インド太平洋地域における多国間の枠組みについては、拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)、ASEAN地域フォーラム17(ARF)をはじめとした取組が進展しており、地域の安全保障分野にかかる議論や協力・交流の重要な基盤となっている。わが国としては、そうした枠組みなどを重視して域内諸国間の協力・信頼関係の強化に貢献している。
参照資料53(最近の多国間安全保障対話の主要実績(インド太平洋地域・2020年度以降))、資料54(防衛省主催による多国間安全保障対話)、資料55(その他の多国間安全保障対話など)
ア ADMMプラスのもとでの取組
ASEANにおいては、域内における防衛当局間の閣僚会合であるASEAN国防相会議(ADMM)のほか、わが国を含めASEAN域外国8か国18(いわゆる「プラス国」)を加えたADMMプラスが開催されている。
ADMMプラスは、全てのASEAN加盟国とプラス国の防衛担当大臣が一堂に会し、地域や国際社会における安全保障上の課題や防衛協力・交流などについて議論を行う極めて重要な枠組みであり、防衛省・自衛隊も積極的に参加している。
2023年11月、宮澤防衛副大臣(当時)は、インドネシアで開催された第10回ADMMプラスに出席した。会議では、ロシアによるウクライナ侵略や北朝鮮による弾道ミサイルの発射、東シナ海・南シナ海における力による一方的な現状変更やその試みなどを強く非難するとともに、ミャンマー情勢の平和的解決に向けた協力や自然災害、気候変動がもたらす諸課題、国際テロリズムなど国境を越える課題に対する協力の重要性について発信した。また、ASEANの中心性・一体性を支持し、ADMMプラスの各種取組を支えていくとともに、FOIPおよびFOIPと本質的な原則を共有する、「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」の実現に尽力する意思を表明した。さらに、2024年から2027年までの間、日フィリピンが共同議長に就任する海洋安全保障EWG(Experts' Working Group)19を通じて、力や威圧ではなく、法の支配に基づく海洋秩序を堅持する意思を表明した。そのほか、今回のADMMプラスにおいて、女性・平和・安全保障(WPS)に関する共同声明が採択されたことを歓迎し、わが国としてもWPSアジェンダを引き続き重視し、積極的に取り組んでいく意思を表明した。
ADMMプラスは、閣僚会合のもとに、①高級事務レベル会合(ADSOM:ASEAN Defence Senior Officials' Meeting-Plus)プラス、②ADSOMプラスWG、③専門家会合(EWG)が設置されている。わが国は、第4期(2021年から2024年)にベトナムとPKO EWGの共同議長を務め、2023年9月に任期の集大成として、ベトナムで国連平和維持活動要員候補者能力評価事業を開催、同年12月には、東京において今期最後の会合とWPSセミナーを開催し、共同議長職をブルネイ・中国に引き継いだ。
参照図表III-3-1-5(拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)の組織図および概要)
イ ASEAN・ダイレクト・コミュニケーションズ・インフラストラクチャー(ADI)
ASEAN・ダイレクト・コミュニケーションズ・インフラストラクチャー(ADI:ASEAN Direct Communications Infrastructure)は、緊急時を含め、ASEAN各国の防衛担当大臣間でのコミュニケーションを図るための常設のホットラインであり、プラス国にもその利用を拡大している。
2021年12月、わが国は、ADIへの加入を表明し、2023年3月、プラス国の中で初めてADIが開通した国となった。防衛省・自衛隊は、ADIが地域の信頼醸成や危機管理などに有用であることから、これを活用し、ASEANとの間で、より緊密なコミュニケーションを図り、共に地域の平和と安定により積極的に貢献していく考えである。
ウ ASEAN地域フォーラム(ARF)
