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第III部 わが国の防衛のための取組

2 国連平和維持活動などへの取組

国連PKOは、世界各地の紛争地域の平和と安定を図る手段として、伝統的な停戦監視などの任務に加え、近年では、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR:Disarmament,Demobilization and Reintegration)・治安部門改革(SSR:Security Sector Reform)、選挙、人権、法の支配などの分野における支援、政治プロセスの促進、文民の保護(POC:Protection of Civilian)などを任務とするようになっている。現在、16のPKOおよび12の政治・平和構築ミッションが設立されている。(14(平成26)年4月末現在)

また、紛争や大規模災害による被災民などに対して、人道的な観点や被災国内の安定化などの観点から、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)などの国際機関や各国政府、非政府組織(NGO:Non-Governmental Organization)などにより、救援や復旧活動が行われている。

これまで、わが国は20年以上にわたり、国際平和協力のため、カンボジア、ゴラン高原、東ティモール、ネパール、南スーダンなど、様々な地域において国際平和協力業務などを実施し、その実績は内外から高い評価を得ている。今後、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、わが国に対する国際社会からの評価や期待を踏まえ、国際平和協力業務などを積極的かつ多層的に推進していく。その際、先進諸国が「量」よりも「質」や「費用対効果」を志向する中、自衛隊がなすべき協力の態様についてもより深い検討が必要である。また、国際平和協力業務などについては、自衛隊が蓄積した経験と施設分野などにおける高度な能力を活用した活動を引き続き積極的に実施するとともに、現地ミッション司令部や国連PKO局などにおける責任ある職域への自衛隊員の派遣を拡大するなどして、より主導的な役割を果たすことを重視していくことから、防衛省として、政府全体の検討に積極的に参加していく。

1 国際平和協力法の概要など

92(同4)年に成立した「国際平和維持活動等に対する協力に関する法律」(国際平和協力法)は、①国際連合平和維持活動4、②人道的な国際救援活動5、③国際的な選挙監視活動の三つの活動に対し適切かつ迅速な協力を行うための体制を整備するとともに、これらの活動に対する物資協力のための措置などを講じ、もってわが国が国連を中心とした国際社会の平和と安定のための努力に積極的に寄与することを目的としている。

また、同法では、国連平和維持隊への参加にあたっての基本方針(いわゆる参加5原則)が規定されている。

参照図表III-3-4-3(国連平和維持隊への参加にあたっての基本方針(参加5原則))

図表III-3-4-3 ‌国連平和維持隊への参加にあたっての基本方針(参加5原則)

2 国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS:United Nations Mission in the Republic of South Sudan)
(1)UNMISSへの派遣の経緯など

スーダンにおいては、05(同17)年1月、スーダン政府とスーダン人民解放運動・軍が南北包括和平合意(CPA:Comprehensive Peace Agreement)に署名したことを受けて、国連スーダン・ミッション(UNMIS:United Nations Mission in Sudan)が設立された。

わが国は、08(同20)年10月以降、UNMIS司令部要員(兵站幕僚および情報幕僚)として陸上自衛官2名を派遣していたが、11(同23)年7月、南スーダン独立にともなってUNMISの任務は終了した。

一方、南スーダンの独立を受けて、国連安保理は、南スーダン政府が効果的かつ、民主的に統治されるとともに、同国が近隣国と良好な関係を確立する能力を強化する観点から、平和と安全の定着および南スーダンの発展のための環境構築の支援などを目的として、国連安保理決議第1996号を採択し、同年7月、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)が設立された。

政府は、同年8月に来日した潘基文(パン・ギムン)国連事務総長によるUNMISSに対する協力、特に陸自施設部隊の派遣要請を受け、数度にわたる現地調査を実施したうえで、同年11月にUNMISSに司令部要員2名(兵站幕僚および情報幕僚)の派遣、同年12月には同じく自衛隊の施設部隊、現地支援調整所(当時)および司令部要員1名(施設幕僚)などの派遣をそれぞれ閣議決定した。

南スーダンの平和と安定は、アフリカ全体の安定にとって重要であり、かつ国際社会で対応すべき重要な課題であるため、わが国としても同国の国づくりに協力していく必要がある。防衛省・自衛隊として、これまでのPKOにおいて実績を積み重ね、国連も高い期待を寄せているインフラ整備面での人的な協力を行うことで、同国の国づくりに貢献することが可能と考えている。

参照図表III-3-4-4(南スーダン周辺図)、I部2章1節2項5(スーダン・南スーダン情勢)

図表III-3-4-4 南スーダン周辺図

(2)自衛隊の活動

12(同24)年1月、南スーダンの首都ジュバおよびウガンダにおいて、自衛隊のPKO活動では初めての試みである現地支援調整所(当時)を設置し、派遣施設隊が行う活動に関する調整を開始した。

