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第II部 わが国の安全保障・防衛政策

4 防衛力の能力発揮のための基盤

防衛力に求められる多様な活動を適時・適切に行うためには、単に主要な編成、装備などを整備するだけでは十分ではなく、防衛力が最大限効果的に機能するよう、これを下支えする種々の基盤もあわせて強化することが必要不可欠である。新防衛大綱は、このような認識を示したうえで、次の取組を重視するとしている。

1 訓練・演習

平素から、訓練・演習を通じ、各種計画を不断に検証し、見直すとともに、戦術技量の向上のため訓練・演習の充実・強化に努める。その際、北海道の良好な訓練環境を一層活用するとともに、関係機関や民間部門とも連携し、より実践的な訓練・演習を体系的かつ計画的に実施する。

また、南西地域において、地元との関係に留意しつつ、米軍施設・区域の自衛隊による共同使用を進めることなどにより、良好な訓練環境を確保する。

2 運用基盤

部隊などが迅速に展開し、各種事態に効果的に対応し得るよう、駐屯地・基地などの復旧能力を含む抗たん性を高める。また、各自衛隊の施設整備に努めるとともに、各種事態に際しての迅速な参集のため、必要な宿舎の整備を進め、即応性を確保する。

また、民間空港・港湾についても、事態に応じて早期に自衛隊などの運用基盤として使用し得るよう、平素からの体制のあり方も含め検討を行う。さらに、任務に従事する隊員や留守家族の不安を軽減するよう、各種家族支援施策を実施する。

加えて、装備品の運用基盤の充実・強化(必要な弾薬の確保・備蓄、装備品の維持整備)を図る。

3 人事教育

技能、経験、体力、士気などの様々な要素を勘案しつつ、精強性を確保し、厳しい財政事情のもとで人材を有効に活用する観点から、人事制度改革に関する施策を行う。このため、各自衛隊の任務や特性を踏まえつつ、適正な階級構成および年齢構成を確保するための施策を実施する。

女性自衛官のさらなる活用や再任用を含む人材を有効に活用するための施策および栄典・礼遇に関する施策を推進する。また、統合運用体制を強化するため、教育・訓練の充実、統幕・関係府省などでの勤務などを通じ、各種事態などに柔軟に即応できる人材を確保する。

募集環境の悪化を踏まえ、自衛隊が就職対象として広く意識されるよう、多様な募集施策を推進する。さらに、一般の公務員より若年で退職を余儀なくされる自衛官の生活基盤を確保することは国の責務であることを踏まえ、地方公共団体や関係機関との連携強化などにより再就職支援を推進する。また、持続的な部隊運用を支えるため、専門的技能を要するものを含む幅広い分野で予備自衛官の活用を進めるとともに、予備自衛官などの充足向上などのための施策を実施する。

4 衛生

自衛隊病院の拠点化・高機能化などを進め、防衛医科大学校病院などの運営改善を含め効率的かつ質の高い医療体制を確立する。また、医官・看護師・救急救命士などの確保・育成を一層重視する。さらに、第一線の救護能力の向上や迅速な後送態勢の整備を図る。

戴帽式の画像

看護師要員の戴帽(たいぼう)式の様子

5 防衛生産・技術基盤

わが国の防衛生産・技術基盤の維持・強化を早急に図るため、わが国の防衛生産・技術基盤全体の将来ビジョンを示す戦略を策定するとともに、装備品の民間転用などを推進する。

また、防衛装備品の活用などによる平和貢献・国際協力に一層積極的に関与するとともに、防衛装備品などの共同開発・生産などに参画することが求められている。こうした状況を踏まえ、武器などの海外移転に関し、新たな安全保障環境に適合する明確な原則を定める。その際、武器輸出三原則等がこれまで果たしてきた役割にも十分配意したうえで、移転を禁止する場合の明確化、移転を認め得る場合の限定および厳格審査、目的外使用および第三国移転にかかる適正管理の確保などに留意する8

参照IV部1章3節(防衛装備移転三原則)

6 装備品の効率的な取得

装備品の効果的・効率的な取得のため、プロジェクト・マネージャーの仕組みを制度化し、技術的視点も含め、ライフサイクルを通じたプロジェクト管理を強化する。また、さらなる長期契約の導入の可否などを検討し、ライフサイクルを通じての費用対効果の向上を図る。

民間能力の有効活用などによる補給態勢の改革により、即応性・対処能力の向上を目指すとともに、取得プロセスの透明化および契約制度の適正化を不断に追求する。

参照図表II-4-3-5(プロジェクト・マネージャー制度)

図表II-4-3-5 プロジェクト・マネージャー制度

7 研究開発

厳しい財政事情のもと、自衛隊の運用にかかるニーズに合致した研究開発の優先的な実施を担保するため、研究開発の開始にあたり、防衛力整備上の優先順位との整合性を確保する。

また、新たな脅威に対応し、戦略的に重要な分野において技術的優位性を確保し得るよう、最新の科学技術動向、戦闘様相の変化、費用対効果、国際共同研究開発の可能性も踏まえつつ、中長期的な視点に基づく研究開発を推進する。

さらに、安全保障分野にも有効に活用し得るよう、先端技術などの流出を防ぐための技術管理機能を強化しつつ、大学・研究機関との連携の充実などにより、デュアルユース技術の積極的な活用に努める。

以上の目的を達成するための防衛省の研究開発態勢について検討する。

8 地域コミュニティーとの連携

各種事態において自衛隊が的確に対処するため、地方公共団体、警察・消防機関などの関係機関との連携を一層強化する。このため、防衛施設周辺対策事業を引き続き推進するとともに、平素から地方公共団体や地元住民に対し積極的な広報などを行い、その理解および協力の獲得に努める。

部隊の改編などにあたっては、地域の特性に配慮する。同時に、駐屯地などの運営にあたっては、地元経済への寄与に配慮する。

9 情報発信の強化

自衛隊の任務の効果的な遂行に必要な国内外の理解を得るため、戦略的な広報活動を強化し、多様な情報媒体を活用して情報発信の充実に努める。

10 知的基盤の強化

国民の安全保障・危機管理に対する理解を促進するため、教育機関などにおける安全保障教育の推進に取り組む。また、防衛研究所を中心とする研究体制の強化とともに、政府内の他の研究教育機関や国内外の大学、シンクタンクなどとの各種連携を推進する。

シンポジウムの画像

防衛研究所主催のシンポジウムの様子

11 防衛省改革の推進

文官と自衛官の一体感の醸成、防衛力整備の全体最適化、統合運用機能の強化、政策立案・情報発信機能の強化などの実現のため、防衛省の業務・組織を不断に見直し、改革を推進する。

8 14(平成26)年4月1日、防衛装備移転三原則を閣議決定した。