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第III部 わが国の防衛のための取組

3 能力構築支援をはじめとする実践的な多国間安全保障協力の推進

1 能力構築支援への積極的かつ戦略的な取組
(1)能力構築支援実施の意義

近年、人道支援・災害救援、地雷・不発弾処理、防衛医学、海洋安全保障、国連平和維持活動などの安全保障・防衛関連分野における関係国の能力を向上させる能力構築支援(キャパシティ・ビルディング)の重要性が認識されている。

能力構築支援は、平素から継続的に安全保障・防衛関連分野における人材育成や技術支援などを行い、途上国自身の能力を向上させることにより、地域の安定を積極的・能動的に創出し、グローバルな安全保障環境を改善するという発想に基づく取組である。

能力構築支援に取り組むことは、①支援対象国の安全保障・防衛関連分野による能力が向上し、自らグローバルな安全保障環境の改善に貢献することを可能にする、②支援対象国の要請に応えることにより、二国間関係の強化が図られる、③米国やオーストラリアをはじめとする他の支援国との関係強化につながる、④地域の平和と安定に積極的・主体的に取り組むわが国の姿勢が、国民や支援対象国に認識されることにより、防衛省・自衛隊および日本全体への信頼が向上する、といった意義がある。

また、こうした取組は自衛隊自体の能力向上にもつながるものである。

このため、平成23年度に、内部部局に能力構築支援室を新編するとともに、主に東南アジア諸国において、現地調査や具体的なニーズの把握や分析を行い、平成24年度以降、能力構築支援事業を継続して実施している。

(2)具体的な活動

ア 長期派遣事業

(ア)事業の概要

長期派遣事業は、講義や実習など、規模が大きく体系的な人材育成などを行うため、比較的長期にわたり、事務官、自衛官、NGO(Non-Governmental Organization)などの要員からなるチームを派遣するものであり、これまでに東ティモールおよびカンボジアにおいて活動を行った。

(イ)東ティモールにおける活動

12(平成24)年12月から13(同25)年3月までの間、陸上自衛官2名、事務官1名、NGOの要員4名を、東ティモール軍メテナロ基地などに派遣し、人道支援・災害救援分野の能力向上に寄与する装備品の維持・整備技術に関する人材育成事業(第I期)を行った。また、同年10月から14(同26)年3月までの間、陸上自衛官最大8名を含む最大15名の要員をもって人材育成事業(第II期)を実施した。

(ウ)カンボジアにおける活動

13(同25)年1月から3月までの間、陸上自衛官4名、事務官1名、NGOの要員6名を、カンボジア国家平和維持・地雷処理爆発性残存物除去センター(NPMEC:National Centre for Peacekeeping Forces, Mines and ERW Clearance)の訓練センターに派遣し、道路構築などの施設分野に関する人材育成事業(第I期)を行った。また、同年12月から14(同26)年3月までの間、陸上自衛官最大16名を含む最大23名の要員をもって、実習教育を含む人材育成事業(第II期)を実施した。

講義を行う陸自隊員の画像

カンボジアにおいて講義を行う陸自隊員

イ 短期派遣事業

短期派遣事業は、セミナーにおける講義などを行うため、知見を有する自衛官などを短期間派遣するものである。

これまでに、防衛省・自衛隊は、モンゴルに陸上自衛官など、インドネシアに海上自衛官など、ベトナムに海上・航空自衛官などを派遣した。

参照図表III-3-1-6(能力構築支援短期派遣事業の活動状況)

図表III-3-1-6 能力構築支援短期派遣事業の活動状況

講義を行う空自隊員の画像

ベトナムにおいて講義を行う空自隊員

ウ 招へいなど

要員の招へいは、相手国側の実務者などを招待し、わが国において行う教育訓練などを視察・研修させるものであり、これまでに、防衛省・自衛隊は、ベトナム、モンゴルおよびインドネシアから軍関係者を招へいした。

13(同25)年には、ベトナム国防省およびモンゴル軍参謀本部から将官を含む実務者を招へいし、自衛隊のPKO分野・潜水医学分野・衛生分野の取組について紹介した。

また、同年11月、陸自東北方面隊の震災対処訓練に、ADMMプラス人道支援・災害救援EWGの新旧共同議長国であるラオスおよびベトナムの軍からオブザーバーを招へいし、訓練状況について紹介した。

さらに、14(同26)年2月にはインドネシア海軍、3月にはベトナムおよびモンゴルから実務者を招へいし、自衛隊の海洋学分野・飛行安全分野・施設分野の取組について紹介した。

