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ダイジェスト 第IV部 防衛力の能力発揮のための基盤

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防衛生産・技術基盤と防衛装備品の取得をめぐる現状

わが国の防衛生産・技術基盤について

わが国には工廠(しょう)(国営工場)が存在しないことから、生産基盤の全てと技術基盤の多くの部分を、防衛装備品などを生産する企業(防衛産業)が担っている。

防衛装備品については、市場が防衛省による少量の需要に限定されており、量産効果が期待しにくい状況にある。さらに、防衛装備品の開発・製造には特殊かつ高度な技術や技能が必要とされ、そのような技術や技能の育成・維持には多くの努力を要する。

レゾルバ(角度センサ)の巻線作業の画像

防衛装備関連会社の車長用潜望鏡、砲手用潜望鏡の部品となるレゾルバ(角度センサ)の巻線作業の様子

防衛装備品の取得をめぐる現状

防衛産業の技術力は、技術者が研究開発事業に取り組むことなどを通じて維持・向上するものであることから、研究開発予算のすう勢は、官民における技術者の維持・育成に大きく影響する。また、装備品の高性能化などにより、研究開発コストは上昇傾向にあるものの、近年は、防衛関係費に占める研究開発経費の割合の推移は横ばいである。

調達の効率化および調達の公正性・透明性向上のための取組

主要な事業について、プロジェクト・マネージャー(PM:Project Manager)のもと、組織横断的な統合プロジェクトチーム(IPT:Integrated Project Team)を設置し、装備品のライフサイクルを通じて、コスト、パフォーマンス、スケジュールに関するプロジェクト管理を一元的に実施するPM/IPT体制の構築を進めている。

防衛装備移転三原則

2013(平成25)年12月17日に定められた「国家安全保障戦略」では、国際協調主義に基づく積極的平和主義の観点から、防衛装備品の活用などによる平和貢献・国際協力に一層積極的に関与するとともに、防衛装備品などの共同開発・生産などに参画することが求められている。

政府は、2014(同26)年4月1日、「防衛装備移転三原則」を閣議決定した。これは、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念と、これまでの平和国家としての歩みを引き続き堅持し、また、武器輸出三原則等がこれまで果たしてきた役割に十分配意したうえで、これまで積み重ねてきた例外化の実例を踏まえ、これを包括的に整理し、防衛装備の移転にかかる具体的な基準や手続き、歯止めを今まで以上に明確化し、内外に透明性をもった形で明らかにするものである。

研究開発

装備品などのライフサイクルを通じた性能、スケジュール、コストの最適化を図る観点から、構想・研究および開発段階から、性能・コストなどの面での複数の提案の比較・分析を徹底するとともに、さらに、装備品の量産単価の上昇を招かないように、開発時から技術研究本部と装備施設本部が、コストの見積もりについて連携する仕組みを、ライフサイクル管理の一部として行っていく。

防衛装備品の高性能化を実現しつつ、費用の高騰に対応するため、国際共同開発が国際的な主流になっており、防衛省においても、米国防省との間で共同研究開発を実施しているほか、英国をはじめとする諸外国との装備・技術分野における協力を進めている。また、防衛技術と民生技術との間でデュアルユース化、ボーダーレス化が進展している中、優れた民生技術を取り込み、効率的な研究開発を行うため、国内においては、技術研究本部と独立行政法人や大学などの研究機関との間で研究協力や技術情報の交換などを積極的に実施している。

機動戦闘車の画像

開発中の機動戦闘車

防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた取組

防衛生産・技術基盤戦略

防衛省では、昨今の厳しい財政事情やグローバルな防衛産業の再編などによる海外企業の競争力の向上といった状況を踏まえ、防衛力を支える重要かつ不可欠な要素である防衛生産・技術基盤を維持・強化するため、従来の「国産化方針」に代わり、2014(平成26)年6月19日、「防衛生産・技術基盤戦略」を決定した。

