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第III部 わが国の防衛のための取組

2 日韓防衛協力・交流

1 韓国との防衛協力・交流の意義など

韓国は、歴史的にも、経済・文化などの各分野においてわが国と密接な関係を有しており、また、地政学的にもわが国の安全保障にとってきわめて重要な国である。さらに、基本的な価値を共有するとともに、米国の同盟国として、その戦略的利害関係の多くが共通している。このため、時に困難な問題が起きるとしても、両国が、安全保障面において緊密に連携することは、アジア太平洋地域における平和と安定にとって大きな意義がある。

さらに、日韓両国が直面している安全保障上の課題は、北朝鮮の核・ミサイル問題のみならず、テロ対策や、PKO、大規模自然災害への対応、海賊対処、海洋安全保障など、広範にわたる複雑なものとなってきている。これらの課題に両国が効果的に対応するためには、より広範かつ具体的な防衛協力・交流を行っていくことが重要である。

このような認識のもと、11(平成23)年1月の防衛相会談においては、PKO、人道支援・災害救援活動、捜索救難訓練などの分野において、水、食料、燃料などを相互に支援できるよう、ACSAについて意見交換を進めていくことで一致した。さらに、情報保護協定の内容について両国の防衛当局間で意見交換を進めていくことで一致した。なお、情報保護協定については、12(同24)年6月に行われる予定であった署名が韓国側から国内事情により延期したいとの要請があり、直前に延期された。

2 最近の主要な防衛協力・交流実績など

13(同25)年11月、防衛事務次官が訪韓し、韓国国防部主催の国際会議「ソウル・ディフェンス・ダイアログ」に出席するとともに、白承周(ペク・スンジュ)国防次官と2年ぶりの日韓次官級会談を行った。会談では、日韓防衛協力・交流や北朝鮮情勢について意見交換を行ったほか、わが国の安全保障に関する取組について説明を行った。また、14(同26)年3月には、インドネシアにおいて日韓次官級会談を実施し、日韓防衛協力・交流や地域情勢などについて意見交換を行った。さらに、訓練・演習では、海自が同年12月に九州西方海域において日韓捜索・救難訓練を実施し、韓国海軍との連携強化を図った。

参照資料49(最近の日韓防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

ソウル・ディフェンス・ダイアログの画像

ソウル・ディフェンス・ダイアログにおける日韓次官級会談

3 日米韓の協力関係

日韓両国は、アジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠の存在である米国と同盟関係にあることから、日米韓三か国での協力も進展している。

14(同26)年3月、オランダのハーグで日米韓の首脳会談が行われ、北朝鮮問題を中心とする東アジアの安全保障について、一層緊密に連携していくことの重要性が確認された。引き続いて、同年4月には、日米韓防衛実務者協議を行い、北朝鮮を核保有国として認めないことを再確認し、挑発行為に対し三か国が緊密に連携して対応していくことで一致するとともに、北朝鮮の核弾道ミサイル開発計画や拡散による国際的な安全保障上の脅威に対する協調的な対応と、国際社会との緊密な連携の必要性についても再確認した。

同年6月、第13回シャングリラ会合に際して、日米韓防衛相会談を行い、共同声明を発出した。会談では、北朝鮮を含む地域情勢や日米韓防衛協力について協議し、北朝鮮の相次ぐ挑発行為が地域および世界の安全保障にとって深刻な脅威であるとの認識で一致し、三か国が引き続き緊密に連携していくことで合意した。また、三か国間の情報共有の重要性を再確認し、引き続き検討していく必要性について理解を共有した。

同年7月、ハワイにおいて、統幕長、米国統合参謀本部議長および韓国合同参謀本部議長による初の日米韓参謀総長級会談を行い、北朝鮮による核およびミサイルの脅威など深刻化する安全保障情勢や日米韓三か国の連携強化に向けた方策などについて幅広く議論した。

訓練・演習では、13(同25)年5月および10月に、海自が九州西方海域において、捜索・救難などにかかる日米韓共同訓練を行うとともに、同年12月には、アデン湾において海賊対処訓練を実施し、三か国の連携・協力の強化を図った。また、陸自は、同年12月および14(同26)年4月に実施した初級幹部交流などを通じ、将来を担う若年幹部レベルから関係強化を図っている。このように地域の平和と安定に寄与するため、日米韓三か国の協力関係を一層発展させていくことが重要である。

日米韓共同訓練の画像

アデン湾で日米韓共同訓練を実施中の海自護衛艦など(手前から海自護衛艦「せとぎり」、韓国海軍艦艇「チェ・ヨン」、海自護衛艦「ありあけ」、米海軍駆逐艦「バルクリ」)