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第III部 わが国の防衛のための取組

4 同盟強化の方向性

前項のとおり、13(平成25)年の「2+2」共同発表においては、将来にわたって同盟の信頼性を確実なものとするため、二国間の安全保障および防衛協力の内容として、共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動、共同訓練・演習、施設の共同使用、サイバー空間における協力などが盛り込まれている。また、新防衛大綱においても、本共同発表で示された、二国間の安全保障および防衛協力の項目の多くが、日米同盟の抑止力および対処力の強化と幅広い分野における協力として盛り込まれた。こうした取組を通じて日米同盟を強化していくことが、わが国の安全の確保のみならず、アジア太平洋地域を含む国際社会の平和と安定にとって重要である。

1 日米同盟の抑止力および対処力の強化

新防衛大綱では、日米同盟の抑止力および対処力の強化として、西太平洋における日米のプレゼンスを高めつつ、グレーゾーンの事態における協力を含め、平素から各種事態までのシームレスな協力態勢を構築するとしている。このため、日米間では、平素からの協力の具体策の一つとして、共同訓練・演習および共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動の拡大と、それらの活動の拠点となる両国の施設・区域の共同使用の拡大を引き続き推進している。これら三つの取組の相乗効果によって、日米の部隊運用の効率性、相互運用性・即応性・機動性・持続性などの一層の強化・向上が実現できる。

参照図表III-2-2-7(共同使用、共同訓練・演習、共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動の拡大のイメージ)

図表III-2-2-7 共同使用、共同訓練・演習、共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動の拡大のイメージ

共同訓練・演習については、これまで、国内のみならず、米国への部隊派遣などにより拡大させているとともに、日米共同方面隊指揮所演習、対潜特別訓練、日米共同戦闘機戦闘訓練など軍種・部隊レベルにおいても相互運用性および日米の共同対処能力向上の努力を続けている。共同訓練・演習の拡大は、平素からの共同活動を増大し、部隊の即応性、運用能力および日米の相互運用性の向上をもたらす。また、効果的な時期、場所、規模で共同訓練・演習を実施することは、日米間での一致した意思や能力を示すことにもなり、抑止の機能を果たすことになる。

13(同25)年6月には陸・海・空自が参加して米国における統合訓練(実動訓練)(ドーン・ブリッツ13)を実施した。同年10月の国内における米海兵隊との実動訓練(フォレスト・ライト)では、初めてMV-22オスプレイを用いた日米共同のヘリボン訓練を実施し、日米の相互運用性の向上を図った。さらに、14(同26)年2月にも、陸自と米海兵隊が実動訓練(アイアン・フィスト14)を実施するなど、水陸両用作戦機能の強化に努めている。

また、共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動については、日米両国の活動の効率および効果を高めるためには、広くアジア太平洋地域におけるISR活動を日米間で協力して実施していくことが重要であるとの観点から、日米の防衛当局間の課長級を代表者とするISR作業部会を13(同25)年2月に設立し、日米間での協力をさらに深めている。

フォレスト・ライトの画像

フォレスト・ライトにおいてMV-22オスプレイから展開する陸自隊員

このような共同のISR活動の拡大は、共同訓練・演習の拡大と同様に、他国に対する情報優越を確保するのみならず、抑止の機能を果たすことになる。

さらに、施設・区域の共同使用の拡大は、演習場、港湾、飛行場など自衛隊の拠点の増加を意味し、日米共同の訓練・演習の多様性・効率性を高め、ISR活動の範囲や活動量を増やすこととなる。特に沖縄における自衛隊施設は、那覇基地など限られており、その大半が都市部にあるため、運用面での制約がある。沖縄にある在日米軍施設・区域の共同使用は、沖縄における自衛隊の訓練環境を大きく改善するとともに、共同訓練・演習の実施や自衛隊と米軍間の相互運用性を促進するものである。また、即応性をより向上させ、災害時における県民の安全性の確保に資することが可能となる。このため、南西諸島を含む地域における自衛隊の防衛態勢を強化することにも考慮しつつ、日米間で精力的に協議を行っているほか、具体的な取組も進展している。たとえば、08(同20)年3月から陸自がキャンプ・ハンセンを訓練のために使用している。また、12(同24)年4月の空自航空総隊司令部の横田移転や13(同25)年3月の陸自中央即応集団司令部の座間移転なども行った。さらに、13(同25)年12月および14(同26)年6月から7月には、海自が米海軍の協力を得てグアム方面において洋上訓練および施設利用訓練を実施したほか、グアムおよび北マリアナ諸島連邦(テニアン島、パガン島など)に自衛隊および米軍が共同使用する訓練場を整備することとしている。

このほか、弾道ミサイル防衛、計画検討作業、拡大抑止協議などについても、各種の運用協力および政策調整を一層緊密に推進することとしている。

2 幅広い分野における協力の強化・拡大

新防衛大綱は、海賊対処、能力構築支援、人道支援・災害救援、平和維持、テロ対策および海洋・宇宙・サイバー分野における協力を強化するとともに、災害対応、情報協力および情報保全の取組、装備・技術面での協力などの幅広い分野での協力関係を不断に強化・拡大するとしている。

こうした協力の中で、最近の取組としては、たとえば、サイバー分野における協力があげられる。13(同25)年10月、小野寺防衛大臣とヘーゲル米国防長官による指示のもと、防衛当局間の枠組みとして「日米サイバー防衛政策ワーキンググループ」(CDPWG:Cyber Defense Policy Working Group)を設置し、政策レベルを含む情報共有のあり方や人材育成、技術面における協力など、幅広い分野に関する検討を行っている。

また、人道支援・災害救援の分野では、13(同25)年11月に生起したフィリピンにおける台風被害に際し、現地の多国間調整所において日米両国が連携して調整にあたるなど、緊密に連携して対処した。さらに、14(同26)年1月に策定した南海トラフ巨大地震などの対処計画に日米共同対処要領が記載されるとともに、同年2月には南海トラフ地震による高知県の被災を想定した日米共同統合防災訓練を実施した。このように、災害対応における国内外での自衛隊と米軍との連携の一層の強化にも努めている。