外交当局を中心に取り組んでいるARFについても、近年、災害救援活動、海洋安全保障、平和維持・平和構築といった非伝統的安全保障分野において、具体的な取組20が積極的に進められており、防衛省・自衛隊としても積極的に貢献している。
エ 防衛省・自衛隊が主催している多国間安全保障対話
(ア) 日ASEAN防衛担当大臣会合
防衛省・自衛隊は、ASEAN諸国との二国間・多国間の関係強化を図るため、2014年以降、ADMMプラスにあわせて、日ASEAN防衛担当大臣会合を実施している。
2023年11月、木原防衛大臣は、インドネシアで開催された第8回日ASEAN防衛担当大臣会合にオンライン形式で参加(現地には、宮澤防衛副大臣(当時)が参加)し、2023年が日ASEAN友好協力50周年であることも踏まえ、「日ASEAN防衛協力の軌跡と展望」をテーマに、日ASEAN防衛協力のさらなる強化に向け、意見交換を行った。
第8回日ASEAN防衛担当大臣会合にオンライン参加する木原防衛大臣
(2023年11月)
同会合において、木原防衛大臣は、AOIPとFOIPは、開放性、透明性、ルールに基づく枠組みなど本質的な原則を共有していることを確認するとともに、日ASEANの防衛協力を新たな段階に進めるべく、「防衛協力強化のための日ASEAN大臣イニシアティヴ(JASMINE(Japan-ASEAN Ministerial Initiative for Enhanced Defense Cooperation):ジャスミン)」を提示し、ASEAN各国の大臣から歓迎の意が示された。
(イ)日ASEAN防衛当局次官級会合
日ASEAN間の次官級の人脈構築を通じた二国間・多国間の関係強化を図るため、2009年以降、防衛省の主催により日ASEAN防衛当局次官級会合を開催している。2020年以降、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い中断していたが、2023年3月に第12回会合を約4年ぶりに東京で開催した。
2024年1月、東京で開催した第13回会合21では、第8回日ASEAN防衛担当大臣会合で木原防衛大臣が提示した「ジャスミン」について各国防衛当局次官級で確認し、新たな取組の実施に向けた議論を行った。ASEAN各国からは、これを支持する旨が表明され、本イニシアティヴをさらに推進するための提案を受けた。また、わが国とASEANの防衛協力を新たな段階へと進め、より一層地域の平和と安定に貢献していくことで一致した。
(ウ) 日ASEAN防衛協力の指針
①ビエンチャン・ビジョン2.0
2016年の日ASEAN防衛担当大臣会合において、日ASEAN防衛協力の指針である「ビエンチャン・ビジョン」を提示し、2019年には、これをアップデートした「ビエンチャン・ビジョン2.0」を提示した。
「ビエンチャン・ビジョン2.0」は、ASEAN全体への防衛協力の方向性について、透明性をもって、重点分野の全体像を示したものであり、協力の目的・方向性・手段といった基本的な骨格は従来のものを踏襲しつつ、日ASEAN防衛協力にかかる実施3原則として、①心と心の協力、②きめ細やかで息の長い協力、③対等で開かれた協力、を掲げた。また、ASEANの中心性・一体性・強靱性への貢献や、AOIPとFOIPとのシナジーを追求する視点を新機軸として導入している。
このビジョンに基づき、これまで、HA/DRに関する日ASEAN招へいプログラム、海洋国際法セミナー、日ASEAN乗艦協力プログラム、プロフェッショナル・エアマンシップ・プログラム22、日ASEANサイバーセキュリティ能力構築支援などを通じ、実践的な協力を積み重ねてきた。
2023年8月に実施した日ASEAN乗艦協力プログラムでは、護衛艦「いずも」に乗艦したASEAN各国海軍士官に対し、各種セミナーや参加国海軍士官などによる海洋安全保障に関する発表などを行った23。また、同年11月、ASEAN諸国からサイバーセキュリティ要員を招へいし、サイバーセキュリティに関する実習などを実施するとともに、サイバー国際法セミナーを実施した24。
②ジャスミン
2023年11月、第8回日ASEAN防衛担当大臣会合において、木原防衛大臣は、日ASEANの防衛分野における協力関係を新たな段階へと進めるため、新たに「ジャスミン」を提示した。
