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第III部 わが国の防衛のための取組

9 在外邦人等の輸送への対応

防衛大臣は、外国での災害、騒乱、その他の緊急事態に際し、外務大臣から邦人などの輸送の依頼があった場合、外務大臣と協議をしたうえで、自衛隊法第84条の3(在外邦人等の輸送)に基づき、当該在外邦人等の輸送を行うことができる。その際、自衛隊は、派遣先国において輸送の対象となる在外邦人等を防護し、航空機・船舶・車両まで安全に誘導・輸送する。このため、陸自ではヘリコプター隊と誘導輸送隊30の要員を、海自は輸送艦などの艦艇(搭載航空機を含む)を、空自では輸送機部隊と派遣要員をそれぞれ指定するなど待機態勢を維持している。

在外邦人等の輸送は94(平成6)年11月の自衛隊法改正により自衛隊の任務として位置づけられ、13(同25)年1月のアルジェリアにおける邦人に対するテロ事件においては、空自特別航空輸送隊(千歳(ちとせ)基地所属)の政府専用機をアルジェリアに派遣し、7名の邦人と9名の御遺体を本邦に輸送した。この事件の教訓を踏まえ、同年11月15日に陸上輸送の手段に車両を追加することなどを内容とする自衛隊法改正案が国会で成立し、同月22日から施行された。これを受け、陸上輸送に際して、不測の事態に対しての防護力を一層充実させるとともに、対応可能な事態の範囲を広げるとの観点から、即席爆発装置(IED:Improvised Explosive Device)に対する防護性能に優れる輸送防護車を導入することとした。

参照図表III-1-1-19(在外邦人等の輸送のイメージ)、図表III-1-1-20(自衛隊法改正の主な内容)、資料21(自衛隊の主な行動)資料22(武力行使および武器使用に関する規定)

図表III-1-1-19 在外邦人等の輸送における下令手続およびイメージ

図表III-1-1-20 自衛隊法改正の主な内容

在外邦人等の輸送は、陸・海・空自の緊密な連携が必要となることから、平素から協同訓練を行っている。また、毎年タイで行われている多国間共同訓練(コブラ・ゴールド)における在外邦人等の輸送訓練に、在タイ日本国大使館の協力を得て、同大使館職員、その家族らとともに参加し、14(同26)年の訓練では、初めて空自のC-130H輸送機を派遣した。こうした訓練を通じ、外務省との連携要領や海外における自衛隊の活動要領への習熟に努めている。

輸送訓練の画像

コブラ・ゴールド14における在外邦人等の輸送訓練で空自C-130H輸送機への誘導を行う陸自隊員

30 自衛隊の航空機・艦艇とともに派遣され、現地において在外邦人等の誘導・輸送・防護にあたるため、臨時に編成される部隊