事態対処法2は、武力攻撃事態および武力攻撃予測事態(武力攻撃事態等)並びに存立危機事態への対処のための態勢を整備し、もってわが国の平和と独立並びに国および国民の安全の確保に資することを目的としている。同法では、武力攻撃事態等および存立危機事態への対処についての基本理念、基本的な方針(対処基本方針)として定めるべき事項、国・地方公共団体の責務などについて規定している。
KEY WORD武力攻撃事態・武力攻撃予測事態
武力攻撃事態とは、わが国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態またはわが国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態。
武力攻撃予測事態とは、武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、わが国に対する外部からの武力攻撃が予測されるに至った事態。
(両者を合わせて「武力攻撃事態等」と呼称)
KEY WORD存立危機事態
わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態。
後述する第III部第1章第4節のようなわが国に対するミサイル攻撃や島嶼(しょ)部への侵攻などの武力攻撃が生起した場合や、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態が生起した場合、政府は、同法に基づき対応していく。
武力攻撃事態等または存立危機事態に至ったときは、政府は、事態対処法に基づき、次の事項を定めた対処基本方針を閣議決定し、国会の承認を求めることになる。
武力攻撃事態または存立危機事態の場合、この対処措置に関する重要事項として、後述する防衛出動を命ずることの国会承認の求め、または防衛出動を命じることなどが記載される。
参照図表II-5-2(武力攻撃事態等および存立危機事態への対処のための手続き)
内閣総理大臣は、武力攻撃事態および存立危機事態に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部または一部に防衛出動を命ずることができる。防衛出動の下令に際しては、原則として国会の事前承認を得なければならない。防衛出動を命ぜられた自衛隊は、「武力の行使」の三要件を満たす場合に限り武力の行使ができる。
参照1章2節2項2(憲法9条のもとで許容される自衛の措置)、III部1章4節(ミサイル攻撃を含むわが国に対する侵攻への対応)
武力攻撃事態等および緊急対処事態3において、国民の生命、身体、財産を保護し、国民生活などに及ぼす影響を最小とするための、国・地方公共団体などの責務、住民の避難、避難住民の救援、武力攻撃災害への対処などに関する措置については、国民保護法4に規定している。防衛大臣は、都道府県知事からの要請を受け、事態やむを得ないと認める場合、または対策本部長5から求めがある場合は、内閣総理大臣の承認を得て、部隊等6に国民保護措置または緊急対処保護措置(住民の避難支援、応急の復旧など)を実施させることができる。
参照図表II-5-3(国民保護等派遣の流れ)、III部1章4節8項(国民保護に関する取組)