「ジャスミン」は、現下の安全保障環境を踏まえたうえで、「ビエンチャン・ビジョン2.0」の精神に則り、日本がASEANと共有しているインド太平洋地域の将来像25を実現すべく、共に進めたい具体的な防衛協力の内容を示したものであり、①日ASEANで力や威圧によるいかなる一方的な現状変更も許容しない安全保障環境を創出、②日ASEAN防衛協力の継続と拡充、③日ASEAN防衛関係者のさらなる友情と機会の追求、④ASEAN・日本・太平洋島嶼国の連携の支持、を4つの柱とする。
その具体的取組として、日ASEAN間での宇宙領域における法の支配と安全保障に関するセミナーの初開催、海と空における信頼醸成や状況把握能力の向上に向けたより一層の支援、政府安全保障能力強化支援(OSA)と防衛装備移転、能力構築支援など既存のプロジェクトとのハード・ソフト両面での相乗効果の追求、乗艦協力プログラムなどを活用したASEAN諸国・日本・太平洋島嶼国の連携、WPSに関する新たな日ASEAN能力構築支援プログラムの立ち上げなどが提案・表明された。
参照資料56(ビエンチャン・ビジョン2.0)、資料57(防衛協力強化のための日ASEAN大臣イニシアティヴ(ジャスミン))
ア 南太平洋国防大臣会合(SPDMM:South Pacific Defense Ministers' Meeting)
SPDMMは、軍を保有する太平洋島嶼国の3か国(トンガ、パプアニューギニア、フィジー)を含む7か国26の国防担当大臣などが集まる、太平洋島嶼国地域の安全保障にとって重要な枠組であり、わが国は2022年からオブザーバー参加している。
2023年12月に開催された第8回会合では、気候変動やIUU漁業、サイバー空間における脅威などの伝統的・非伝統的安全保障上の課題に加え、戦略的競争が南太平洋の安定に与える影響について議論が行われた。
イ 防衛省・自衛隊が主催している多国間安全保障対話など
(ア) 日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD)
地域の安全保障課題に対する日本と太平洋島嶼国、パートナー国との連携強化、防衛・安全保障協力のさらなる推進を図るため、2021年以降、防衛省の主催により、太平洋島嶼国および地域のパートナー国を招き、JPIDDを開催している。2021年の第1回会合は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴いオンライン形式での開催であったが、2024年3月、木原防衛大臣は、対面形式としては初となる第2回会合を東京にて開催した。
第2回日・太平洋島嶼国国防大臣会合(2024年3月)
第2回会合では、共通の安全保障課題やそれらに対する各国の取組などについて幅広く意見交換を行うとともに、今後の太平洋島嶼国地域における協力・連携のあり方について、活発な議論がなされた。同会合において、木原防衛大臣は、今後の地域における協力の方向性として、「太平洋島嶼国地域における一体となった安全保障の取組のための協力コンセプト」を提示し、参加国からは本コンセプトに対する歓迎の意が示された。
(イ)太平洋島嶼国地域における一体となった安全保障保障の取組のための協力コンセプト
2024年3月の第2回JPIDDにおいて、木原防衛大臣は、太平洋島嶼国地域における防衛・安全保障分野の協力をさらに推進するうえで、わが国が重視する三つの原則、二つの連携を合わせた「5点の協力コンセプト」を提示した。
三つの原則は、①太平洋島嶼国の中心性、一体性、オーナーシップの尊重、②対等で相互に恩恵をもたらし協力し合う関係の強化、③太平洋島嶼国・日本・ASEANの連携の支持、であり、二つの連携は、①JPIDDとSPDMMとの連携の強化、②JPIDDと「太平洋・島サミット(PALM)」との連携の強化、である。このコンセプトに基づき、防衛省・自衛隊は、太平洋島嶼国地域における防衛・安全保障協力をさらに推進することとしている。
ア 民間機関などが主催する国際会議
安全保障分野においては、政府間の国際会議だけではなく、政府関係者、学者、ジャーナリストなどが参加する国際会議も民間機関などの主催により開催され、中長期的な安全保障上の課題の共有や意見交換などが行われている。
