防衛省・自衛隊は、日頃の訓練にあたって安全確保に最大限留意するなど、平素から安全管理に一丸となって取り組んでいる。
2023年4月、陸自高遊原(たかゆうばる)分屯地(熊本県)所属のUH-60JA多用途ヘリコプター1機が、航空偵察中に沖縄県宮古島北北西の洋上において墜落し、隊員10名が殉職した。2024年3月、2基のエンジンを搭載する当該事故機において、第2エンジンの出力が緩やかに低下し、出力を喪失したのに引き続き、第1エンジンの出力も低下するという、これまでに報告事例がない事象が生起し、高度保持が困難となり、墜落したとの事故調査結果を公表した。再発防止策として、両エンジンの出力低下要因について、より詳細な点検・検査を実施することや、同事象に対する対処要領の教育などの再発防止策を徹底し、飛行の安全を確保していくこととしている。
また、2023年11月に屋久島沖合にて発生した米空軍CV-22(オスプレイ)の墜落事故を受け、防衛省は、米側に対し、国内に配備されたオスプレイについて、捜索救助活動を行う機体を除き、飛行にかかる安全が確認されてから飛行を行うよう要請するとともに、事故の状況や原因などについて早期の情報提供を求めた。陸自V-22(オスプレイ)については、当該事故の状況が明らかになるまで、当面の間、その飛行を見合わせた。国内に配備された米空軍オスプレイは、同年12月1日以降、飛行を行っておらず、同月7日、米軍は、オスプレイを保有するすべての軍種において、オスプレイの運用を停止した。2024年3月8日、米軍は、オスプレイの運用停止措置を解除する旨発表したが、米側からは、事故の状況や原因、安全対策について極めて詳細な情報提供を受けており、当該事故に関する米軍の原因分析や安全対策は、防衛省・自衛隊の専門的見地や、オスプレイを実際に保有し、運用している立場からも、合理的であると主体的に評価しており、陸自オスプレイを含め、安全に運用を再開することができるとの判断に至っている。また、同月14日以降、国内の日米オスプレイについて、必要な安全対策を講じた上で安全が確認されたものから、順次飛行を再開することを日米間で確認した。オスプレイの運用再開にあたっては、飛行の安全確保が最優先であることを日米間のあらゆるレベルで確認しており、引き続き、日米で協力し、安全確保に万全を期していく。
さらに、2024年1月に東京国際空港で発生した日本航空機と海上保安庁機の衝突事故を踏まえ、防衛省・自衛隊は、国土交通省と緊密に連携して、同様の事故の防止に向けた必要な取組を進めていくこととしている。
2024年4月には、海自SH-60K哨戒ヘリコプター2機が、夜間の対潜戦訓練中、伊豆諸島鳥島東の洋上において墜落する事故が発生した。搭乗していた隊員および機体の捜索を行うとともに、事故原因の調査を進めている。
そのほか、2023年6月、日野基本射撃場(岐阜県)において、新隊員教育における実弾射撃訓練中、自衛官候補生1名が3名の隊員に向け発砲、2名が殉職する事案が生起した。今回の事案は、武器を扱う組織として決してあってはならないものであり、引き続き、防衛省・自衛隊として、隊員の教育や射撃手順の見直しなどを含む安全管理の徹底、再発防止に全力で取り組んでいく。
このように、国民の生命や財産に被害を与え、隊員の生命を失うことなどにつながる各種の事故・事案は、絶対に防がなくてはならない。防衛省・自衛隊としては、これらの事故・事案について徹底的な原因究明を行ったうえで、今一度、隊員一人一人が安全管理にかかる認識を新たにし、防衛省・自衛隊全体として、国民の信頼を損なうことがないよう隊員への教育の徹底、装備品の確実な整備など、艦艇や航空機、車両などの運航・運行にあたっての安全確保に万全を期していく。
参照4章1節4項2(3)(米軍オスプレイの墜落事故)、III部1章7節1項2(3)(米軍オスプレイの捜索救難への対応)、III部2章5節2項7(2)(MV-22(オスプレイ)などの訓練移転)、資料33(米軍オスプレイのわが国への配備の経緯)