12(同24)年3月、派遣施設隊は、国連施設内において宿営地を設営しつつ、活動準備などを行い、国連施設内での施設活動を開始した。また、同年4月からは、国連施設外での施設活動を開始した。同年6月より国際機関との連携案件を、同年10月からは、「オールジャパンプロジェクト」としてODA事業との連携案件をそれぞれ開始している。13(同25)年5月28日には、自衛隊の活動地域を拡大する旨、内閣官房長官が発表し、同日、防衛大臣により、派遣施設隊の活動地域拡大に関する自衛隊行動命令が発出された。これにより、派遣施設隊の活動地域は、これまでのジュバおよびその周辺に加えて東および西エクアトリア州にも拡大された。本件拡大は、国連側からの要望を受けて調整を行ってきたものであり、本件拡大によってわが国として、南スーダンの国づくりに一層貢献することが可能となった6。13(同25)年12月以降、南スーダンにおける治安情勢が悪化したため、派遣施設隊はジュバの国連施設内において、避難民への支援として、避難民保護区域の敷地造成などを実施している。

同年12月23日には、国連などの要請を受け、緊急の必要性・人道性がきわめて高いことにかんがみ、国連に対し、弾薬1万発を譲渡した7

参照図表III-3-4-5(UNMISSの組織)、図表III-3-4-6(南スーダン派遣施設隊の概要)

図表III-3-4-5 UNMISSの組織

図表III-3-4-6 南スーダン派遣施設隊の概要

道路整備の画像

ナバリ地区コミュニティー道路の整備

簡易歩道竣工式の画像

ボンゴロギ小学校簡易歩道竣工(しゅんこう)式

小野寺防衛大臣の画像

南スーダンで活動する自衛隊員を視察・激励する小野寺防衛大臣

(3)UNMISSにおける日豪協力について

これまで、防衛省・自衛隊は、イラク人道復興支援活動や国連平和維持活動などの現場において、オーストラリア軍と様々な協力を行ってきた。UNMISSにおいても、日豪両国が活動しており、12(同24)年8月31日、 UNMISSの業務を行うために派遣されたオーストラリア軍要員2名が対外調整班(派遣当時は現地支援調整所)において業務調整を行っている。

3 国連平和維持活動局への自衛官の派遣

防衛省・自衛隊は、国際連合平和維持活動局(国連PKO局)軍事部部隊形成課に1名の自衛官を派遣しており、13(同25)年9月から約2年間の予定で、PKOミッションの部隊編成や要員の選定、加盟国との了解覚書に関する協議などの業務を行っている。

参照資料60(国際機関への防衛省職員の派遣実績)

4 アフリカのPKOセンターへの講師などの派遣

防衛省・自衛隊は、アフリカ諸国の平和維持活動における自助努力を支援するため、PKO要員の教育訓練を行うアフリカPKOセンターなどに自衛官を講師として派遣しており、これらPKOセンターの機能強化を通じ、アフリカの平和と安定に寄与している。08(同20)年11月におけるアフリカ紛争解決平和維持訓練カイロ地域センター(CCCPA:Cairo Regional Center for Training on Conflict Resolution and Peacekeeping in Africa)への派遣以降、14(同26)年5月までに女性自衛官1名を含むのべ15名(計13回・計6か国)の自衛官を派遣した。派遣自衛官は、国際平和協力活動の現場における現地住民との関係構築の重要性や自衛隊が経験した国際緊急援助活動の講義など、自衛隊が海外での活動で得た経験や教訓についての教育を行ったほか、14(同26)年3月から5月には、エチオピア国際平和維持訓練センター(EIPKTC:Ethiopian International Peacekeeping Training Center)において、講師以外では初となる国際コンサルタントとして教育に関する助言を行うとともに、PKO要員の人材育成にかかるカリキュラムを策定するなどにより、現地関係者や受講者から高い評価を受けている。

参照図表III-3-4-7(アフリカのPKOセンターへの講師などの派遣状況))

図表III-3-4-7 ‌アフリカのPKOセンターへの講師などの派遣状況

講義を行う海自隊員の画像

ケニアPKOセンターで講義を行う海自隊員

5 国連PKO部隊マニュアルの策定

防衛省・自衛隊は、国際平和協力活動において、より主導的な役割を果たすため、国連本部が進める国連PKO部隊マニュアルの策定を支援し、工兵(施設)に関する分科会の議長国を務めている。

14(同26)年3月には、東京で工兵分科会の専門家会合が開催され、14か国と複数の国際機関の参加者が、工兵部隊マニュアル作成に向けた基本的な考え方について議論した。また、同年6月には、インドネシアで第2回目となる専門家会合が行われるなど、15(同27)年初頭の完成を目指して、わが国主導のもとで各国の協力が進められている。

4 国連決議に基づき、武力紛争当事者間の武力紛争再発防止に関する合意の遵守の確保、武力紛争の終了後に行われる民主的な手段による統治組織の設立の援助、その他紛争に対処して国際の平和と安全を維持するために国連の統括のもとに行われる活動

5 国連決議または国連などの国際機関の要請に基づき、紛争による被災民の救援や被害の復旧のため、人道的精神に基づいて国連その他の国際機関または各国が行う活動

6 国連のニーズに応じて東および西エクアトリア州での活動も実施予定であったが、13(平成26)年12月以降の南スーダンにおける武装衝突などを受け、派遣部隊はジュバにおける避難民対応に集中することになったため、東エクアトリア州での本格的な活動は実施していない。

7 14(平成26)年、譲渡した弾薬が日本隊に返還