主な国際会議としては、IISS(The International Institute for Strategic Studies)(英国国際戦略研究所)が主催するIISSアジア安全保障会議27(シャングリラ会合)やIISS地域安全保障サミット28(マナーマ対話)、欧米における安全保障会議の中でも最も権威ある会議の一つである、ミュンヘン安全保障会議29があり、防衛省から、これらの会議に、防衛大臣などが積極的に参加し、各国の国防大臣などとの会談や本会合におけるスピーチを行うことで、各国ハイレベルとの信頼醸成・認識共有や、積極的なメッセージの発信を図っている。
2023年6月、浜田防衛大臣(当時)は、第20回シャングリラ会合に出席しスピーチを行った。スピーチでは、まず、ロシアによるウクライナ侵略について触れ、その教訓として、衝突を未然に防ぐことの重要性や、海における法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を指摘した。また、力や威圧による一方的な現状変更やその試みを抑止するため、国際社会が結束すべきであることを主張した。
インド太平洋地域、特に東シナ海や南シナ海に関しては、力や威圧による一方的な現状変更やその試みが進展していることを指摘したうえで、衝突を未然に防ぎ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守るため、わが国は国家安全保障戦略などに基づく防衛力の抜本的強化や同盟国・同志国との連携強化など様々な取組を推進していることを説明した。
さらに、わが国と同盟国・同志国などによる地域の抑止力の向上は、力に屈する必要のない強固な立場を各国にもたらし、対話によって利益や意見の相違を解決する外交的取組の地歩を固めることにも繋がると主張し、ASEANが主導する東アジア首脳会議やアジア地域フォーラム、ADMMプラスなど、この地域に存在する多層的な協力枠組みがもたらす対話の機会を今後も重視しつつ、各国と協力して、「協力・調和」の世界へと向かう時代を創っていきたい、というメッセージを発信した。
イ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2023年8月、米インド太平洋軍およびフィジー共和国軍が共催するインド太平洋参謀総長等会議(CHOD)、フィジー共和国軍が主催する南太平洋参謀総長等会議に参加し、インド太平洋地域の情勢や安全保障上の課題について認識を共有した。また、同月、パラオで開催された太平洋安全保障会議にオンラインで参加し、同地域における安全保障への自衛隊のコミットを示した。さらに、同年11月、米インド太平洋軍主催インド太平洋参謀総長等オンライン会議に参加し、インド太平洋地域の安全保障上の課題、法の支配や多国間連携の重要性について議論した。
インド太平洋参謀総長等会議でスピーチする吉田統幕長(2023年8月)
森下陸幕長は、2023年5月にハワイで開催された太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC)2023、同年8月に豪陸軍主催陸軍参謀長シンポジウム(CAS)に参加した。同年9月には、インドで開催されたインド太平洋地域陸軍参謀総長等会議(IPACC)に参加し、同盟国・同志国が連携して同地域の不安定化を抑止するため、関係国のネットワークを構築する必要性について認識を共有した。さらに、同年12月、米太平洋陸軍と共催でランド・フォーシーズ・サミット(LFS)を開催し、FOIPの実現のため、同盟国・同志国間の重層的な陸軍種の防衛協力・交流を推進することで一致した。
太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC)2023で討議に参加する森下陸幕長
(2023年5月)
酒井海幕長は、2023年5月、シンガポール主催国際海洋防衛装備展示会(IMDEX Asia 2023)の国際海洋安全保障会議に参加した。海洋安全保障における共通の課題などについて、各国海軍参謀長などと議論するとともに、「安全な海洋」をテーマにスピーチを行い、自由で開かれた海洋の重要性を参加各国と共有した。同年6月の米太平洋艦隊主催海軍種多国間テレビ会談では、太平洋島嶼地域で横行するIUU漁業が安全保障上の脅威であることを再確認するとともに、規制のための積極的な支援を表明し、各国海軍参謀長などに対し、IUU漁業撲滅に向けた連携の強化を呼びかけた。同年9月の米海軍主催国際シーパワーシンポジウム(ISS)、同年11月の豪海軍主催インド太平洋シーパワー会議(IP23)では、合法的な海洋利用と各国の主権や権益保護のための多国間連携の必要性などについて議論した。さらに、2024年2月には、ミュンヘン安全保障会議に参加し、各国参加者とインド太平洋地域の安全保障環境に関する議論を実施した。
