防衛省・自衛隊の様々な活動は、防衛省・自衛隊のみですべてを行えるものではない。国民一人ひとり、そして地方公共団体などの理解と協力があってはじめて可能となる。新防衛大綱は、各種事態において自衛隊が的確に対処するため、地方公共団体、警察・消防機関などとの関係機関との連携を一層強化することとしている。また、防衛省・自衛隊は、民生支援として様々な協力活動を行うとともに、防衛施設1の設置・運用が周辺住民の生活に及ぼす影響をできる限り少なくするよう努めている。こうした活動は、地域社会・国民と自衛隊相互の信頼をより一層深めるとともに、地域コミュニティーの維持・活性化に大きく貢献している。
自衛隊は、地方公共団体や関係機関などからの依頼に基づき、国民とかかわる様々な分野で、民生支援活動を行っている。これらの活動は、国民と自衛隊相互の信頼をより一層深めるものでもあり、日頃から国民生活に役立っているという誇りと自信を隊員に与えている。
陸自は、今日なお、全国各地で発見されている不発弾の処理にあたっており、平成25年度の処理実績は約1,560件、重量にして約57.1トンで、沖縄県での処理量が全体の約40%を占めている。海自も、機雷などの除去・処理を行っており、平成25年度の処理実績は約333個、重量にして約4.8トンであった。また、全国の駐屯地や基地の多くでは、地方公共団体からの要請や近隣住民からの声に応えて、部隊活動に支障のない範囲で施設を開放している。さらに、音楽隊が各地の学校を訪問し、吹奏楽部員などに対する演奏指導を行うなど、地域住民との交流に努めている。
上記に加え、防衛省・自衛隊では、たとえば関係機関からの依頼に基づき、マラソン大会や駅伝大会など各種の運動競技会などにおいて輸送や通信などの支援を行っている。また、防衛医科大学校や一部の自衛隊病院において一般診療を実施しているとともに、医療施設が不足している南西諸島、五島列島、伊豆大島、小笠原諸島などの離島の救急患者を自衛隊の救難機などにより緊急輸送するなど地域医療を支えている。さらに、中小企業者に関する国などの契約の方針を踏まえ、効率性にも配慮しつつ、地元中小企業の受注機会の確保も図っていく。
参照資料70(市民生活の中での活動)、資料71(社会に貢献する活動)
回収した機雷および爆発性危険物を硫黄島で処理する海自掃海艇
国立競技場ファイナルイベントで50年ぶりに国立競技場上空を飛行するブルーインパルス(14(平成26)年5月31日)
昨今の厳しい募集環境および雇用情勢の中、より質の高い人材を確保し、また、比較的若い年齢で退職する自衛官が再就職しやすいようにするためには、地方公共団体や関係機関の協力が不可欠である。
自衛隊の駐屯地や基地は、すべての都道府県に所在し、地域社会と密接なかかわりを持っており、自衛隊が教育訓練や災害派遣など各種の活動を行うためには、地方公共団体などとの緊密な調整など地元からの様々な支援・協力が不可欠である。また、国際平和協力業務などで国外に派遣される部隊は、関係機関から派遣にかかる手続きの支援・協力を受けている。
こうした地元からの支援・協力活動に加え、国際平和協力業務などに従事する隊員に対しても、国民からの激励の手紙などが多数寄せられている。これらは、隊員の士気を高め、自衛隊が国民とともにあることへの自覚を強くするものである。
地方防衛局は、部隊や地方協力本部などと連携し、様々な施策を通じて地方との協力関係の構築に努めている。
具体的には、防衛政策について広く理解を得るため、地域住民を対象とした防衛問題セミナーの開催や、地方公共団体などに対して防衛白書の説明を行っているほか、在日米軍施設・区域周辺の住民と米軍関係者やその家族がスポーツや文化を通して交流する日米交流事業を行っている。また、米軍再編や自衛隊の部隊改編、装備品の配備、訓練などを実施する際、関係する地方公共団体などに対し、これらの施策についての理解を得るために必要な説明や調整を実施している。さらに、大規模災害などの各種事態や事件・事故の発生の際には、必要に応じて、関係する地方公共団体などとの連絡調整にあたっている。たとえば、12(平成24)年4月および12月の北朝鮮による「人工衛星」と称するミサイル発射事案に際しては、ペトリオットPAC-3部隊の沖縄県および首都圏への展開について、本省および部隊などと連携しつつ、関係する地方公共団体などとの連絡調整を実施した。
