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ダイジェスト 第III部 わが国の防衛のための取組

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実効的な抑止および対処

周辺海空域における安全確保

各種事態に際し、迅速かつシームレスに対応するため、自衛隊は、平素から常時継続的にわが国周辺海空域の警戒監視を行う。

海自は、平素からP-3C哨戒機により、船舶などの状況を監視、空自はレーダーサイト、早期警戒機などによりわが国とその周辺の上空を監視、また、主要な海峡では陸自の沿岸監視隊や海自の警備所などが監視を行っている。

2013(平成25)年には、南西諸島の通過をともなう中国海軍艦艇の活動が合計8回、沖縄南方海域での活動が4回確認されている。また、中国公船が尖閣諸島の領海に断続的に侵入するなど、近年、中国の海軍艦艇や公船などの活動が急速に拡大・活発化している情勢を受け、防衛省・自衛隊は海上保安庁との情報共有など、関係省庁との連携の強化を図っている。

空自は、領空侵犯のおそれがある航空機を発見した場合、戦闘機などを緊急発進させ、状況の確認などの対応を行っている。

2013(同25)年8月にはロシア空軍のTU-95爆撃機が領空を侵犯し、同年9月には国籍不明の無人機(推定)が東シナ海を飛行した。これらの事案に対し、空自は戦闘機を緊急発進させて対応した。

同年11月の中国による「東シナ海防空識別区」設定後も、防衛省・自衛隊は従前どおりの警戒監視などを実施するとともに、引き続き厳正な対領空侵犯措置を行うこととしている。

P-3C哨戒機の画像

警戒監視飛行中のP-3C哨戒機

護衛艦乗員の画像

警戒監視に従事する護衛艦乗員

空自隊員の画像

緊急発進(スクランブル)のためF-2戦闘機に乗り込む空自隊員

TU-95爆撃機の画像

わが国の領空を侵犯したロシアのTU-95爆撃機

国籍不明の無人機の画像

東シナ海を飛行した国籍不明の無人機(推定)

冷戦期以降の緊急発進実施回数とその内訳

わが国周辺の防空識別圏(ADIZ)

中国機およびロシア機の飛行パターン例

島嶼(とうしょ)防衛

島嶼部に対する攻撃に対応するため、部隊などを配置するとともに、平素からの情報収集および警戒監視などにより、兆候を早期に察知し、陸・海・空が一体となった統合運用により、部隊を機動的に展開・集中し、敵の侵攻を阻止・排除する。事前に兆候が得られず万一島嶼を占領された場合には、航空機や艦艇による対地射撃により敵を制圧した後、陸自部隊を着上陸させるなど島嶼を奪回するための作戦を行う。

南西地域における沿岸監視部隊の配置や警備部隊の新編、那覇基地への戦闘機部隊1個飛行隊の増強を行うなど、平素からの防衛基盤を強化する。

侵略を阻止・排除するため、C-2輸送機で空輸可能な機動戦闘車を有する即応機動連隊の新編などを行い、空中機動能力を強化する。さらに、部隊の迅速かつ大規模な輸送・展開能力を確保するため、輸送艦の改修やティルト・ローター機の導入を行う。

島嶼への侵攻があった場合の上陸・奪回・確保のため、本格的な水陸両用作戦機能を備えた水陸機動団(仮称)を新編する。

陸自隊員の画像

日米共同訓練において、ボートで上陸する陸自隊員

MV-22オスプレイの画像

護衛艦「ひゅうが」に着艦する米軍のMV-22オスプレイ

弾道ミサイル攻撃などへの対応

わが国の弾道ミサイル防衛は、イージス艦やペトリオットPAC-3(Patriot Advanced Capability-3)を、自動警戒管制システム(JADGE:Japan Aerospace Defense Ground Environment)により連携させて効果的に行う多層防衛を基本としている。

この体制を強化するため、 「あたご」型2隻へのBMD(Ballistic Missile Defense)能力の付与とペトリオット・システムの能力の向上(弾道ミサイル防衛と巡航ミサイルや航空機への対処の双方に対応可能な能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3 MSE(Missile Segment Enhancement))搭載のための能力向上)やBMD能力を有するイージス艦の増勢(BMD能力を有するイージス艦2隻の増勢)などにより、BMDシステムの整備を推進している。また、平成27年度までに全ての6個高射群にペトリオットPAC-3を配備する。