米海軍主催国際シーパワーシンポジウムでスピーチする酒井海幕長
(2023年9月)
内倉空幕長は、2023年4月に米国主催宇宙シンポジウム、同年5月には、イタリア空軍主催国際航空宇宙力会議に参加した。参加国との各種会談などでは、インド太平洋地域や宇宙領域における課題などについて意見交換し、空軍種や宇宙軍種の防衛協力・交流の推進を図った。また、同年11月には、NATOパートナー空軍司令官会議にオンライン形式で参加し、宇宙安全保障に関する実務的協力や相互理解に向け、NATOやNATO加盟国と連携を強化する旨述べた。さらに、同月、米国で行われた太平洋地域空軍参謀長等シンポジウム(PACS)に参加するとともに、同年12月には、2023年から正式メンバーとなった連合宇宙作戦イニシアチブ30(CSpO:Combined Space Operations Initiative)将官級会議に参加し、各国の参加者と責任ある宇宙利用の推進や安全保障に関する意見交換を行った。
NATOパートナー空軍司令官会議にオンラインで参加する内倉空幕長
(2023年11月)
パシフィック・パートナーシップ31(PP:Pacific Partnership)は、米海軍を主体とする艦艇が域内各国を訪問して、医療活動、施設補修活動、文化交流などを行い、各国政府、軍、国際機関およびNGOとの協力を通じ、参加国の連携強化や国際平和協力活動の円滑化などを図る活動である。
2023年度は、ソロモン諸島、トンガ、パプアニューギニア、パラオ、フィジーにおいて、マングローブ植樹や、立入検査訓練、米海軍病院船などにおける医療支援、音楽演奏などを通じた交流を行い、参加各国との連携強化を図った。
パシフィック・パートナーシップ2023における医療支援(2023年10月)
近年、防衛分野における多国間関係は「信頼醸成」の段階から「具体的・実践的な協力関係の構築」の段階へと移行しており、これを実効的なものとするための重要な取組として、様々な多国間共同訓練・演習が活発に行われている。
特に、インド太平洋地域において、従来から行われていた戦闘を想定した訓練に加え、HA/DR、非戦闘員退避活動(NEO:Non-combatant Evacuation Operation)などの非伝統的安全保障分野を取り入れた多国間共同訓練に積極的に参加している。こうした訓練への参加は、自衛隊の各種技量の向上に加え、関係国との協力の基盤を作るうえで重要であり、今後とも積極的に取り組んでいくこととしている。
また、海自は、2017年からインド太平洋方面派遣(IPD)を開始し、同地域沿岸国や同盟国・同志国などとの共同訓練、重要港湾への寄港、他省庁や同志国などと共同での能力構築支援など、FOIPの実現に向けた取組を推進している。IPDは、わが国がインド太平洋地域に継続的に関与する意志とわが国の積極的平和主義を体現するものであり、非常に意義のあるものである。
参照IV部第3章1節5項2(1)(令和5年度インド太平洋方面派遣「IPD23」)、資料58(多国間共同訓練の参加など(2020年度以降))
動画:【訓練】令和5年度インド太平洋方面派遣(IPD23) 第1水上部隊活動記録
URL:https://youtu.be/ssV5GrGDcfo?si=kMPC-jKER98v9AWa