防衛施設は、演習場、飛行場、港湾、営舎など用途が多岐にわたり、広大な土地を必要とするものが多い。防衛施設の土地面積は、14(同26)年1月1日現在、約1,400平方キロメートル(自衛隊施設の土地面積、在日米軍施設・区域(専用施設)の土地面積および日米地位協定により在日米軍が共同使用している自衛隊施設以外の施設の土地面積の合計)であり、国土面積の約0.37%を占める。このうち、自衛隊施設の土地面積の約42%が北海道に所在する。また、用途別では、演習場が全体の約75%を占める。一方、在日米軍施設・区域(専用施設)の土地面積のうち約24%は、日米地位協定により自衛隊が共同使用している。また、わが国の地理的特性から、狭い平野部に都市や諸産業施設と防衛施設が競合して存在している場合もある。特に、経済発展の過程で多くの防衛施設の周辺地域で都市化が進んだ結果、防衛施設の設置・運用が制約されるという問題が生じている。また、航空機の頻繁な離着陸や射撃・爆撃、火砲による射撃、戦車の走行などが、周辺地域の生活環境に騒音などの影響を及ぼすという問題もある。
参照図表IV-2-2-1(自衛隊施設(土地)の状況)、図表IV-2-2-2(在日米軍施設・区域(専用施設)の状況)
防衛施設は、わが国の防衛力と日米安全保障体制を支える基盤として、わが国の安全保障に欠くことのできないものである。その機能を十分に発揮させるためには、防衛施設と周辺地域との調和を図り、周辺住民の理解と協力を得て、常に安定して使用できる状態に維持することが必要である。このため防衛省は、74(昭和49)年来、「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」(環境整備法)などに基づき、防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策を行ってきたところである。
参照図表IV-2-2-3(防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策)、資料72(防衛施設周辺地域の生活環境の整備などの施策の概要)
ア 環境整備法の施策
自衛隊や米軍の行為あるいは飛行場をはじめとする防衛施設の設置・運用によりその周辺地域において生じる航空機騒音などの障害について、防衛省は環境整備法に基づき、その防止、軽減、緩和などの措置を講じてきた。
同法に基づく施策については、関係地方公共団体などから充実の要望が強いことなどを踏まえ、11(平成23)年に同法を一部改正し、特定防衛施設周辺整備調整交付金について、従来の公共用の施設の整備に加え、医療費の助成などのいわゆるソフト事業への交付を可能とし、関係地方公共団体にとってより使い勝手のよい、より効果的な措置とするための見直しを行ったほか、交付対象となる特定防衛施設として指定することができる防衛施設の追加などを行った。また、住宅防音工事を重点的に実施し、工事のさらなる進捗を図っている。
なお、特定防衛施設周辺整備調整交付金については、13(同25)年11月に実施された行政事業レビューにおいて、「交付対象施設の利用状況や基金の執行状況等の把握、基本的な行政サービスへの上乗せなどへの交付対象の厳格化、PDCAサイクル2に関する具体的なルールの策定など、防衛省としてもPDCAサイクルを徹底させる取組を進めるべきではないか。併せて、交付金に関する地域住民への周知を高める活動も徹底すべきではないか。」と取りまとめられたことを踏まえ、これらを徹底するための取組を行い、交付金の効果の向上を図っている。
参照資料73(防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律の一部改正)
イ 今後の防衛施設と周辺地域との調和を図るための検討
防衛省としては、防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策のあり方について、関係地方公共団体からの要望などを踏まえ、厳しい財政事情を勘案し、より実態に即した効果的かつ効率的なものとなるよう引き続き検討している。
参照図表IV-2-2-4(平成26年度基地周辺対策費(歳出ベース))