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第III部 わが国の防衛のための取組

4 日中防衛交流・協力

1 中国との防衛交流・協力の意義など

中国は、近年の経済発展や軍事力の近代化などにより、国際社会における存在感を増している。中国には、軍事力の透明性の問題や東シナ海資源開発に関する日中協力が遅々として進展しないなどの懸案事項が存在するものの、日中両国の「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、友好・協力関係をさらに深めることが両国の利益につながる。この点、防衛交流の継続・推進は、中国の国防政策の透明性の向上を図り、日中両国の相互理解と信頼関係を強化するとともに、不測の事態が発生することを回避・防止する観点から重要であり、中国が国際社会において責任ある行動をとるよう、同盟国などとも協力して積極的な関与を行うこととしている。このような取組は、二国間関係全体の安定化ひいては、アジア太平洋地域の平和と安定にとっても必要不可欠である。

2 最近の主要な防衛交流実績など

日中両国は、「戦略的互恵関係」を包括的に推進するとの考えに基づき、様々なレベルにおいて防衛交流を推進し、相互理解と信頼関係の増進に努めている。11(平成23)年6月の日中防衛相会談では、両国の防衛当局間で冷静に対話を進め、日中防衛交流を安定的に推進することが「戦略的互恵関係」の基盤となり、両国の友好・協力関係の強化と防衛政策などの透明性の向上につながるとの認識で一致し、引き続き日中防衛交流を発展させることを確認した。

日中間においては、防衛交流の重要部分として不測の事態の回避・防止のための取組も進めている。特に、日中防衛当局間の海上連絡メカニズムを構築することが急務である。そのため、12(同24)年6月に北京で行われた第3回共同作業グループでは、相互理解および相互信頼を増進し、防衛協力を強化するとともに、不測の衝突を回避し、海空域における不測の事態が軍事衝突あるいは政治問題に発展することを防止することを目的として、①年次会合、専門会合の開催、②日中防衛当局間のハイレベル間でのホットラインの設置、③艦艇・航空機間の直接通信からなる海上連絡メカニズムを構築することで合意している。しかしながら、同年9月以降、本プロセスを含む防衛交流は停滞した。これに対し、日本側から防衛交流継続の働きかけを行ってきたが、これまでのところ、海上連絡メカニズムの運用開始をはじめ各種交流案件が積極的に推進されるには至っていない。

現在、13(同25)年1月に生起した中国海軍艦艇による海自護衛艦などに対する火器管制レーダー照射事案や、同年11月の、中国による独自の主張に基づく「東シナ海防空識別区」の設定、14(同26)年5月および6月の中国戦闘機による自衛隊機への異常な接近もあり、不測事態の発生を回避・防止する海上連絡メカニズムなどの必要性がより高まっている状況を踏まえ、早期運用開始を目指し中国側に働きかけている。

部隊間交流については、07(同19)年以降、中国海軍駆逐艦「深圳(しんせん)」、同練習艦「鄭和(ていわ)」が訪日するとともに、海自護衛艦「さざなみ」、同護衛艦「きりさめ」が訪中した。また、10(同22)年6月に中国人民解放軍済南軍区司令員が陸自中部方面隊を訪問するとともに、12(同24)年3月、陸自中部方面総監が済南軍区を訪問した。14(同26)年4月には、海幕長が青島を訪問し、西太平洋海軍シンポジウム(WPNS)本会合に出席した。

現在は、こうした部隊間交流も含めて日中防衛交流の停滞が継続しているが、今後も、「戦略的互恵関係」構築の一環として、様々なレベル・分野における対話を通じて、日中間の信頼関係・相互理解の増進に努めるとともに、海賊対処など非伝統的安全保障分野における具体的な協力を積極的に推進することが必要である。

参照資料51(最近の日中防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))