Contents

第II部 わが国の安全保障・防衛政策

2 自衛隊の統合運用体制

拡大、多様化する自衛隊の任務を迅速かつ効果的に遂行するため、防衛省・自衛隊は、陸・海・空自を一体的に運用する統合運用体制をとっている。現下の安全保障環境に照らしても、統合運用体制は引き続き強化すべきものであることから、統幕の機能強化をはじめ、統合運用基盤の強化に取り組んでいる。

1 統合運用体制の概要
(1)統幕長の役割

ア 統幕長は、統一的な運用構想を立案し、自衛隊の運用に関する軍事専門的観点からの大臣の補佐を一元的に行う。

イ 自衛隊の運用に関する大臣の指揮は統幕長を通じて行い、自衛隊の運用に関する命令は、統幕長が執行する。その際、統合任務部隊2が組織された場合はもとより、単一の自衛隊の部隊を運用して対処する場合であっても、大臣の指揮命令は、統幕長を通じて行われる。

(2)統幕長と他の幕僚長との関係

統幕は、陸・海・空幕から移管・集約した自衛隊の運用に関する機能を担い、陸・海・空幕は、人事、防衛力整備、教育訓練などの部隊を整備する機能を担う。

参照図表II-2-2-3(自衛隊の運用体制および統幕長と陸・海・空幕僚長の役割)

図表II-2-2-3 自衛隊の運用体制および統幕長と陸・海・空幕僚長の役割

2 統合運用体制の充実のための基盤整備

統合運用体制では、陸・海・空自の各部隊間における確実な指揮命令の伝達と迅速な情報共有が重要である。これらを支える基盤として、これまで防衛省・自衛隊の共通ネットワークである防衛情報通信基盤(DII:Defense Information Infrastructure)や、各自衛隊の主要な指揮システムなどと接続して情報を集約し防衛大臣などの指揮監督を支援する中央指揮システム(CCS:Central Command System)を整備してきた。統合運用基盤を強化するため、衛星通信を含む高度な情報通信ネットワークを活用した指揮統制機能および情報共有態勢を保持することとされており3、引き続き内外の優れた情報通信技術を利用したより広範・機動的な情報通信態勢の構築を進めている。

各部隊においても、平素から各種事態に対応するための計画の作成などを行うとともに、統合訓練などを通じて、任務を遂行できる態勢を維持しておく必要がある。そのため主要部隊司令部には、他自衛隊の幕僚を平素から配置するとともに、必要に応じて幕僚を増員することとしている。

これまでの実績を踏まえつつ、教育訓練の充実、自衛隊の司令部組織のあり方、統合運用に適した人材の育成、装備品の共通化などについて、より効果的な運用体制を目指して引き続き検討し、必要な措置を講じていく。

2 自衛隊法第22条第1項または第2項に基づき、特定の任務を達成するために特別の部隊を編成し、または隷属する指揮官以外の指揮官の一部指揮下に所要の部隊を置く場合であって、これらの部隊が陸・海・空自の部隊のいずれか2以上からなるものをいう。

3 衛星通信は、広域性・即時性などの特徴を活かし、周辺海域において警戒監視活動を行う護衛艦や航空機との通信、被災地や海外に展開する部隊との通信などに利用されている。