京都府の空自経ヶ岬(きょうがみさき)分屯基地が米軍TPY-2レーダーの追加配備先として選定され、2013(平成25)年12月、配備に必要な施設・区域を米国に提供した。

北朝鮮は、2013(同25)年および2014(同26)年も、ミサイル発射の示唆を含む挑発的な行動を繰り返し行ったが、防衛省・自衛隊は、必要な対応に万全の態勢を継続している。

護衛艦「きりしま」の画像

SM-3を発射する護衛艦「きりしま」

サイバー空間における対応

自衛隊では、「自衛隊指揮通信システム隊」が24時間態勢で通信ネットワークを監視している。また、侵入防止システムなどの導入、防護システムの整備、人的・技術的基盤の整備、サイバー攻撃対処に関する規則の整備や最新技術の研究なども含めた総合的な施策を行っている。

2014(平成26)年3月には、日々高度化・複雑化するサイバー攻撃の脅威に適切に対応するため、「自衛隊指揮通信システム隊」のもとに「サイバー防衛隊」を新編し、サイバー攻撃対処にかかる体制を充実・強化した。

また、同盟国である米国をはじめとする関係国との二国間または多国間による協力の枠組みを設け、国際社会全体としての取組にも積極的に貢献している。

サイバー防衛隊新編行事の画像

サイバー防衛隊新編行事

自衛隊員の画像

サイバー防衛隊で勤務する自衛隊員

各種災害などへの対応

自衛隊は、自然災害をはじめとする災害の発生時には、地方公共団体などと連携・協力し、被災者や遭難した船舶・航空機の捜索・救助、水防、医療、防疫(ぼうえき)、給水、人員や救援物資の輸送といった様々な活動を行っている。2011(平成23)年の東日本大震災では、大規模震災災害派遣および原子力災害派遣において、最大時10万人を超す隊員が対応した。

自衛隊は、災害派遣を迅速に行うための初動体制を整えており、この部隊をFAST-Force(ファスト・フォース)と呼んでいる。

2013(同25)年10月、台風第26号の接近にともない伊豆大島で発生した大規模な土砂災害への対応のため、人員のべ64,000名による災害派遣活動を、また、2014(同26)年2月には、大雪により道路が寸断され、世帯が孤立した地域への対応のため、人員のべ12,000名による災害派遣活動を行った。

自衛隊は、中央防災会議で検討されている大規模地震への対応のため、2013(同25)年12月、「南海トラフ地震対処計画」を策定した。

隊員の画像

大雪にともなう災害派遣活動に従事する隊員(山梨県小菅村)

陸自隊員の画像

伊豆大島で災害派遣活動に従事する陸自隊員

在外邦人等の輸送への対応

防衛大臣は、外国での災害、騒乱、その他の緊急事態に際し、外務大臣から邦人等の輸送の依頼があった場合、外務大臣と協議をしたうえで、在外邦人等の輸送が可能

輸送手段への車両の追加、輸送対象者の範囲の拡大、武器使用の場所と防護対象者の拡大などを内容とする自衛隊法改正案が2013(平成25)年11月、国会で成立、同月22日に施行された。

これを受け、陸上輸送に際して、即席爆発装置(IED:Improvised Explosive Device)に対する防護性能に優れる輸送防護車を導入することとした。

輸送防護車の画像

輸送防護車

日米安全保障体制

日米安保条約に基づく日米安保体制は、わが国自身の努力とあいまってわが国の安全保障の基軸である。

日米安保体制を中核とする日米同盟は、わが国のみならず、アジア太平洋地域、さらには世界全体の安定と繁栄のための「公共財」として機能している。

わが国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しており、一方で、米国がアジア太平洋地域への関与およびプレゼンスの維持・強化を進めている現状を踏まえると、日米同盟の強化は、わが国の安全の確保にとってこれまで以上に重要となっている。

