Contents

第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

第3節 サイバー領域をめぐる動向

1 サイバー空間と安全保障

インターネットは、様々なサービスやコミュニティが形成され、新たな社会領域(サイバー空間)として重要性を増している。このため、サイバー空間上の情報資産やネットワークを侵害するサイバー攻撃は、社会に深刻な影響を及ぼすことができるため、安全保障にとって現実の脅威となっている。

サイバー攻撃の種類は、不正アクセス、マルウェア(不正プログラム)による情報流出や機能妨害、情報の改ざん・窃取、大量のデータの同時送信による機能妨害のほか、電力システムや医療システムなど重要インフラのシステムダウンや乗っ取りなどがあげられる。また、AIを利用したサイバー攻撃の可能性も指摘されるなど、攻撃手法は高度化、巧妙化している。

軍隊にとっても、サイバー空間は、指揮中枢から末端部隊に至る指揮統制のための基盤であり、サイバー空間への依存度が増大している。サイバー攻撃は、攻撃主体の特定や被害の把握が容易ではないことから、敵の軍事活動を低コストで妨害できる非対称な攻撃手段として認識されており、多くの国がサイバー攻撃能力を開発しているとみられる。