17 政治・安全保障問題に関する対話と協力を通じ、アジア太平洋地域の安全保障環境を向上させることを目的としたフォーラムで、1994年から開催されている。現在25か国1地域(ASEAN10か国(ブルネイ、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、カンボジア(以上1995年から)、ミャンマー(1996年から))に、日本、オーストラリア、カナダ、中国、インド(以上1996年から)、ニュージーランド、パプアニューギニア、韓国、ロシア、米国、モンゴル(以上1998年から)、北朝鮮(2000年から)、パキスタン(2004年から)、東ティモール(2005年から)、バングラデシュ(2006年から)、スリランカ(2007年から))と1機関(欧州連合(EU))がメンバー国となり、外務当局と防衛当局の双方の代表による各種政府間会合を開催し、地域情勢や安全保障分野について意見交換を行っている。
18 2010年10月に発足し、ASEAN域外国として、わが国のほか、オーストラリア、中国、インド、ニュージーランド、韓国、ロシア、米国が参加している。
19 わが国はこれまで第1期(2011年から2013年)に防衛医学、第2期(2014年から2016年)にHA/DR EWGの共同議長を務め、第3期(2017年から2019年)は各EWGに積極的に参加、第4期(2021年から2024年)はベトナムとPKO EWGの共同議長を務めた。第5期(2024年から2027年)はフィリピンと海洋安全保障EWGの共同議長を務める。
20 毎年、外相級の閣僚会合のほかに、高級事務レベル会合(SOM:Senior Officials' Meeting)および会期間会合(ISM:Inter-Sessional Meeting)が開かれるほか、信頼醸成措置および予防外交に関する会期間支援グループ(ISG on CBM/PD(Inter-Sessional Support Group on Confidence Building Measures and Preventive Diplomacy))、ARF安全保障政策会議(ASPC:ARF Security Policy Conference)などが開催されている。また、2002年の閣僚会合以降、全体会合に先立って、ARF防衛当局者会合(DOD:Defence Officials' Dialogue)が開催されている。
21 ASEAN各国、ASEAN事務局に加え、ASEAN加盟が原則合意されている東ティモールがオブザーバーとして参加した。
22 相互理解や信頼醸成促進、地域における「法の支配」の貫徹への貢献を目的に、ASEAN各国空軍士官などを招へいし、セミナーなどを実施するプログラム。
23 同プログラムは、「第1回日太平洋島嶼国及び東ティモール乗艦協力プログラム」と同時開催された。
24 ASEAN各国のサイバーセキュリティ要員を対象として、自衛官が教官を務める能力構築支援を実施し、サイバー空間で発生するインシデントにより適切に対応できるようになることをねらいとする。
25 日本とASEANは、「自由で開かれたルールに基づくインド太平洋地域を促進するとの共通の考え」を確認している。
26 太平洋島嶼国の軍保有国のほか、オーストラリア、チリ、ニュージーランド、フランスをメンバー国とし、わが国および米国、英国がオブザーバー参加。
27 諸外国の国防大臣クラスを集めて防衛問題や地域の防衛協力についての議論を行うことを目的として開催される多国間会議であり、民間研究機関である英国の国際戦略研究所の主催により始まった。2002年の第1回から毎年シンガポールで開催され、会場のホテル名からシャングリラ会合(Shangri-La Dialogue)と通称される。
28 英国国際戦略研究所(IISS:The International Institute for Strategic Studies)が主催する中東諸国の外務・防衛当局など関係者を中心に安全保障に関して意見交換を行う国際会議であり、毎年、バーレーンのマナーマで開催されている。
29 欧米における安全保障会議の中で最も権威ある民間機関主催の国際会議の一つであり、1962年から毎年(例年2月)開催されている。欧州主要国の閣僚をはじめ、世界各国の首脳や閣僚、国会議員、国際機関主要幹部が例年参加している。
30 米国をはじめとする同志国で構成される多国間枠組みであり、宇宙安全保障に必要な政策・運用・体制・法的な課題などに関する各種議論を実施する多国間枠組み。2014年に米英豪加の4か国で発足し、ニュージーランド、ドイツ、フランスが参加している。
31 2006年から米軍が開始し、自衛隊は2007年から毎年参加している。