安倍内閣総理大臣とオバマ米大統領の画像

2014(平成26)年4月に東京で行われた日米首脳会談における安倍内閣総理大臣とオバマ米大統領(内閣広報室)

日米同盟の強化のための取組

日米共同訓練

自衛隊と米軍は、平素から日米共同訓練を行い、相互運用性および日米の共同対処能力向上に努めており、日米安保体制の信頼性と抑止力の維持・向上に大きく寄与している。自衛隊と米軍は、昭和60年度以降、日米共同統合演習を行っている。

コープ・ノース・グアムの画像

日米豪共同訓練(コープ・ノース・グアム)で編隊飛行中の空自と米空軍の航空機

ドーン・ブリッツ13の画像

米国における統合訓練(ドーン・ブリッツ13)において意見交換する海自と米海兵隊の指揮官

雷神2013の画像

日米共同訓練(雷神2013)において調整を行う陸自隊員と米軍人

日米同盟の抑止力および対処力の強化

一層厳しさを増す安全保障環境に対応するため、西太平洋における日米のプレゼンスを高めつつ、グレーゾーンの事態における協力を含め、平素から各種事態までのシームレスな協力態勢を構築する。共同訓練・演習および共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR:Intelligence, Surveillance, and Reconnaissance)活動の拡大と、それらの活動の拠点となる両国の施設・区域の共同使用の拡大を引き続き推進している。

「2+2」会合(平成25年10月3日)

2013(平成25)年10月3日、東京において「2+2」会合を開催し、次のことについて合意した。

①日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の見直し作業を2014(同26)年末までに完了させる。

②サイバー・宇宙分野を含む安全保障・防衛面での二国間の協力をさらに拡大・深化させ、また、オーストラリア・韓国などとの三か国間協力など地域における協力を強化していく。

③在日米軍再編について、普天間飛行場のキャンプ・シュワブへの移設に向けた強い決意を新たにするとともに、沖縄の負担軽減の観点から、従来の合意を早期かつ着実に実施しつつ、様々な新たな措置にも取り組んでいく。

日米の防衛・外務四閣僚の画像

「2+2」会合で安倍内閣総理大臣を表敬する日米の防衛・外務四閣僚(2013(平成25)年10月3日)(内閣広報室)

在日米軍の駐留

在日米軍の駐留に関する枠組み

在日米軍の駐留は日米安保体制の中核的な要素であり、わが国とアジア太平洋地域に対し深く関与するという米国の意思表示でもある。わが国としては、在日米軍の駐留を円滑にするため、日米安保体制の信頼性の向上を図っている。

その一つの施策として、わが国の厳しい財政事情にも十分配慮しつつ見直しを行いながら、在日米軍駐留経費を負担している。

在日米軍の駐留

米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄をはじめとする地元の負担を軽減するため、在日米軍の再編などを進めており、沖縄においては、普天間飛行場の移設、在沖海兵隊のグアム移転、嘉手納以南の土地の返還などに取り組んでいる。

普天間飛行場代替施設建設事業については、公有水面埋立承認願書が2013(平成25)年12月27日、沖縄県知事によって承認された。

一方、2013(同25)年12月17日の沖縄政策協議会において、沖縄県知事から、普天間飛行場の5年以内の運用停止・早期返還、MV-22オスプレイの12機程度の県外の拠点への配備および牧港補給地区の7年以内の全面返還などの要望がなされた。

政府としては、この要望を沖縄県民全体の思いとしてしっかりと受け止め、内閣官房長官、沖縄担当大臣、外務大臣、防衛大臣、沖縄県知事および宜野湾市長で構成される「普天間飛行場負担軽減推進会議」を設置するなど、沖縄の負担軽減に一丸となって取り組んでいる。

また、神奈川県については、2014(同26)年4月の日米合同委員会で、深谷(ふかや)通信所および上瀬谷通信施設の具体的な返還時期について合意した。また、池子住宅地区住宅建設戸数の変更(171戸)についてもあわせて合意した。

普天間飛行場負担軽減推進会議の画像

普天間飛行場負担軽減推進会議の様子(内閣広報室)

