わが国は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しており、防衛省・自衛隊の対応が求められる事態が増加、かつ長期化しつつある。一方、人口減少と少子化が急速に進展し、防衛力の中核である自衛隊員を確保することがこれまで以上に困難となっている。また、社会構造の大きな変化により、各種任務を担う防衛省・自衛隊の職員は、男女ともに、育児・介護などの事情のため時間や移動に制約のある者が増加することが想定される。
このような厳しい状況のなか、各種事態に持続的に対応できる態勢を確保するためには、職員が心身ともに健全な状態で、高い士気と誇りを持ちながら、その能力を十分に発揮しうるような環境を整えることが必要である。このため、防衛省・自衛隊は、国家防衛戦略などに基づき、ワークライフバランスや女性職員の活躍を推進していく。
防衛省・自衛隊は、「防衛省における女性職員活躍とワークライフバランス推進のための取組計画(取組計画)」を2015年に策定し、各種取組を行ってきた。2021年には、①ワークライフバランス推進のための働き方改革、②女性の活躍推進のための改革、を2つの柱とする新たな取組計画を策定し、2023年3月には、①テレワークの推進、②ペーパーレス化の推進、③勤務時間管理の徹底、④男性育休の取得促進、⑤あらゆる職員が働きやすい職場環境の確立、の5つを重点的に進める旨の改定を行い、取組を一層推進している。
働き方改革を推進するにあたっては、特に管理職員などの働き方に対する価値観や意識の改革を行う必要がある。防衛省・自衛隊においては、働き方改革やワークライフバランスに関する意識啓発のため、トップメッセージの発出、セミナーや講演会などを実施している。また、育児や介護などで時間や移動に制約がある職員が増えていくなか、全ての職員が能力を十分に発揮して活躍できるよう、ワークライフバランス確保のため、長時間労働の是正や休暇の取得の促進、テレワーク勤務の推進などに努めている。
さらに、管理職のマネジメント能力の向上に向けた「マネジメント改革」のための取組も実施している。
資料:女性職員活躍とワークライフバランスの推進
URL:https://www.mod.go.jp/j/profile/worklife/index.html
ワークライフバランス推進に向けた取組は、職場の実情に合わせ、職員が自ら職場環境の改善策を考えることが実効性のある取組や風土作りにつながる。そのような考えから、「防衛省における働き方改革推進のための取組コンテスト」を実施し、特に優れた取組について表彰を行うとともに、防衛省内に紹介し、他の職場の働き方改革の一助としている。
業務の繁閑の事情や、育児・介護など個人の抱える時間制約などの事情を踏まえ、防衛省・自衛隊においては、早出遅出勤務やフレックスタイム制を導入し、柔軟に勤務時間を選択できるようにしてきた。2023年4月には、フレックスタイム制におけるコアタイムの短縮など、さらなる柔軟化を図っている。
防衛省・自衛隊では、職務の特殊性を考慮しつつ、テレワークの実施が不可能な業務を除き、全ての機関においてテレワークが実施可能となっている。引き続き、端末の整備とともに資料の電子化などを含めたデジタル化を推進し、テレワークにおいて業務が完結できるよう業務プロセスの確立を推進していくこととしている。
勤務時間管理のシステム化や超過勤務の実態調査などを通じ、職員の心身の健康と福祉に害を及ぼすおそれがある、長時間労働の是正を推進している。
防衛省・自衛隊においては、任期付の職員を採用し、育児休業などを取得する職員のための代替要員を確保するなど、職員が育児・介護などと仕事を両立するための様々な制度を整備している。特に、男性職員の家庭生活への参画を推進するため、男性職員の育児休業などの取得促進に取り組んでおり、こどもが生まれた全ての男性職員が1か月以上を目途に育児に伴う休暇・休業を取得できることを目指している。
また、育児・介護に関する制度の説明、ロールモデルの紹介、管理職員や人事担当部局がきめ細かく職員の育児にかかる状況を把握するため、「育児シート」を作成するなどの取組により、職業生活と家庭生活を両立しやすい環境整備を進めている。なお、育児・介護により中途退職した職員を再度採用できる制度も整備されている。
職員がこどもの保育などに不安を抱くことなく、任務に専念できる環境を整えておくことは、防衛省・自衛隊の常時即応態勢を維持する上で重要である。防衛省・自衛隊においては、全国8か所の駐屯地などに庁内託児施設を整備してきた。また、災害派遣などの迅速な対応を求められる場面において、自衛隊の駐屯地などで職員のこどもを一時的に預かる緊急登庁支援の施策を推進している。
令和6年能登半島地震の災害派遣に従事する職員に対する緊急登庁支援