Contents

第IV部 共通基盤の強化

2 予備自衛官などの活用

有事などの際は、事態の推移に応じ、必要な自衛官の所要数を早急に満たさなければならない。この所要数を迅速かつ計画的に確保するため、わが国では予備自衛官、即応予備自衛官および予備自衛官補の3つの制度4を設けている。

予備自衛官は、防衛招集命令などを受けて自衛官となり、後方支援、基地警備などの要員として任務につく。即応予備自衛官は、防衛招集命令などを受けて自衛官となり、第一線部隊の一員として、現職自衛官とともに任務につく。また、予備自衛官補は、自衛官未経験者などから採用され、教育訓練を修了した後、予備自衛官として任用される。

これまで地震や台風などの大規模災害、新型コロナウイルス感染症の際に予備自衛官および即応予備自衛官を招集している。令和6年能登半島地震災害派遣においては、医師または看護師の資格を持つ予備自衛官および即応予備自衛官を招集し、被災地において、衛生支援(巡回診療)の活動や生活支援(物資輸送)の活動にそれぞれ従事した。

令和6年能登半島地震災害派遣において活動する予備自衛官

令和6年能登半島地震災害派遣において活動する予備自衛官

予備自衛官などは、平素はそれぞれの職業などについているため、定期的な訓練などへの参加には、雇用企業などの理解と協力が不可欠である。

このため、防衛省は、年間30日の訓練が求められる即応予備自衛官が、安心して訓練などに参加できるよう必要な措置を行っている雇用企業などに対し、その負担を考慮し、「即応予備自衛官雇用企業給付金」を支給している。

また、予備自衛官または即応予備自衛官が、①防衛出動、国民保護等派遣、災害派遣などにおいて招集に応じた場合や、②招集中の公務上の負傷などにより本業を離れざるを得なくなった場合、その職務に対する理解と協力の確保に資するため、雇用企業などに対し、「雇用企業協力確保給付金」を支給することとしている。

さらに、自衛官経験のない者が、予備自衛官補を経て予備自衛官として所定の教育訓練を終え、即応予備自衛官に任用された場合に、当該即応予備自衛官が安心して教育訓練に参加できるよう必要な措置を行った雇用企業などに対し、「即応予備自衛官育成協力企業給付金」を支給することとしている。

防衛力整備計画は、作戦環境の変化や自衛隊の任務が多様化するなかで、予備自衛官などが常備自衛官を効果的に補完するため、自衛官未経験者からの採用の拡大や年齢制限、訓練期間などの現行の予備自衛官等制度の見直しを行うこととしている。この見直しの一環として、2023年4月から、予備自衛官の一部の技能区分を対象に継続任用可能な年齢の上限を試行的に廃止し、2024年1月には、自衛官未経験者などを採用する予備自衛官補(一般)の採用の年齢要件を18歳以上34歳未満から18歳以上52歳未満に緩和した。また、予備自衛官が制度上可能な年齢の上限まで任用可能にすることや、予備自衛官補の教育訓練の修了期限を延長できる年数を拡大した。引き続き、現行の予備自衛官等制度の見直しを進め、予備自衛官などの充足率向上を図っていくこととしている。

そのほか、割愛5により民間部門に再就職する航空機操縦士を予備自衛官として任用するなど、幅広い分野で予備自衛官の活用を進めている。

参照図表IV-2-1-4(予備自衛官などの制度の概要)

図表IV-2-1-4 予備自衛官などの制度の概要

動画アイコンQRコード資料:予備自衛官等制度の概要
URL:https://www.mod.go.jp/gsdf/reserve/

4 諸外国においても、予備役制度を設けている。

5 自衛隊操縦士の割愛は、最前線で活躍する若手の操縦士が民間航空会社などへ無秩序に流出することを防止するとともに、一定年齢以上の操縦士を民間航空会社などで活用する制度であり、わが国の航空業界などの発展という観点からも意義がある。