グローバル化の進展により、国境を越えて活動するテロ組織にとって、組織内または他の組織との間の情報共有・連携、地理的アクセスの確保や武器の入手などがより容易になっている。こうした中、イスラム過激派などのテロ組織は、主に政情が不安定で統治能力がぜい弱な国家・地域において、テロを実行しているが、その活動目的や能力は組織ごとに異なっているとされる1。なお、これらの組織の中には密輸・誘拐などの犯罪を通じて資金を確保しているものもみられる。
01(平成13)年に発生した9.11テロを主導したとされるアルカイダについては、11(同23)年5月、パキスタンに潜伏していた指導者ウサマ・ビン・ラーディンが、米国の作戦により殺害された。しかしながら、アルカイダによる攻撃の可能性が根絶されたわけではない。アルカイダ指導部の指揮統制力が衰退する一方、「アルカイダ」を名称の一部に取り入れた関連組織は、勢力を増大させているとの指摘もあり、それらの関連組織が主に北アフリカや中東などを拠点としてテロを実行している2。
また、アルカイダとの関連が指摘される組織およびその他のイスラム過激派テロ組織については、同地域を中心としつつ南アジア、東南アジアなどの各地でテロを実行しており、特にアルジェリア、リビア、マリ、イラク、エジプト、シリアなどでは、管理が十分でない国境を越えて、拠点が所在する国以外でもテロを実行する能力を持つとされている。これらの組織については、リビアのカダフィ政権が崩壊した際に拡散した大量の武器を入手しているとの指摘がある。
また、近年、アルカイダやその関連組織との正式な関係はないものの、アルカイダの思想に影響された個人や団体がテロ実行主体となる例が見られ、いわゆる「ホームグローン・テロリスト」の脅威が懸念されている。
欧米諸国は、自国民がシリア3やソマリア4といった紛争地域で戦闘に参加し、過激な思想を吹き込まれ、本国に帰国した後にテロを実行することを懸念している5。
このようにテロの脅威が拡散するとともに、その実行主体が多様化し、国際テロの防止が困難となっていることから、テロ対策に関する国際的な協力の重要性がさらに高まっている。