本戦略では、防衛生産・技術基盤の維持・強化の目標・意義などに加え、国内開発、国際共同開発・生産、輸入といった防衛装備品の取得方法についての基本的な考え方、契約制度の改善、研究開発にかかる施策、防衛装備・技術協力といった防衛生産・技術基盤戦略の維持・強化のための諸施策、各防衛装備品分野の現状と今後の方向性などについて示している。

民間転用

捜索・救難飛行艇の取得を検討しているインドとの間では、US-2にかかる二国間協力に向けた合同作業部会(JWG:Joint Working Group)において、協議を実施している。

US-2救難飛行艇の画像

US-2救難飛行艇

防衛力を支える人的基盤

防衛省・自衛隊が、その防衛力を最大限効果的に機能させるためには、これを下支えする人的基盤を充実・強化させることがきわめて重要である。また、防衛省・自衛隊の様々な活動は、国民一人ひとり、そして、地方公共団体などの理解と協力があってはじめて可能となるものであり、地域社会・国民と自衛隊相互の信頼をより一層深めていく必要がある。

防衛省・自衛隊の職員の募集・採用

わが国では、少子化・高学歴化が進み、自衛官募集の対象となる人口が減少している中、確固とした入隊意思を持つ優秀な人材を、様々な区分に応じて広く全国から募っている。

また、平素は社会人として各々の職業に従事しつつ、防衛招集命令などを受けて自衛官となり、任務に就く予備自衛官などの制度が設けられている。

隊員の画像

2014(平成26)年4月に海自に入隊した隊員

日々の教育訓練

自衛隊は、事故防止などの安全確保に細心の注意を払いつつ、隊員の教育や部隊の訓練などを行い、精強な隊員や部隊の育成に努めている。

教育訓練の画像

陸・海・空自衛隊の教育訓練の一場面

人的資源の効果的な活用に向けた施策など

防衛省・自衛隊は、任務の多様化などに的確に対応していくため、各部隊などの特性を踏まえつつ精強性を適切に確保し、防衛力の能力発揮の基盤である人的資源を効果的に活用するため、人事制度改革に関する施策や女性自衛官のさらなる活用など、様々な施策を推進している。

女性自衛官の画像

陸・海・空自衛隊の女性自衛官

防衛省・自衛隊と地域社会・国民とのかかわり

地域コミュニティーとの連携

防衛省・自衛隊は、民生支援として様々な協力活動を行い、地域社会・国民と自衛隊相互の信頼をより一層深めるとともに、地域コミュニティーの維持・活性化に大きく貢献している。

陸自隊員の画像

不発弾処理を行う陸自隊員

機雷などの処理の画像

海自による機雷などの処理の様子

在日米軍の駐留にかかる地元負担軽減に向けた取組

沖縄県における駐留軍用地の返還については、「沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法」に基づき、跡地利用の有効かつ適切な利用の推進に取り組んでいる。

普天間飛行場代替施設建設事業の実施に関しては、環境への影響をできる限り回避または軽減するため、ウミガメ類の上陸・産卵に適した環境条件の整備の検討および実施、サンゴ類および海草類の移植、航空機による定期的なジュゴンの生息確認および埋立土砂の調達に本事業の有無にかかわらず発生する岩ズリの使用など事業者として最大限の環境保全措置などを講ずるほか、事後調査などを充実することとした。

情報発信や情報公開など

防衛省・自衛隊は、自衛隊の現状を広く国民に紹介する活動を行っている。たとえば、自衛隊記念日記念行事の一環として、自衛隊音楽まつりを日本武道館で毎年開催しているほか、平成25年度は、陸自朝霞訓練場において自衛隊観閲式を行った。

自衛隊観閲式の画像

平成25年度自衛隊観閲式

自衛隊音楽まつりの画像

平成25年度自衛隊音楽まつり

防衛省改革

防衛省改革の方向性

2013(平成25)年8月に防衛会議で報告・公表された「防衛省改革の方向性」においては、わが国を取り巻く安全保障環境や政策的環境の変化などを踏まえるとともに、これまでの検討において指摘された事項も十分考慮し、抜本的な改革を実施することとされた。