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第IV部 防衛力の能力発揮のための基盤

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第2章 国民と防衛省・自衛隊

防衛省・自衛隊が、その防衛力を最大限効果的に機能させるためには、これを下支えする人的基盤を充実・強化させることがきわめて重要である。また、防衛省・自衛隊の様々な活動は、国民一人ひとり、そして、地方公共団体などの理解と協力があってはじめて可能となるものであり、地域社会・国民と自衛隊相互の信頼をより一層深めていく必要がある。

第1節 防衛力を支える人的基盤

1 防衛省・自衛隊の職員の募集・採用

防衛省・自衛隊が各種任務を遂行するためには、質の高い人材を確保することが必須の条件であり、様々な制度を設けて職員の募集・採用を行っている。

参照資料64(防衛省職員の内訳)

1 募集

近年、防衛省・自衛隊に対する国民の期待と支持はこれまで以上に高くなっている。その一方で、わが国では、少子化・高学歴化が進み、募集の対象となる人口が減少しており、自衛官の募集環境は、ますます厳しくなっている。これを踏まえ、わが国の防衛という自衛隊の任務の特性上、自衛隊に興味を持つ者、または自衛官を志望する者に対し、国の防衛の担い手という役割、業務や訓練、特殊な生活環境(営内生活など)や人事管理(若年定年制、任期制、階級制度)などを詳細に説明したうえで、確固とした入隊意思を持つ優秀な人材を、広く全国から募る必要がある。

参照図表IV-2-1-1(募集対象人口の推移)

図表IV-2-1-1 募集対象人口の推移

このため、防衛省・自衛隊では、学校説明会、就職情報誌への広告掲載などに加え、時代の変化に応じた募集活動を充実させ、全国50か所(北海道に4か所、各都府県に1か所)に自衛隊地方協力本部を置き、陸・海・空自で部隊勤務経験のある自衛官を広報官として配置し、学校関係者の理解と募集相談員などの協力を得ながら、志願者個々のニーズに対応できるようにしている。

また、地方公共団体は、募集期間などの告示、広報宣伝などの自衛官の募集事務の一部を行うこととされており、防衛省は、そのための経費を地方公共団体に配分している。より質の高い隊員を確保していくためには、地域に密着した地方公共団体による募集協力を含め、募集活動をより充実させていくことが不可欠である。

2 採用
(1)自衛官

自衛官は、志願制度(個人の自由意志に基づく入隊)のもと、幹部候補生、一般曹候補生1、自衛官候補生2、防衛大学校学生、高等工科学校生徒3など様々な区分に応じて募集される。

参照図表IV-2-1-2(自衛官の任用制度の概要)

図表IV-2-1-2 自衛官の任用制度の概要

自衛官は、その職務の特殊性のため、一般の公務員とは異なる人事管理4を行っている。その中でも、一般の公務員と比べて大きく異なる点は、自衛隊の精強さを保つため、「若年定年制」や「任期制」という制度をとっている点である。採用後、各自衛隊に入隊した自衛官は、各自衛隊の教育部隊や学校で基本的な教育を受け、その間、一人ひとりの希望や適性などに応じた職種が決定され、その後全国の部隊などへ赴任する。

参照資料65(自衛官の定員および現員)資料66(自衛官などの応募および採用状況(平成25年度))、図表IV-2-1-3(自衛官の階級と定年年齢)

図表IV-2-1-3 自衛官の階級と定年年齢

(2)即応予備自衛官、予備自衛官、予備自衛官補

有事などの際は、事態の推移に応じ、必要な自衛官の所要量を早急に満たさなければならない。この所要量を迅速かつ計画的に確保するため、わが国では即応予備自衛官、予備自衛官および予備自衛官補の三つの制度5を設けている。

参照図表IV-2-1-4(予備自衛官などの制度の概要)

図表IV-2-1-4 予備自衛官などの制度の概要

ア 予備自衛官

予備自衛官は、防衛招集命令などを受けて自衛官となり、後方支援、基地警備などの要員として任務に就くこととなっている。

予備自衛官は、退職した自衛官の志願に基づき選考により採用される場合と、予備自衛官補としての教育訓練のすべてを修了した後に任用される場合があり、平素は社会人として各々の職業に従事しつつ、現在は年間5日間の訓練招集に参加して、練度の維持に努めている。

イ 即応予備自衛官

陸上自衛隊に導入されている即応予備自衛官は、防衛招集命令などを受けて自衛官となり、あらかじめ指定された第一線部隊の一員として、現職自衛官とともに任務につくこととなっている。

