都市化・市街化が進んでいるわが国にとっては、ゲリラや特殊部隊による破壊工作や潜入した武装工作員25による不法行為といった、少数の人員による潜入・攻撃であっても、平和と安全に対する重大な脅威となり得る。
ゲリラや特殊部隊による攻撃の態様としては、民間の重要インフラ施設などの破壊や人員に対する襲撃、要人暗殺などがあげられる。ゲリラや特殊部隊により、わが国に対する武力攻撃が行われる場合には、防衛出動により対処する。
参照資料21(自衛隊の主な行動)、資料22(武力行使および武器使用に関する規定)
本作戦では、速やかに情報収集態勢を確立し、沿岸部での警戒監視、重要施設の防護ならびに侵入した部隊の捜索および撃破を重視して対応する。この際、被害を最小限にして事態を早期に収拾することが重要である。
ア 警戒監視
護衛艦、航空機などによる周辺海域の警戒監視や、陸自の偵察部隊などによる沿岸部での警戒監視により、早期発見や兆候の察知に努める。
イ 重要施設の防護
必要に応じ、原子力発電所などの重要施設の防護のために部隊を配置し、早期に防護態勢を確立する。
ウ ゲリラや特殊部隊の捜索・撃破
ゲリラや特殊部隊が領土内に潜入した場合、偵察部隊や航空部隊などによる捜索・発見を行う。
ゲリラや特殊部隊を発見した場合、速やかに戦闘部隊を展開させ、これを包囲したうえで、捕獲または撃破する。
参照図表III-1-1-18(ゲリラや特殊部隊への対処の作戦の一例)
武装工作員などによる不法行為には、警察機関が第一義的に対処するが、自衛隊は、生起した事案の様相に応じて対応する。
武装工作員などへの対処にあたっては、警察機関との連携が重要である。このため、00(平成12)年、治安出動の際における自衛隊と警察との連携要領についての基本協定(54(昭和29)年に締結)を改正し、武装工作員などによる不法行為にも対処できるようにした26ほか、02(平成14)年に、陸自の師団などと全都道府県警察との間で、治安出動に関する現地協定を締結した。
さらに、04(同16)年、治安出動の際における武装工作員等事案への共同対処のための指針を警察庁と共同で作成した。
また、陸自は各都道府県警察との間で、全国各地で共同実動訓練を継続して行い、連携の強化を図っている。12(同24)年には伊方発電所(愛媛県)、13(同25)年には泊発電所(北海道)、美浜発電所(福井県)、14(同26)年には島根原子力発電所(島根県)の敷地においても訓練を実施した。さらに、海自と海上保安庁との間でも、継続して不審船対処にかかる共同訓練を実施している。
福井県美浜郡において警察と共同して空中機動訓練を行う陸自部隊
近年、NBC兵器とその運搬手段および関連資器材が、テロリストや拡散懸念国などに拡散する危険性が強く認識されている。このような大量破壊兵器が使用された場合、大量無差別の殺傷や広範囲な地域の汚染が生じる可能性がある。95(同7)年の東京での地下鉄サリン事件27や01(同13)年の米国での炭疽(たんそ)菌入り郵便物事案28の発生は、こうした兵器が使用された例である。
わが国でNBC兵器が使用され、これが武力攻撃に該当する場合、防衛出動により武力攻撃の排除や被災者の救援などを行う。また、武力攻撃に該当しないが一般の警察力で治安を維持することができない場合、治安出動により関係機関と連携して武装勢力などの鎮圧や被災者の救援を行う。さらに、防衛出動や治安出動に該当しない場合であっても、災害派遣や国民保護等派遣などにより、陸自の化学科部隊や各自衛隊の衛生部隊を中心に被害状況に関する情報収集、除染活動、傷病者の搬送、医療活動などを関係機関と連携して行う。
防衛省・自衛隊では、NBC兵器による攻撃への対処能力の向上を図っている。具体的には、陸自の中央特殊武器防護隊と、各師団および旅団の特殊武器防護隊、対特殊武器衛生隊などを保持するほか、化学科部隊の人的充実や、NBC偵察車、化学剤監視装置、除染車、個人用防護装備、携帯生物剤検知器、化学防護衣などの整備、除染セットなどの研究開発を行っている。また、特殊な災害に備えて初動対処要員を指定し、約1時間で出動できる態勢を維持している。海自および空自においても、艦船や基地などにおける防護器材の整備を行っている。さらに、自治体、警察、消防といった関係機関との共同訓練を通じて連携強化に努めている。