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第III部 わが国の防衛のための取組

2 在日米軍再編に関する経緯

III部2章2節2項で述べた、06(平成18)年5月の「再編実施のための日米ロードマップ」(ロードマップ)において示された在日米軍などの兵力態勢再編の進捗状況は、図表III-2-3-2のとおりである。

参照図表III-2-3-2(ロードマップにおいて示された在日米軍などの兵力態勢の再編の進捗状況)

図表III-2-3-2 「再編の実施のための日米ロードマップ」に示された在日米軍などの兵力態勢の再編の進捗状況

1 「2+2」共同発表(12(平成24)年4月27日)

在日米軍再編については、米国との間でも様々なレベルで協議を続けてきたところであるが、これまでの協議を経て、日米両政府は、

① 沖縄の目に見える負担軽減を早期かつ着実に図る方策を講ずる必要があること

② 12(同24)年1月に公表された米国の国防戦略指針にも示されている、アジア太平洋地域重視の戦略と米軍再編計画の調整を図る必要があること

③ 米国議会においては、グアム移転にかかる経費を削減することが求められていること

などの要因を踏まえ、在日米軍再編計画の調整にかかる本格的な協議を行い、12(同24)年4月27日、「2+2」共同発表を公表した。

前述のとおり、同共同発表は、11(同23)年6月の「2+2」共同発表以降の在日米軍再編計画に関する重要な進展や06(同18)年のロードマップで示された計画の調整を決定するものである。

当初の計画では、沖縄に所在する第3海兵機動展開部隊(III MEF(Marine Expeditionary Force))の司令部要素をグアムへ移転することとしていたが、部隊構成を変更し、司令部・陸上・航空・後方支援の各要素から構成される海兵空地任務部隊(MAGTF:Marine Air Ground Task Force)を日本、グアム、ハワイに置くとともにオーストラリアへローテーション展開させることとした。これは、米国がアジア太平洋地域において、近年の安全保障環境の変化を受け、海兵隊の部隊構成の見直しを行っていることによるものである。この結果、日米両政府は、海兵隊の沖縄からグアムへの移転およびその結果として生ずる嘉手納以南の土地の返還の双方を、普天間飛行場の代替施設に関する進展から切り離すことなどを決定した。

本共同発表の概要は次のとおりである。

(1)前文

① 06(同18)年5月の「再編のロードマップ」に定められた計画の調整を決定

② 海兵隊の沖縄からグアムへの移転およびその結果として生ずる嘉手納以南の土地の返還の双方を、普天間飛行場の代替施設に関する進展から切り離すことを決定

③ 米海兵隊の新しい態勢に加え、日本の防衛態勢の強化および日米間の動的防衛協力の推進により、日米同盟全体の抑止力が強化される旨確認

(2)グアムと沖縄における部隊構成(人数は定員)

① 米国は、MAGTFを沖縄、グアム、ハワイに置くとともに、オーストラリアへのローテーション展開を構築

② 約9,000人の海兵隊員がその家族と共に沖縄から日本国外に移転

③ 沖縄における海兵隊の最終的なプレゼンスはロードマップの水準に従ったものとする。

④ グアムにおける海兵隊は約5,000人となる。

⑤ 海兵隊のグアム移転にかかる米国政府による暫定的な費用見積りは、86億ドル(2012米会計年度ドル)。日本側の財政的コミットメントは、09(同21)年のグアム協定第1条に規定された28億ドル(2008米会計年度ドル)の額を限度とする直接的な資金提供となる。他の形態での財政支援(出融資など)は利用しない。次の(3)②の協力で貢献する場合もこのコミットメントの内数

(3)地域の平和、安定および繁栄を促進するための新たなイニシアティブ

① アジア太平洋地域の平和、安定および繁栄を促進する重要性を確認。日本政府はODAの戦略的な活用(例:沿岸国への巡視船の提供など)を含む様々な措置をとる。

② 日米両政府は、グアムおよび北マリアナ諸島連邦において日米が共同使用する訓練場の整備に向けた協力を検討し、12(同24)年末までに協力分野を特定

(4)沖縄における土地返還

① 1.手続後の速やかな返還が可能な区域:キャンプ瑞慶覧の一部(西普天間住宅地区、および施設技術部地区内の倉庫地区の一部)、牧港補給地区の一部(北側進入路、第5ゲート付近)