即応予備自衛官は、退職した自衛官、予備自衛官として任用されている者の志願に基づき選考により採用され、平素は社会人としてそれぞれの職業に従事しつつ、必要とされる練度を維持するため、指定された部隊で年間30日の訓練招集に参加している。

ウ 予備自衛官補

自衛官未経験者を対象とする予備自衛官補制度は、防衛基盤の育成・拡大を図り、予備自衛官を安定的に確保し、医療、語学などにおける民間の優れた専門技術を有効活用することを目的とした制度であり、一般と技能の二つの採用区分がある。技能の採用区分では、医療従事者、語学、情報処理、法務、放射線管理などの技能資格者を採用している。予備自衛官補は、自衛官として勤務するために必要な教育や訓練を修了した後、予備自衛官として任用される。

エ 予備自衛官などに関する施策

(ア)雇用企業の協力

予備自衛官などは、平素はそれぞれの職業などについているため、必要な技能のレベルを維持するには仕事のスケジュールを調整したり休暇を利用するなどして、訓練招集に参加する必要がある。また、有事などの際には、活動期間が長くなるとともに、複数回招集される可能性がある。したがって、これらの制度を円滑に運用するためには、予備自衛官などを雇用する企業の理解と協力が不可欠である。特に、即応予備自衛官は、年間30日の訓練が必要であるため、雇用企業に対して休暇取得への配慮などの必要な協力を求めることになる。

このため防衛省は、即応予備自衛官が安心して訓練に参加できるよう、訓練参加などのために必要な措置を行っている雇用企業などに対し、その企業が負うことになる負担を考慮し、「即応予備自衛官雇用企業給付金」を支給している。

(イ)さらなる予備自衛官の活用など

新防衛大綱は、より多様化・長期化する事態における持続的な部隊運用を支えるため、予備自衛官などの幅広い分野での活用を進めるとともに、充足向上などのための施策を実施するとしている。たとえば、割愛により民間部門に再就職する航空機操縦士を予備自衛官として任用することを推進する。また、平成26年度は、自衛隊が予備自衛官制度を創設して60周年の節目を迎えることから、より一層の制度の周知を推進していく。

参照II部4章3節(新防衛大綱の内容)II部5章1節(コラム:自衛隊操縦士の割愛)

(3)事務官、技官、教官など

防衛省・自衛隊には、自衛官のほか、約2万1,000人の事務官、技官、教官などが隊員として勤務している。防衛省では、主に、人事院が行う国家公務員採用総合職試験および国家公務員採用一般職試験ならびに防衛省が行う防衛省専門職員採用試験の合格者から採用を行っている。採用後は共通の研修を受けたうえで、様々な分野で業務を行っている。

事務官は、内部部局での防衛全般に関する各種政策の企画・立案、情報本部での分析・研究、全国各地の部隊や地方防衛局などでの行政事務(総務、人事、予算、渉外、基地対策など)に従事している。

技官は、内部部局、技術研究本部、装備施設本部、全国各地の部隊や地方防衛局などで、各種の防衛施設(司令部庁舎、滑走路、弾薬庫など)の建設工事、様々な装備の研究開発・効率的な調達・維持・整備、隊員のメンタルヘルスケアなどに従事している。

教官は、防衛研究所や防衛大学校、防衛医科大学校などで、防衛に関する高度な研究や隊員への質の高い教育を行っている。

1 最初から定年制の「曹」に昇任する前提で採用される「士」のこと。18歳以上27歳未満の者を曹候補者である自衛官に採用する制度である。

2 自衛官として任官する前に、必要な使命感、責任感、団結心、規律心、法令遵守精神などの心構えを十分にかん養する教育を行うため、「自衛官候補生」として採用し、当該教育を修了した後、2等陸・海・空士である自衛官に任期を定めて任用する、10(平成22)年7月より施行された制度である。

3 将来陸自において高機能化・システム化された装備品を駆使・運用するとともに、国際社会において自信をもって対応できる自衛官となる者を養成するために、中学校卒業予定者を対象に採用する制度である。平成23年度の採用から、従来の一般試験に加えて、中学校校長などの推薦を受けた者の中から、高等工科学校生徒として相応しい者を選抜する推薦試験制度を導入した。

4 自衛隊員は、自衛隊法に定められた防衛出動などの任務にあたる必要があることから、国家公務員法第2条で特別職の国家公務員と位置づけられ、一般職公務員とは独立した人事管理が行われている。

5 諸外国でも、予備役制度を設けている。