2 パシフィック・パートナーシップ

07(同19)年より行われているパシフィック・パートナーシップ(PP:Pacific Partnership)は、米海軍を主体とする艦艇が域内各国を訪問して、医療活動、文化交流などを行い、各国政府、軍、国際機関およびNGOとの協力を通じ、参加国の連携強化や国際災害救援活動の円滑化などを図る活動である。わが国は、07(同19)年以降、自衛隊医官や部隊などを派遣している。

14(同26)年6月から7月の間、ベトナム、カンボジアおよびフィリピンに自衛隊医官、陸自施設要員、海自艦艇および空自輸送機を派遣するとともに、カンボジアおよびフィリピンにおいてはNGOとも協力して、医療活動や文化交流などを行った。

3 多国間共同訓練
(1)アジア太平洋地域での多国間共同訓練の意義

アジア太平洋地域では、00(同12)年より、従来から行っていた戦闘を想定した訓練に加え、人道支援・災害救援、非戦闘員退避活動(NEO:Non-combatant Evacuation Operation)などの非伝統的安全保障分野を取り入れた多国間での訓練への取組を始めるようになった。

このような多国間の共同訓練に参加し、また主催することは、自衛隊の各種技量の向上はもとより、関係国間の各種調整や意見交換を通じ、協力の基盤を作るうえで重要であり、防衛省・自衛隊としても、引き続き、これらの訓練に積極的に取り組んでいる。

参照資料47(多国間共同訓練の参加など(最近3年間))

(2)多国間共同訓練への取組

ア 多国間共同訓練の参加・主催

02(同14)年4月、第2回西太平洋潜水艦救難訓練を海自が初めて主催し、同年10月にも海自が多国間捜索・救難訓練を主催した。11(同23)年3月には、ARFの枠組みで2回目となる災害救援実動演習(ARF-DiREx2011)をわが国とインドネシアが共催し、防衛省・自衛隊からも要員が参加した。また、13(同25)9月、海自が第6回西太平洋潜水艦救難訓練を主催した。

また、自衛隊は、05(同17)年以降毎年行われている、米・タイ共催の多国間共同訓練(コブラ・ゴールド)に参加している。14(同26)年2月に行われた「コブラ・ゴールド14」では、指揮所演習、人道・民生支援活動の医療部門、在外邦人等輸送訓練に参加した。さらに、自衛隊は、10(同22)年以降、米国の提唱する国連平和維持活動にかかる多国間共同訓練GPOI(Global Peace Operations Initiative)キャップストーン演習に参加している。13(同25)年3月ネパールで行われた「シャンティ・プラヤ-2」では幕僚訓練および実動訓練に参加した。

また、陸自は13(同25)年に引き続き、14(同26)年6月、米国およびモンゴル共催の多国間共同訓練(カーン・クエスト14)に参加した。

海自は、13(同25)年9月、オーストラリアにおける多国間共同訓練(トリトン・センテナリ-2013)に参加した。また、14(同26)年2月、ニュージーランドで行われた西太平洋掃海訓練に、同年3月には、インドネシアが主催したASEANおよび周辺国海軍による多国間共同訓練「コモド」に参加した。空自は、同年2月、グアムで行われた「コープ・ノース・グアム14」に参加した。統幕は、同年4月、タイおよびマレーシア共催の「ASEAN災害実動演習」に参加した。同年6月~8月の間、海自は米海軍が主催する多国間共同訓練RIMPAC(rim of the Pacific exercize)(リムパック)2014に参加し、対潜戦・対水上戦・対機雷戦などの訓練を実施している。また、今回、同訓練に陸自部隊が初めて参加し、水陸両用訓練などを行っている。

トリトン・センテナリ-2013の画像

トリトン・センテナリ-2013においてフランス海軍艦艇「ヴァンデミエール」と訓練中の護衛艦「まきなみ」(手前)

コブラ・ゴールド14の画像

コブラ・ゴールド14における在外邦人等輸送訓練の様子

イ 多国間における机上演習など

01(同13)年9月、わが国で行った第4回日露捜索・救難共同訓練に、アジア太平洋地域の8か国からオブザーバーの参加を得て以来、諸外国からのオブザーバーの招へいにも取り組んでいる。

また、陸自は、02(同14)年以降、多国間協力の一環として、毎年、アジア太平洋地域多国間協力プログラム(MCAP:Multinational Cooperation program in the Asia Pacific)を主催し、関係各国の実務者を招へいしている。13(同25)年8月には、アジア太平洋地域から過去最多となる25か国および行政機関などの組織から参加を得て、「アジア太平洋地域の一層の安定に向けて~人道支援・災害救援の実効性向上のための陸軍種協力~」をテーマとして、シナリオに基づく机上演習などを行った。

MCAPの画像

陸自が主催したアジア太平洋地域多国間協力プログラム(MCAP)の様子