2.県内移設後に返還が可能な区域:牧港補給地区の一部(倉庫地区の大半を含む)、キャンプ瑞慶覧の一部(インダストリアル・コリドーなど)、キャンプ桑江、那覇港湾施設、陸軍貯油施設第1桑江タンク・ファーム

3.海兵隊の国外移転後に返還が可能な区域:キャンプ瑞慶覧の一部、牧港補給地区の残余

② 沖縄に残る施設・区域の統合計画を日米が共同で12(同24)年末までに作成

(5)普天間代替施設と普天間飛行場

① 現行の移設案が唯一の有効な解決策であることを再確認

② 代替施設が完全に運用可能となるまでの間、普天間飛行場を安全に運用し、環境を保全するために必要となる補修事業について、日米が相互に貢献

参照資料34(「2+2」共同発表(仮訳)(平成24年4月27日))

2 「2+2」会合(13(平成25)年10月3日)における成果

13(同25)年10月の「2+2」会合の共同発表には、12(同24)年4月の「2+2」共同発表以降の在日米軍再編に関する協議の成果が盛り込まれた。日米両国は、普天間飛行場のキャンプ・シュワブへの移設に向けた強い決意を新たにするとともに、沖縄の負担軽減の観点から、従来の合意を早期かつ着実に実施しつつ、様々な新たな措置にも取り組んでいくことで一致した。同共同発表における在日米軍再編にかかる記述は次のとおりである。

○沖縄における再編

・土地の返還:13(同25) 年4 月の統合計画に基づく土地の返還に関する進展を歓迎

・普天間飛行場の移設:キャンプ・シュワブ辺野古崎地区への移設が普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であることを確認。両政府の強いコミットメントを再確認

・ホテル・ホテル訓練区域:13(同25)年11 月末までに、同区域の一部における使用制限の一部解除について原則的取決めを作成するよう指示。その他のあり得べき措置について協議を継続

・環境:返還前の土地の利用計画策定の円滑化を目的として、13 (同25)年11 月末までに、返還予定の米軍施設および区域への立入りの枠組みに実質的に了解することを決定

○岩国

・KC-130飛行隊の普天間飛行場から岩国飛行場への移駐に関する協議の加速化を確認

・海上自衛隊が岩国飛行場に維持されることを確認

・第5空母航空団の岩国飛行場への移駐が、17(同29)年頃までに完了することを認識

○グアム

・在沖縄米海兵隊の日本国外への移転の重要性(沖縄への影響の軽減、米軍の前方プレゼンスの維持、グアムの戦略的な拠点としての発展の促進)を確認

・09(同21) 年のグアム協定の改正議定書への署名を発表

・グアムおよび北マリアナ諸島連邦における訓練場の整備に対する日本国の資金提供の重要性に留意。この資金提供は、米海兵隊のグアム移転を支え、自衛隊および米軍による訓練場の共同使用を可能とし、同盟にとり有益

・訓練場を含む施設および基盤の整備に関する費用の内訳を示す作業を完了

・20(同32)年代の前半に沖縄からグアムへの米海兵隊部隊の移転が開始することを公表

○高度な能力

・より高度な能力を日本国内に配備・展開することの重要性を確認:①MV-22オスプレイ、②P-8(13(同25)年12月以降)、③グローバル・ホーク(14(同26)年春以降)、④F-35B(17(同29)年)

なお、これに加えて、14(同26)年4月6日の日米防衛相会談において、17(同29)年までに弾道ミサイル防衛機能を備えたイージス艦2隻を日本へ追加的に配備することを計画している旨、ヘーゲル米国防長官から発言があった。

参照資料35(「2+2」共同発表(仮訳)(平成25年10月3日))