防衛研究所は、国立の安全保障に関する学術研究・教育機関という特色を活かし、主に安全保障、戦史に関する政策指向の調査研究や政策立案部門との連携促進を目的とする政策シミュレーションを行っている。また、諸外国の国防大学に相当する教育機関として、防衛省・自衛隊の幹部、他省庁の職員などへの教育を行うほか、公文書管理法1に基づく歴史資料等保有施設として、多数の戦史史料の管理、公開を行っており、わが国最大の戦史研究センターとしての役割も担っている。
防衛力整備計画において、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案の機能強化を支援するための研究体制の見直しや、知的基盤としての機能強化が示されたことを踏まえ、重要性を増すサイバー安全保障分野での研究ニーズへの対応として、2023年4月、防衛研究所にサイバー安全保障研究室を新設した。
さらに、防衛研究所は、防衛交流・安全保障対話の一翼を担う機関として国際交流も重視しており、各国との信頼関係の増進による安全保障への貢献と調査研究、教育の質的向上を主目的に、諸外国の国防大学・安全保障研究機関などとの研究交流などを行っている。具体的には、研究者の相互派遣による講義、研究会の実施や国際会議への参加、諸外国の政府・軍高官の訪問受入れや海外の研究者・専門家の招へいなどがあり、こうした交流を通じ、防衛研究所の調査研究の質的向上と知的ネットワークの強化を図っている。
2023年度は、「核時代の新たな地平」をテーマとして、安全保障国際シンポジウムを開催したほか、「冷戦期の日本の安全保障と朝鮮半島」をテーマに、戦争史研究国際フォーラムを開催した。また、「インド太平洋地域の安全保障環境に対応した政策シミュレーション技法の発展に向けて」をテーマに、政策シミュレーション国際会議「コネクションズ・ジャパン2023/24」を開催した。こうした国際会議は、安全保障の様々な課題について、最新の知見や国内外の議論を紹介する機会として開催したものであり、今後も政策課題への対応や知的基盤強化に資するよう時宜にかなったテーマを取り上げていく。
防衛研究所主催の政策シミュレーション国際会議
「コネクションズ・ジャパン2023/24」(2024年1月)
加えて、主な研究成果をホームページ上で公開しており、これまで毎年刊行してきた『中国安全保障レポート』や『安全保障戦略研究』を含む、各種刊行物を発行するなど、積極的に情報発信を行っている。このほか、防衛研究所の研究者は研究成果の一端を著書や論文、論考として多数発表しており、それらの中には優れた研究業績に与えられる賞を受賞したものもある。