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第III部 わが国の防衛のための取組

2 島嶼(とうしょ)部に対する攻撃への対応

四方を海で囲まれ、多くの島嶼を有するというわが国の地理的特性から、わが国に対する武力攻撃の一つとして島嶼部に対する攻撃が想定される。

1 基本的考え方

島嶼部に対する攻撃に対応するためには、安全保障環境を踏まえて部隊などを配置するとともに、自衛隊による平素からの常時継続的な情報収集、警戒監視などにより、兆候を早期に察知することが重要である。事前に兆候を得た場合には、敵に先んじて攻撃が予想される地域に陸・海・空自が一体となった統合運用により、部隊を機動的に展開・集中し、敵の侵攻を阻止・排除する。事前に兆候が得られず万一島嶼を占領された場合には、航空機や艦艇による対地射撃により敵を制圧した後、陸自部隊を着上陸させるなど島嶼を奪回するための作戦を行う。

参照資料21(自衛隊の主な行動)資料22(武力行使および武器使用に関する規定)

島嶼防衛において特に重要なのは、周辺海空域において敵の海上・航空戦力より優勢であり、敵から大きな損害を受けることなく作戦を遂行できる状態である、海上優勢・航空優勢の獲得・維持である。

また、弾道ミサイル、巡航ミサイルなどによる攻撃に対して的確に対応する。

参照図表III-1-1-6(島嶼防衛のイメージ図)

図表III-1-1-6 島嶼防衛のイメージ図

アイアン・フィスト14の画像

米国における米海兵隊との実動訓練(アイアン・フィスト14)においてボートによる上陸を行う陸自隊員

ドーン・ブリッツ13の画像

米国における統合訓練(ドーン・ブリッツ13)において、護衛艦「ひゅうが」に着艦する米軍のオスプレイ

2 防衛省・自衛隊の取組

南西地域には、自衛隊配備の空白地域となっている島嶼部が多く存在するため、陸自が沿岸監視部隊の配置や警備部隊の新編に着手するとともに、空自が那覇基地への戦闘機部隊1個飛行隊の増強を行うなど、平素からの防衛基盤を強化することにより、常時継続的な情報収集・警戒監視態勢や事態発生時に迅速な対処が可能な体制を整備していく。

また、事態の推移に応じ、部隊を迅速かつ段階的に機動展開させ、侵略を阻止・排除するため、新防衛大綱および新中期防において、陸自は、空自のC-2輸送機で空輸可能な機動戦闘車を有する即応機動連隊の新編などにより機動師団・旅団への改編を行い、空中機動能力を強化することとしている。

さらに、部隊の迅速かつ大規模な輸送・展開能力を確保するため、輸送艦の改修やティルト・ローター機の導入により、機動展開能力の向上を図っていく。

島嶼への侵攻があった場合、速やかに上陸・奪回・確保するため、陸自は水陸両用車を有し、本格的な水陸両用作戦機能を備えた「水陸機動団(仮称)」を新編する。また、精密誘導爆弾の誘導能力を向上させ、地対艦誘導弾を整備するとともに、艦対艦誘導弾について、射程の延伸をはじめとする能力向上のための開発を推進する。

このほか、南西地域などにおいて、島嶼部に対する攻撃の抑止および対処のための訓練や、陸・海・空自の統合運用能力向上のための演習を行うとともに、実効的な作戦遂行能力や相互連携要領の確立のための米軍との訓練などにも取り組んでいる。陸自は、06(同18)年から実施している、米国における米海兵隊との実動訓練(アイアン・フィスト)を、14(同26)年2月にもカリフォルニアで行い、水陸両用作戦機能の強化に努めている。また、13(同25)年5月から6月にかけては、従来から米西海岸で実施されている米軍の統合訓練ドーン・ブリッツに初めて陸・海・空自が参加し、初の海外における日米共同統合訓練(ドーン・ブリッツ13)として、米軍との連携および島嶼侵攻対処にかかる一連の作戦行動の演習を行った。特に、国外では初めて、陸海空統合部隊による、水陸両用作戦における計画立案から着上陸までの一連の行動を演練するとともに、艦砲、ヘリ、迫撃砲を含め、実弾を用いた射撃訓練を実施し、米軍との連携強化を図った。

さらに、14(同26)年5月には、奄美群島などにおいても陸・海・空自が参加して実動訓練を実施し、着上陸作戦にかかる自衛隊の統合運用要領について演練した。