年1月の日米「2+2」にて「共同研究、共同開発、共同生産、及び共同維持並びに試験及び評価に関する協力にかかる枠組みに関する交換公文」が締結された。わが国は、この交換公文に基づき、新興技術に関する米国との協力を前進させていくこととしている。また、日米両国は、日米装備・技術定期協議(S&TF:Systems and Technology Forum)などで協議を行い、合意された具体的なプロジェクトについて共同研究開発などを行ってきた。2023年9月には、日米両国の技術政策を重点的に議論する防衛装備庁・米国防省(研究・工学担当)定期協議を新たに設置し、第1回次官級会議を開催した。

防衛装備庁・米国防省(研究・工学担当)定期協議実施要領の署名(2023年9月)

防衛装備庁・米国防省(研究・工学担当)定期協議実施要領の署名
(2023年9月)

さらに、わが国は、2016年6月、米国との相互防衛調達取極3を締結し、同月の日米防衛相会談において、両閣僚の間で、相互の防衛調達に関する覚書4(RDP MOU(Reciprocal Defense Procurement Memorandum of Understanding))が署名された。これは、日米の防衛当局による装備品の調達に関して、相互主義に基づく措置(相手国企業への応札に必要な情報の提供、提出した企業情報の保全、相手国企業に対する参入規制の免除など)を促進するものである。なお、2021年5月、同取極や覚書の有効期限が延長されている。

2023年1月の「2+2」や日米防衛相会談では、①共同研究・開発の迅速化5や②サプライチェーン協力の強化に係る枠組み6に署名し、③FMS(Foreign Military Sales)(有償援助)調達の合理化を実現する枠組みの相当な進捗を確認している。

2024年4月に行われた日米首脳会談において、日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議(DICAS(ダイキャス):Forum on Defense Industrial Cooperation, Acquisition and Sustainment)を開催することが発表された。これは、日米装備・技術定期協議(S&TF)を基礎とし、それを発展的に改編するものである。DICASは、日米両国の防衛産業における生産状況を踏まえながら、同協議での議論を通じて共同開発、共同生産および共同維持整備の連携する優先分野を特定し、互恵的かつ長期的に重要な能力の需要を満たすことを目的としている。

また、日米共通装備品(F-35戦闘機やオスプレイ)の生産・維持整備については、IV部1章3節3項(米国との防衛装備・技術協力関係の深化)のとおりである。

参照IV部1章3節1項(防衛装備移転三原則にかかわる制度)IV部1章3節3項(米国との防衛装備・技術協力関係の深化)資料29(日米共同研究・開発プロジェクト)

1 日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基づくアメリカ合衆国に対する武器技術の供与に関する交換公文

2 日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基づくアメリカ合衆国に対する武器及び武器技術の供与に関する交換公文

3 相互の防衛調達に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の交換公文

4 相互の防衛調達に関するアメリカ合衆国国防省と日本国防衛省との間の覚書

5 日本国防衛省とアメリカ合衆国国防省との間の研究、開発、試験及び評価プロジェクトに関する了解覚書

6 日本国防衛省とアメリカ合衆国国防省との間の防衛装備品等の供給の安定化に係る取決め