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第II部 わが国の安全保障・防衛政策

2 今後の検討の進め方についての基本的方向性

14(平成26)年5月15日、安倍内閣総理大臣は同懇談会から報告書の提出を受けた後、記者会見において、以下のように、検討の進め方についての基本的方向性を示した。

政府与党において、具体的な事例に即してさらなる検討を深め、国民の命と暮らしを守るために、切れ目のない対応を可能とする国内法制を整備する。これまでの憲法解釈のもとでも可能な立法措置として、たとえば、①武力攻撃に至らない侵害(いわゆるグレーゾーン事態)への対処の一層の強化、②PKOや後方支援など国際社会の平和と安定への一層の貢献について検討する。そのうえでなお現実に起こり得る事態に対して、万全の備えがなければならない。国民の命と暮らしを守るための法整備がこれまでの憲法解釈のままで十分にできるのか、さらなる検討が必要である。

報告書の考え方のうち、個別的か集団的かを問わず、自衛のための武力の行使は禁じられていない、また、国連の集団安全保障措置への参加といった国際法上合法な活動には憲法上の制約はない、という考え方については、これまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合しないことから、政府として採用できない。一方、わが国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときという限定的な場合に、集団的自衛権を行使することは許されるとの考え方については、生命、自由、幸福追求に対する国民の権利を政府は最大限尊重しなければならない、憲法前文、憲法第13条の趣旨を踏まえれば、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることは禁じられていない、そのための必要最小限度の武力の行使は許容される、という従来の政府の基本的立場を踏まえた考え方であり、政府としてこの考え方についてさらに研究を進めていく。

切れ目のない対応を可能とする国内法整備の作業を進めるにあたり、従来の憲法解釈のままで必要な立法が可能なのか、それとも一部の立法にあたって憲法解釈を変更せざるを得ないとすれば、いかなる憲法解釈が適切なのか、内閣法制局の意見も踏まえつつ、政府としての検討を進めるとともに、与党協議に入る。その結果に基づき、憲法解釈の変更が必要と判断されれば、この点を含めて改正すべき法制の基本的方向を閣議決定する。