アジア太平洋地域における多国間安全保障協力・対話の推進

安全保障協力・対話、防衛協力・交流の意義と変遷

国際協調主義に基づく積極的平和主義の観点から、防衛省・自衛隊は、限られた資源を効果的・効率的に活用するとともに、各国・地域の特性を踏まえ、安全保障協力・対話、防衛協力・交流を多層的に推進している。

能力構築支援をはじめとする実践的な多国間安全保障協力の推進

能力構築支援は、平素から継続的に安全保障・防衛関連分野における人材育成や技術支援などを行い、途上国自身の能力を向上させることにより、地域の安定を積極的・能動的に創出し、グローバルな安全保障環境を改善するという発想に基づく取組である。

平成24年度以降、東ティモール、カンボジア、モンゴル、インドネシア、ベトナムにおいて能力構築支援事業を継続して実施している。

ハイレベルの訪問実績(2013(平成25)年1月~2014(平成26)年7月上旬)

各国との防衛協力・交流の推進

わが国にとって、アジア太平洋地域およびグローバルな安全保障環境を改善し、わが国の安全と繁栄を確保するためには、日米同盟を基軸としつつ、二国間および多国間の対話・協力・交流の枠組みを多層的に組み合わせてネットワーク化して行くことが重要である。このため、防衛省・自衛隊は、各国・地域の特性を踏まえ、多層的な防衛協力・交流をさらに推進している。

海賊対処への取組

わが国は、2009(平成21)年以降、ソマリア沖・アデン湾において海賊対処行動を実施しており、2013(同25)年12月から、より柔軟かつ効果的な部隊運用を行うため、水上部隊はこれまでの直接護衛に加え、CTF(Combined Task Force)151に参加してゾーンディフェンスを行っている。また、2014(同26)年2月からは航空隊もCTF151に参加している。さらに、同年7月には、自衛隊からCTF151司令官と同司令部要員を派遣する方針を決定した。

護衛艦「ありあけ」の画像

民間船舶の護衛を行う護衛艦「ありあけ」

国際平和協力活動への取組

国連平和維持活動への取組

国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)

2013(平成25)年末の騒乱以降、南スーダン派遣施設隊は、避難民保護区域の敷地造成などの避難民支援活動を行っている。

現在、南スーダン派遣施設隊(第6次要員 約400名)およびUNMISS司令部要員(3名)が南スーダン共和国において各種活動を行っている。

(2011(同23)年11月~継続中)

隊員の画像

避難民保護区域の排水溝整備を実施する隊員

国際緊急援助活動への取組

フィリピンにおける国際緊急援助活動

2013(平成25)年11月8日から9日にかけて、大型の台風第30号がフィリピン中部を襲った。政府は、フィリピン政府から要請を受け、11月12日、外務大臣との協議に基づき、防衛大臣は国際緊急援助活動を実施することを決定した。

防衛省・自衛隊は、フィリピン現地運用調整所を設置するとともに、国際緊急援助活動では初となる統合任務部隊を組織し、過去最大規模となる約1,100名態勢で同国における救援活動を実施した。

本活動において、のべ2,646名の診療、のべ11,924名へのワクチン接種、約95,600m2の防疫活動、約630トンの物資の空輸、のべ2,768名の被災民の空輸などを実施した。

(2013(同25)年11月~12月)

フィリピン国際緊急援助活動の画像

フィリピン国際緊急援助活動において日米豪間で調整を行っている様子

マレーシア航空機消息不明事案に対する国際緊急援助活動

本活動において、P-3C哨戒機やC-130H輸送機などのべ6機、派遣隊員約130名が活動に従事し、計46回、約400時間の捜索を行った。

(2014(同26)年3月~4月)

マレーシア航空機の捜索・救助活動の画像

C-130H輸送機によるマレーシア航空機の捜索・救助活動の様子

軍備管理・軍縮・不拡散への取組

わが国は、核兵器、化学兵器および生物兵器といった大量破壊兵器や、大量破壊兵器を運搬する手段であるミサイルおよび関連技術・物資などに関する軍備管理・軍縮・不拡散体制に関する条約や管理体制などの国際的な取組において、積極的な役割を果たしている。